4-6 運命の誘い
【前回の振り返り】
遠くの遊園地へ一雄を縛り付け、その数時間の隙に夜逃げと退職を同時に完了させる。
少女たちがスタッフルームで導き出した、冷酷無比な『完全拒絶作戦』の全貌。
すべてのタイムラインが冷徹にパズルのようにハメ込まれ、悪魔の計画はいよいよ実行へと移さる。
そしてついに本日、美月の前に何も知らない一雄が姿を現した――。
【作品紹介】
本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。
一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。
【公式連動楽曲】
iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!
一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!
【2作連動の仕掛け】
主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?
二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。
【連動楽曲】
YouTube・noteにて順次公開!
①iti視点「運命の人〜暴走〜」
②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」
激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。
(リンクは後書きの下にあります)
【4-6 本文】
作戦会議が始まってから、約一か月が過ぎていた。
その間、美月は一雄に対する態度を少しずつ変えていった。
名前を呼ぶ。
笑顔で話しかける。
音楽の話を聞く。
一雄の休日について尋ねる。
そして、一雄が美月との時間を特別なものだと思うように、少しずつ距離を近づけていった。
その一方で、引っ越し先も決まっていた。
荷物の整理も進んでいる。
退職日も決まっていた。
引っ越し業者に依頼する日も、すでに決まっている。
遊園地へ行く約束の日。
その日に、美月は今の部屋を引き払う。
残された作戦は、ただ一つだった。
一雄を、遊園地に誘うこと。
そして、必ず来てもらうこと。
その日の朝、UVA48のメンバーはスタッフルームに集まっていた。
美咲が、テーブルの上に置かれたメモを確認する。
「引っ越し先は決まっている。荷物の整理も進んでいる。退職日も、引っ越し業者の手配も済んでいる」
涼香が、予定表を確認した。
「遊園地の約束は、今日から一週間後。待ち合わせの時間に合わせて、引っ越し業者が来るように調整してある」
「一雄さんが遊園地に向かっている間に、美月は引っ越しをする」
結衣が、静かに言った。
「その日の勤務を最後にして、店も辞める」
「つまり、今日誘って、約束が成立すれば、作戦は最終段階に入るんだね」
莉子が言った。
「うん」
美月は、静かにうなずいた。
「今日、誘う」
美咲は、美月をまっすぐ見つめた。
「準備は、もう整っている。あとは、一雄さんが来るようにするだけ」
美月は、手元のメモを握りしめた。
約一か月かけて、一雄をその気にさせてきた。
名前を呼び、笑顔を見せ、会話を続け、音楽にも興味を示した。
すべては、今日のためだった。
「……絶対に来てもらう」
美月は、そう言って立ち上がった。
その頃、一雄は、いつものように店へ向かっていた。
スイカ柄のヘルメットをかぶり、配達バッグを背負っている。
彼は、美月に音楽を聴かせる日のことを考えていた。
名前を呼ばれたこと。
音楽に興味を持たれたこと。
「一雄さんと話すの、楽しいです」と言われたこと。
一雄の中では、そのすべてが一つにつながっていた。
次に美月と会う場所は、店ではない。
配達中でもない。
二人だけで過ごせる場所だ。
一雄は、そう思いながら店へ向かった。
店内では、美月がカウンターに立っていた。
一雄の姿を見つけると、美月は小さく息を吸った。
スタッフルームでは、UVA48のメンバーが様子を見守っている。
美咲が、指を一本立てた。
今までどおり、自然に。
美月は、ゆっくりとうなずいた。
一雄が注文を終え、商品を受け取る。
いつもなら、そこで帰る。
しかし、その日は美月が呼び止めた。
「一雄さん」
「は、はい!」
一雄は、すぐに振り返った。
「少し聞きたいことがあるんですけど……」
「はい。何でも聞いてください」
一雄は、美月の言葉に被せるように答えた。
返事が、あまりにも早かった。
スタッフルームで、莉子が小さく目を閉じる。
「もう、完全に準備できてるね……」
美月は、何とか笑顔を保った。
「今度のお休みは、何か予定が……」
「ありません!!」
一雄は、考えるより先に答えていた。
美月が、少しだけ目を見開く。
「まだ、何も聞いていませんよ」
「すみません」
一雄は、慌てて頭を下げた。
スタッフルームの中で、愛梨が口元を押さえる。
美月は、一度だけ息を整えた。
そして、用意していた言葉を口にした。
「それなら……もしよかったら、遊園地に行きませんか?」
一雄は、動かなかった。
まるで、時間が止まったようだった。
「……遊園地?」
「はい。少し遠いんですけど、私も行ってみたいと思っていて」
美月は、なるべく自然に続けた。
「一雄さんがよければ、現地で待ち合わせをしたいです」
「僕で、いいんですか?」
一雄の声が震えていた。
「はい」
美月は、短く答えた。
「一雄さんと一緒に行けたら、楽しそうだなと思って」
その言葉を聞いた瞬間、一雄の目が輝いた。
美月さんが、僕と一緒に行きたいと言った。
僕と二人で過ごしたいと思ってくれた。
一雄は、そう受け取った。
「行きます」
答えが早すぎて、美月の言葉が途切れた。
「……まだ、日にちを言っていませんよ」
「いつでも大丈夫です」
「土曜日です」
「行きます」
「午後一時に、遊園地の入口で待ち合わせです」
「行きます」
一雄は、何度も繰り返した。
「絶対に行きます」
その声には、迷いが一つもなかった。
美月は、一雄に日時と場所を伝えた。
一雄は、スマートフォンに予定を登録していく。
『土曜日 午後一時 美月さんと遊園地』
その予定を見つめ、一雄は幸せそうに笑った。
「楽しみです」
「……はい」
美月も、笑顔で答えた。
「私も、楽しみにしています」
その言葉を聞いた瞬間、一雄の表情がさらに明るくなった。
そして、一雄は店を出ていった。
自動ドアが閉まると、美月は笑顔を消した。
「……来るね」
愛梨が、窓の外を見ながら言った。
「絶対に来る」
涼香も、静かに答えた。
美咲は、作戦メモに書き加えた。
・遊園地の約束、成立
その下には、すでに決まっている予定が書かれていた。
・約束の日まで、あと一週間
・当日の朝、引っ越し業者が来る
・一雄が遊園地にいる間に、美月は新居へ移動する
・その日の勤務を最後に退職する
・一雄が店へ戻ってきたら、手紙を渡す
美月は、その文字を見つめた。
今日、動き出したのは遊園地の約束だけだった。
しかし、その約束の日は、もう決まっている。
一週間後。
一雄が遊園地で美月を待っている間に、美月は今の部屋を出る。
そして、店からも姿を消す。
美月は、静かに息を吐いた。
「……ここからが、本当の作戦だね」
美咲が、うなずいた。
「うん。約束の日まで、あと一週間」
美月は、誰もいない店の入口を見つめた。
「それまでに、最後の準備を終わらせる」
【4-7へ続く】
ep.21 4-6「運命の誘い」をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに遊園地デートの約束が成立してしまいました……!
一雄の「行きます!」の秒速即答と、スマホの予定を見つめて幸せそうに笑うピュアな姿。
それが裏の夜逃げ・退職計画を知っている読者から見ると、あまりにも残酷で、天国と地獄の落差に心臓がバクバクいう神回でした。
そして、この残酷なすれ違いのカウントダウンは、明日、ついに一つの「終わり」を迎えることになります。
【次回 ep.22 4-7「手紙の作戦」明日18:00公開予定!】
少女たちが閉店後のスタッフルームに再び集結し、作戦は最終段階へ。
一雄を確実に、そして二度と戻れない奈落へと突き落とすための「最後の仕込み」が始まります。
誰もが予想しなかった衝撃の頭脳戦、そのすべてのパズルが完成する――『運命の人』第一部、いよいよ明日、堂々の完結です!!
一雄の運命が決定し、30年後の未来世界へと魂のバトンが繋がる歴史的な瞬間を、絶対にお見逃しなく!
【作者からのお願い m(_ _;)m】
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【主題歌のお知らせ!!】
主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!
①iti「運命の人〜暴走〜」
②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」
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