1-2 いつもの店員
【今回の見どころ】
しがない38歳の配達員・一雄の前に現れた、バイト先の眩しすぎる店員・美月ちゃん。
ただの「注文番号」が、一雄の脳内で特別な「運命の暗号」へと変換されていく……! 彼の歪み始める純愛の第一歩を目撃せよ!
【作品紹介】
本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。
一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。
【公式連動楽曲】
iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!
一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!
【2作連動の仕掛け】
主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?
二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。
【連動楽曲】
YouTube・noteにて順次公開!
①iti視点「運命の人〜暴走〜」
②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」
激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。
(リンクは後書きの下にあります)
【1-2 本文】
ハンバーガーショップの前に到着すると、一雄はバイクを停めた。エンジンを切り、スマートフォンを確認する。
注文番号は、画面の上部に表示されていた。
商品を受け取るだけなら、ほんの数分で終わる。それなのに、一雄はバイクから降りる前に、何度もヘルメットの位置を直した。
サングラスを外す。
髪を手で整える。
もう一度サングラスをかける。
そして、またヘルメットを直す。
整えたつもりが、ヘルメットで押しつぶされていた髪が、左右に跳ねていた。
「……まあ、こんなもんか」
誰も見ていないのに、一雄は小さく頷いた。
店のガラスに映った自分の姿を確認する。
肩まで伸びた髪。
少し膨らんだ腹。
スイカ柄のヘルメット。
黒いサングラス。
そして、背中に背負った大きなデリバリーバッグ。どう考えても、女性から好意を持たれるような外見ではない。
そもそも、一雄には女性とまともに会話をした記憶が、最近ほとんどなかった。
一雄は小さくため息をつき、店内へ入った。
店内は昼のピークタイムを過ぎたばかりで、まだ忙しそうだった。
カウンターの前には数人の客が並び、厨房の奥からは油のはねる音と、店員たちの掛け声が聞こえている。
そして――。
カウンターの向こうに、中村美月がいた。
美月は長い髪を後ろでまとめ、清潔感のある制服姿で客に笑顔を向けている。
「お待たせいたしました。こちら、商品になります」
美月が客に商品を手渡す。
その笑顔を見た瞬間、一雄の足が止まった。
美月がこちらに気づく。
「あっ、配達員さん。お疲れさまです」
ほんの一瞬、目が合った。
一雄の心臓が、大きく跳ねた。
「……お、お疲れさまです」
声が上ずった。
しまった。
今のは完全に変だった。
しかし、美月は気にした様子もなく、端末を確認した。
「ご注文番号をお願いします」
「あ、はい。えっと……」
一雄はスマートフォンを確認しようとした。
だが、緊張のせいで指がうまく動かない。
画面をタップしたつもりが、別のアプリを開いてしまった。
そこには、昨夜録音した自分の歌声が表示されている。
もし再生ボタンに触れたら、店内に自分の歌声が流れてしまう。
そう思った瞬間、一雄の指は完全に固まった。
「……配達員さん?」
「あっ、すみません!」
一雄は慌てて画面を閉じた。
注文番号を確認し、口にする。
「M……1……M……1……M……1……です」
「はい。M1M1M1ですね」
美月は淡々と番号を復唱した。
だが、一雄には、その番号が何か特別な暗号のように聞こえた。
M1M1M1。
Mは、美月。
1は、iti。
つまり――。
美月、iti。美月、iti。美月、iti。
三回もだ。
一回なら偶然かもしれない。しかし、三回となると話は別だ。
これはもう、運命以外の何ものでもない。
一雄は、注文番号を見つめながら、自分だけに分かる暗号を解読した気分になっていた。
「商品、こちらでお間違いないです」
美月が袋を差し出した。
一雄は両手で受け取った。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、お願いします」
美月はいつもの接客スマイルを見せた。
一雄は反射的に軽く頭を下げた。
それ以上、何も言えなかった。
本当は、
「今日も笑顔が素敵ですね」
と言いたかった。
できれば、
「いつも何時まで働いているんですか?」
とも聞いてみたかった。
だが、そんなことを口にしたら、明らかにおかしい。
配達員と店員。
二人の関係は、それだけなのだから。
一雄は商品を受け取り、店の外へ出た。
自動ドアが閉まる。
数歩歩いたところで、一雄は立ち止まった。
「……今日も、笑ってくれた」
頬が緩んだ。サングラスをかけているため、誰にも表情は見えない。しかし、口元は完全に笑っていた。
「しかも、番号を復唱してくれた……」
当たり前の業務である。
そんなことは、一雄自身も分かっていた。
分かっているはずなのに、胸は浮かれていた。
バイクにまたがり、エンジンをかける。
ヘルメットの中で、自然と鼻歌が出た。
その歌声は、店内で聞かせれば誰もが振り返るほど美しかった。
けれど、一雄は今、自分が何を歌っているのかすら分かっていなかった。
ただ、美月の笑顔が頭から離れなかった。
【1-3へ続く】
第2話をお読みいただきありがとうございました!
明日の同じ時間に、第3話「1-3 深夜の配達」を投稿予定です。お楽しみに!
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【主題歌のお知らせ!!】
主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!
①iti「運命の人〜暴走〜」
②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」
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