4-5 遊園地への作戦
【前回の振り返り】
美月が放った「いつか聴いてみたい」という罠の一言。
作戦とは知らない一雄の脳内では『心の距離、さらに接近』と、都合のいい大爆発を起こした。
手応えを確信した少女たちは、その夜、スタッフルームでさらに冷徹な牙を剥きます。
遠くの遊園地へ一雄を縛り付け、その隙に街から完全に消え去る――。
ついに、悪魔のパズルのピースがすべて組み上がった!!
【作品紹介】
本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。
一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。
【公式連動楽曲】
iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!
一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!
【2作連動の仕掛け】
主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?
二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。
【連動楽曲】
YouTube・noteにて順次公開!
①iti視点「運命の人〜暴走〜」
②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」
激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。
(リンクは後書きの下にあります)
【4-5 本文】
美月が一雄を見送ったあと。
その夜、UVA48のメンバーは、再びスタッフルームに集まっていた。
テーブルの中央には、これまでの作戦内容が書かれたメモが置かれている。
・名前を呼ぶ
・笑顔で挨拶する
・会話を少しだけ長くする
・音楽に関心を示す
・一雄が自分から話したくなる状態にする
その下に、美咲が新しい項目を書き加えた。
・二人で会うことを期待させる
「今日の会話は、かなり進んだと思う」
美咲が、メンバーを見回した。
「美月が『話すのが楽しい』と言ったあと、一雄さんは完全にその気になっていた」
「『もっと、ゆっくり話せたらいいんですけどね』も、かなり強い言葉だよね」
愛梨が言った。
「美月は、そこまで言うつもりじゃなかったんでしょ?」
「うん……」
美月は、少しうつむいた。
「でも、一雄さんと話していると、どうしても早く会話を終わらせたくなってしまうから。逆に、少し長く話したほうが不自然じゃないと思って」
「その結果、一雄さんは『店員と配達員という関係を超えたい』と解釈した」
涼香が、メモを確認しながら言った。
「たぶん、もう一雄さんの中では、二人で会うことが決まっている」
莉子がため息をついた。
「本人の中だけでね」
「でも、それでいいんだよ」
美咲が答えた。
「ここまで来たら、次は実際に二人で会う約束を作る」
美月は、顔を上げた。
「遊園地に誘うの?」
「まだ、今日じゃない」
美咲は首を横に振った。
「もう少しだけ時間を置く。一雄さんが、美月と二人で会う日を待ちきれないと思うところまで気持ちを高める」
「つまり、ここから一雄さんをさらに夢中にさせるんだね」
ひなたが言った。
「うん」
涼香がうなずいた。
「一雄さんは、すでに美月との会話を特別な出来事として記録している。名前を呼ばれたこと、音楽に興味を持たれたこと、会話を楽しいと言われたこと。その一つひとつを、自分に対する好意の証拠に変えている」
「だから、次に『二人で会う』という話を出せば、絶対に断らない」
美月が、静かに言った。
「……断らないようにする」
「そう」
美咲は、メモに書き加えた。
・一雄が遊園地の誘いを絶対に断らない状態にする
愛梨が、地図をテーブルの上に広げた。
「待ち合わせ場所は、ここがいいと思う」
地図の上には、駅から少し離れた遊園地が記されていた。
「遠いね」
莉子が地図をのぞき込む。
「だからいいんだよ」
愛梨が答えた。
「近所の公園や街中だと、途中で会う可能性がある。でも、遠い遊園地なら、一雄さんがそこへ向かっている間に美月は引っ越しの準備を進められる」
「待ち合わせ時間を早めに設定すれば、さらに時間が作れる」
涼香が言った。
「一雄さんは、きっと当日かなり早く到着する。場合によっては、何時間も待つかもしれない」
「そんなに待つかな?」
ひなたが尋ねる。
メンバー全員が、少し黙った。
「待つと思う」
美月が答えた。
「一雄さんは、私が来ない理由を自分に都合よく考えるから。遅れているだけだと思って、すぐには帰らない」
「それなら、遊園地で待っている間に引っ越しをする」
美咲が、計画を整理した。
「美月は遊園地へ行かない。一雄さんが待っている間に荷物を運び出す。その日のうちに、引っ越しと退職を完了させる」
「そして、一雄さんが店に戻ってきたら?」
莉子が尋ねた。
「そのときは、私たちが対応する」
結衣が答えた。
「美月はもう店にいない。退職したことも伝える。そして、手紙を渡す」
美月は、少しだけ息を止めた。
「手紙……」
「うん」
結衣は、静かにうなずいた。
「直接会って話すと、一雄さんはまた都合のいい解釈をするかもしれない。だから、最後に伝えることは手紙にする」
「でも、手紙の内容は慎重に決めないといけないね」
涼香が言った。
「普通に『お付き合いできません』と書くだけでは、一雄さんには伝わらない可能性がある」
「じゃあ、どうするの?」
ひなたが聞いた。
美月は、しばらく黙っていた。
そして、ゆっくりと顔を上げた。
「一雄さんが、私を探さない理由を作る」
「探さない理由?」
「私がいなくなったのは、一雄さんが嫌だからではない。そう思わせるような話を書くの」
莉子が、嫌な予感を覚えたように眉をひそめた。
「まさか、また自分に都合よく解釈されない?」
「だから、最後にはっきりと書く」
美月は、テーブルの上の白紙を見つめた。
「もう私のことは忘れてください。私も一雄さんのことを忘れます。もう会えません、と」
結衣が、美月の手をそっと握った。
「それでも、手紙を読んだあとに探そうとするかもしれない」
「そのときは、私たちが止める」
美咲が、はっきりと言った。
「みんなで対応する。美月一人にしない」
スタッフルームに、重い沈黙が落ちた。
この作戦は、単なるいたずらではない。
一雄の期待を利用し、遠くまで呼び出し、その間に美月の生活を変える。
そして、二度と会わないための手紙を渡す。
美月は、テーブルの上に置かれた白紙を見つめた。
「遊園地に誘う日は、私が決める」
「うん」
「一雄さんが、絶対に来ると思える日を選ぶ」
涼香が、静かに言った。
「もう、来るかどうかを心配する段階ではないね」
美月は、うなずいた。
「来てもらう。絶対に来るようにする」
愛梨が、作戦メモの一番下に大きく書いた。
・一雄を遊園地へ誘う
・一雄が必ず来る状態にする
・その間に引っ越しと退職を完了する
・帰ってきた一雄に手紙を渡す
莉子が、そのメモを見てつぶやいた。
「本当に、完全拒絶作戦なんだね」
美月は、白紙から目を離さなかった。
「うん。今度こそ、終わらせる」
しかし、その言葉を聞いた誰もが分かっていた。
一雄は、まだ終わりを理解できない。
だからこそ、最後まで作戦を続ける必要がある。
遊園地へ誘うその日まで。
美月は、一雄をさらに夢中にさせなければならなかった。
【4-6へ続く】
ep.20 4-5「遊園地への作戦」をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに『完全拒絶作戦』の全貌が明かされました。
遠くの遊園地に呼び出し、何時間も待つ一雄の性質を逆手に取って、その隙に夜逃げと退職を同時に終わらせるという冷酷すぎる計画。
美月の「絶対に来るようにする」という言葉が、30年後のオヤッサンの孤独な姿と重なって胸が締め付けられます……。
【次回ep.21 4-6「運命の誘い」は明日18:00公開予定】
「何が起こるかは隠しますが、ついに美月が一雄の前に立ち、あの『運命の言葉』を口にします。
何も知らない一雄のスマホに登録される、あまりにも残酷で幸せな予定とは――!?」
作戦はいよいよ、引き返せない最終段階へ。明日、一雄の運命が決定する瞬間を絶対にお見逃しなく!
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【主題歌のお知らせ!!】
主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!
①iti「運命の人〜暴走〜」
②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」
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