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19/22

4-4 聴いてみたい

挿絵(By みてみん)


【前回4-3「音楽への作戦」振り返り】


美月をストーカー(一雄)から守るための『完全拒絶作戦』は第二週へ。


少女たちが次に目をつけたのは、一雄の最大の聖域である「音楽(iti)」。


「いつか一雄さんの歌、聴いてみたいです」

期待を絶頂まで膨らませてから奈落へ突き落とすための、あまりにも残酷な甘い爆弾。


少女たちが冷徹に組み上げたシナリオの通り、美月の前に何も知らない一雄が姿を現します――。




【作品紹介】


本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。



一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。


【公式連動楽曲】

iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!

一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!


【2作連動の仕掛け】


主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?


二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。



【連動楽曲】

YouTube・noteにて順次公開!

①iti視点「運命の人〜暴走〜」

②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」



激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。


(リンクは後書きの下にあります)

【4-4 本文】


第二週の作戦会議から数日後。


美月は、いつもより少し早く店に入った。


スタッフルームのテーブルには、前回の作戦メモが置かれている。


・一雄さんの音楽に関心を示す

・質問は二つか三つまで

・会話を長引かせすぎない

・最後に「いつか聴いてみたい」と伝える

・一雄さんが、自分のことをもっと知ってほしいと思う状態にする


美月は、そのメモを見つめた。


「……本当に、これで大丈夫なのかな」


「大丈夫じゃないと思う」


背後から声がして、美月は振り返った。


入口に、桜井結衣が立っていた。


「えっ?」


「だって、やってることは一雄さんをその気にさせることだもん」


結衣は、少し困ったように笑った。


「でも、遊園地に来てもらうためには必要なんだよね」


「うん……」


美月は、メモに視線を落とした。


「一雄さんは、私が少し優しくしただけでも、特別な意味に受け取るから」


「だからこそ、やりすぎないことが大事」


結衣は、メモの一番下を指差した。


「興味は見せる。でも、約束はしない。好きとは言わない。期待させすぎない」


「それで、一雄さんが勝手に期待してくれるのを待つ」


「言い方が怖いよ」


結衣が苦笑する。


そこへ、星野美咲、水野涼香、高橋愛梨、田中莉子、小林ひなたが、次々とスタッフルームへ入ってきた。


「今日の作戦を確認するね」


美咲が、全員を見回した。


「一雄さんが来たら、まずはヘルメットの話。そこから音楽の話に移る。美月は質問をするだけでいいよ」


「質問は二つか三つまで」


涼香が付け加える。


「それ以上聞くと、会話が不自然になる。それに、一雄さんは質問された内容を、かなり大きく受け止める可能性がある」


「じゃあ、三つ目の質問は特に重要ってこと?」


愛梨が尋ねた。


「そう。最後に、『いつか聴いてみたいです』と言う」


美咲が答えた。


「その言葉で、一雄さんに『自分の音楽を聴きたいと思ってくれた』と感じてもらう」


「実際には、今すぐ聴くとは言ってないけどね」


莉子が冷静に突っ込む。


「いつか、だからね。明日でも十年後でも、いつかはいつか」


ひなたが首をかしげた。


「でも、一雄さんなら『近いうちに聴かせなきゃ』って思いそう」


「たぶんね」


涼香がうなずいた。


「そして、そのために美月と会う理由を作ろうとする」


美月は、黙ったままメモを見つめていた。


その作戦が、どれほど一雄を喜ばせるのか。


想像するだけで、少し気分が悪くなった。


それでも、ここで中途半端に終わらせるわけにはいかない。


一雄が自分の都合のいいように解釈してしまうなら、その性質を利用するしかなかった。


しばらくして、店の入口から聞き慣れたバイクの音が聞こえた。


美月の心臓が、どくんと跳ねる。


「来た」


愛梨が、小さな声で言った。


美月は、深く息を吸った。


スタッフルームを出て、カウンターへ向かう。


少し遅れて、一雄が店内に入ってきた。


スイカ柄のヘルメット。


黒いサングラス。


背中には、大きな配達バッグ。


いつもと同じ姿なのに、美月には以前よりもずっと近く感じられた。


一雄は、注文を確認しながら、何度も美月のほうを見ている。


「……一雄さん」


美月が声をかけた。


一雄の動きが止まった。


「はひっ!?」


声が裏返る。


美月は、少しだけ笑った。


「そのヘルメット、いつも目立ちますよね」


一雄は、頭の上のヘルメットに触れた。


「えっ? あ、これですか?」


「はい。スイカ柄って、珍しいなと思って」


一雄は、嬉しそうにヘルメットを撫でた。


「これは、僕の相棒なんです」


「相棒?」


「はい。これをかぶると、ただの配達員じゃなくて……itiとしての自分になれる気がするんです」


一雄は、少し姿勢を正した。


美月は、台本どおりに尋ねた。


「itiという名前は、どういう意味なんですか?」


その瞬間、一雄の表情が変わった。


単なる質問ではなかった。


自分の名前に興味を持ってくれた。


一雄には、そう聞こえた。


「itiは……僕が音楽を作るときに使っている名前です」


「音楽を作っているんですか?」


美月は、二つ目の質問をした。


「はい。歌詞を書いたり、曲を作ったりしています」


「どんな歌を作るんですか?」


「運命とか、出会いとか……そういうものをテーマにしています」


一雄は、少しずつ言葉が熱を帯びていく。


「人と人が出会うのには、必ず意味があると思うんです。たまたま出会ったように見えても、実は最初から決まっていたというか……」


美月は、一雄の言葉を聞きながら、手のひらに汗を感じていた。


それでも、表情を崩さない。


「素敵ですね」


一雄の目が、大きく見開かれた。


「……素敵?」


「はい。いつか、聴いてみたいです」


その言葉が、店内に落ちた。


ほんの短い一言だった。


美月にとっては、作戦のために用意した言葉。


しかし、一雄にとっては違った。


自分の歌を聴きたいと言ってくれた。


自分の内側を知りたいと思ってくれた。


美月は、自分自身ではなく、itiという存在に興味を持ってくれた。


一雄は、そう受け取った。


「……はい」


返事をするまでに、少し時間がかかった。


「いつでも、聴かせます」


「ありがとうございます」


美月は、軽く頭を下げた。


そのまま、注文の商品を一雄へ渡す。


指先が、一瞬だけ触れた。


一雄は、息を止めた。


美月は、すぐに手を引いた。


「商品が冷めてしまうので、気をつけて行ってきてくださいね」


「はい!」


一雄は、何度もうなずいた。


「行ってきます!」


店を出ていく一雄の背中を、美月は笑顔で見送った。


自動ドアが閉まる。


バイクのエンジン音が、少しずつ遠ざかっていく。


美月は、笑顔を消した。


「……今の、どうだった?」


スタッフルームから見ていた愛梨が、すぐに駆け寄ってきた。


「完璧だったよ!」


「一雄さん、完全に舞い上がってたね」


莉子が、窓の外を見ながら言う。


「『いつか聴いてみたい』だけで、あの反応?」


ひなたが驚いたように目を丸くした。


「一雄さんにとっては、告白に近い言葉だったのかも」


涼香が冷静に分析する。


「自分の音楽を聴きたいと言われたことで、美月に自分の本当の姿を理解してもらえると思ったはず」


美月は、胸の奥が重くなるのを感じた。


「……ごめんね」


「美月が謝ることじゃないよ」


結衣が、そっと美月の肩に手を置く。


「これで、一雄さんはもっと美月と話したいと思うようになる」


美咲が、作戦メモに一行を書き加えた。


・第二段階、成功。音楽への関心を示した。


その頃、一雄はバイクを走らせながら、何度も美月の言葉を思い返していた。


『いつか、聴いてみたいです』


その一言が、頭から離れない。


いつか。


それは、遠い未来ではない。


近いうちに、必ず聴かせてほしいという意味だ。


一雄は、そう確信していた。


信号待ちでバイクを止める。


彼はスマートフォンを取り出し、メモアプリを開いた。


そこに、今日の出来事を書き込んでいく。


『美月さんが、僕の音楽に興味を持ってくれた』


『いつか聴いてみたいと言われた』


『僕の内側を知りたいと思ってくれている』


一雄は、最後にこう書き加えた。


『心の距離、さらに接近』


そして、その下に新しい一文を入力した。


『美月さんに聴かせるための、一番大切な曲を作る』


一雄は、赤信号の向こうを見つめた。


その目には、迷いがなかった。


美月は、自分の歌を待っている。


そしてきっと、次は二人だけで会うことを望んでいる。


一雄は、そう信じた。


一方、店内では、美月が作戦メモを見つめていた。


次の段階は、さらに会話を増やすこと。


一雄が、自分から離れられなくなるほどに。


そして、遊園地への誘いを、絶対に断らない状態にすること。


美月は、震えそうになる手を握りしめた。


「……もう少しだけ」


誰にも聞こえない声で、そうつぶやく。


「もう少しだけ、頑張らないと」



【4-5へ続く】

第19話をお読みいただき、ありがとうございました!


美月が放った「いつか、聴いてみたいです」という罠の一言。

しかし、100%都合よく解釈してしまう一雄の脳内では『心の距離、さらに接近』と大爆発を起こしてしまいました……。


このピュアすぎるすれ違いが、30年後の『フーデリオン』の孤独に繋がっていくかと思うと、胸が締め付けられます。



【次回 第20話4-5「遊園地への作戦」明日18:00公開予定!】


「遠くの遊園地へ一雄を縛り付け、その隙に夜逃げする――明かされる作戦の全貌。そして一雄をハメるための『大嘘の手紙』の原案とは!?」


少女たちの計画が、いよいよ一雄の人生を終わらせる凶悪な骨子へと変貌していきます。


明日、運命のターニングポイントを絶対にお見逃しなく!




【作者からのお願い m(_ _;)m】


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【主題歌のお知らせ!!】

主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!

①iti「運命の人〜暴走〜」

②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」


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