4-3 音楽への作戦
【前回の振り返り】
作戦の第一段階として、一雄をハメるために「名前を呼ぶ」「笑顔をいつもより一秒だけ長くする」というルールを実行した美月。
何も知らぬ一雄はそれだけで耳まで真っ赤にして有頂天になり、距離が確実に近づいていると狂喜乱舞する。
そして数日後、作戦の手応えを感じたUVA48の少女たちは、次なる「第二週目の会議」へと突入する――。
【作品紹介】
本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。
一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。
【公式連動楽曲】
iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!
一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!
【2作連動の仕掛け】
主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?
二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。
【連動楽曲】
YouTube・noteにて順次公開!
①iti視点「運命の人〜暴走〜」
②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」
激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。
(リンクは後書きの下にあります)
【4-3 本文】
一週目の作戦が始まってから、数日が過ぎた。
美月は、毎日一雄に笑顔で挨拶をした。
名前を呼ぶことも、少しずつ増やしていった。
一雄が配達に来ると、短い会話を交わす。
それだけで、一雄の反応は明らかに変わっていた。
美月がスタッフルームへ入ると、メンバーたちはすでに集まっていた。
テーブルの上には、一週目の記録が並べられている。
美咲が、メモ用紙を手に取った。
「一週目の経過を確認するね」
愛梨が、身を乗り出す。
「名前を呼ぶ作戦は大成功だったよ!」
莉子が、すぐに続けた。
「成功というより、効きすぎている気がするけど」
「一雄さん、名前を呼ばれただけで固まってたもんね」
ひなたが、素直な感想を口にした。
「そのあと、ずっと嬉しそうだった」
涼香は、記録に目を通しながら言った。
「一雄さんは、ほんの小さな変化でも、特別な意味として受け取る傾向がある」
「笑顔を少し長くしただけで、何かを確信していたみたい」
結衣が言った。
「帰るときも、ずっと美月のほうを見ていたよ」
美月は、少しだけ目を伏せた。
「そこまで深く考えているとは思わなかった」
「考えているというより、作り上げているんだと思う」
美咲が答えた。
「自分の中で、美月との関係を少しずつ完成させている」
その言葉に、スタッフルームの空気が重くなった。
一雄の中では、まだ始まってもいない関係が、すでに形になりつつある。
美月は、膝の上で手を握った。
「次は、どうするの?」
美咲は、メモ用紙を新しく一枚取り出した。
「第一週は、名前を呼ぶことと、笑顔で挨拶することだった」
「それだけでも、かなり効果があったね」
愛梨が言った。
「第二週は、もう少し深い話をする」
涼香が続けた。
「一雄さん自身のことを聞く。仕事だけではなく、趣味や好きなものの話」
「好きな食べ物とか?」
ひなたが尋ねた。
「それもいいけど、もっと本人が話したくなる話題がいいと思う」
美咲が答えた。
「一雄さんが一番話したいことは、たぶん音楽」
結衣が、静かに言った。
美月は、顔を上げた。
「音楽?」
「一雄さんは、配達員として働いているけど、本当は歌手なんでしょ?」
「itiという名前で活動しているって言ってた」
美月が答えた。
「それなら、itiについて聞いてみるのはどう?」
愛梨の目が輝いた。
「ヘルメットの話から入れば自然だよ。あのスイカ柄のヘルメット、いつもかぶってるし」
莉子がうなずく。
「ヘルメットを褒めて、そこからitiという名前について聞く。さらに音楽の話へ広げる」
美咲は、メモ用紙に流れを書き込んだ。
・ヘルメットについて聞く
・itiという名前について聞く
・音楽を作っていることを知る
・どんな歌を歌うのか尋ねる
「ここまでは、普通の会話に見えるね」
涼香が言った。
「問題は、その先」
愛梨が、メモ用紙の余白を指差した。
「一雄さんの歌を聴いてみたいって言うのは?」
美月が、少し驚いた顔をした。
「私が?」
「うん。『いつか聴いてみたいです』って」
莉子が、すぐに眉をひそめる。
「それは、かなり期待させる言葉じゃない?」
「だからいいんじゃない」
愛梨は、悪びれずに答えた。
「一雄さんが絶対に遊園地へ来る状態にするなら、それくらい必要だよ」
「でも、歌は一雄さんにとって特別なものだと思う」
結衣が、美月を見た。
「美月が興味を持ってくれたと分かったら、かなり強く受け取るかもしれない」
「それは、もう分かってる」
涼香が言った。
「一雄さんは、日常の言葉を特別な意味に変える。だから、音楽の話をすれば、次の段階へ進める可能性が高い」
ひなたが、首を傾げた。
「次の段階って?」
美咲が答えた。
「一雄さんが、美月に自分の内側を知ってほしいと思う段階」
「内側?」
「自分の歌を聴いてほしい。自分の歌を理解してほしい。自分自身を理解してほしい」
美咲は、一つずつ言葉を並べた。
「そう思わせることができれば、遊園地の誘いを断る理由はなくなる」
莉子は、腕を組んだ。
「なんだか、恋愛の攻略みたいになってきたね」
「恋愛じゃないよ」
美月が静かに言った。
「拒絶するための作戦」
「でも、一雄さんの側から見たら、完全に恋愛の始まりだよね」
愛梨が言った。
誰も、すぐには反論できなかった。
美月は、メモ用紙に書かれた言葉を見つめた。
『いつか歌を聴いてみたいです』
たった一言。
それだけなのに、その言葉が一雄にどれほどの意味を持つのか、美月には想像できなかった。
「私に言えるかな」
美月が呟いた。
結衣が、すぐに答えた。
「言えるよ。無理に明るくしなくてもいい。自然に聞けばいいんだよ」
「そう。笑顔で、軽く言うだけ」
美咲が補足した。
「言ったあとに、すぐ別の話へ移れば、必要以上に親密には見えない」
「でも、一雄さんは、その一言だけを何度も思い返すと思う」
涼香が言った。
「それも計画のうち」
愛梨が、メモ用紙に大きく書き込んだ。
『音楽への関心を示す』
莉子が、その文字を見つめる。
「第二週の作戦は、それで決まり?」
美咲は、メンバー全員を見回した。
「うん。美月が一雄さんの音楽に興味を持っているように見せる」
涼香が、具体的な内容を確認する。
「会話は長くしすぎない。質問は二つか三つまで。最後に『いつか聴いてみたい』と伝える」
「そのあと、一雄さんがどのくらい変化するかを観察する」
ひなたが言った。
「配達の回数とか、店で待っている時間とか」
「そうだね」
美咲はうなずいた。
「一雄さんが、どの程度まで美月を中心に行動するようになるか、記録しておく」
美月は、しばらく黙っていた。
そして、ゆっくりと顔を上げた。
「分かった。やってみる」
結衣が、美月の手を握った。
「無理しないでね」
「うん」
美咲は、作戦メモに新しい項目を書き加えた。
・第二週の目標
・一雄に音楽への関心を示す
・自分の内側を知りたいと思わせる
・遊園地の誘いを断れない状態へ近づける
美月は、最後の項目を見つめた。
遊園地に誘う。
そのために、一雄を少しずつ夢中にさせる。
そして、一雄が運命のデートだと信じて遊園地へ向かう日に、美月はこの街を去る。
美月は、目を閉じた。
「次の段階へ進むね」
その言葉を合図に、第二週の作戦が始まった。
【4-4へ続く】
第18話をお読みいただき、ありがとうございます。
【次回の見どころ 毎日18時頃更新予定】
第19話 4-4 聴いてみたい
第二週目の作戦計画に基づき、ついに一雄の最も大切な領域『itiとしての音楽活動』に踏み込む美月。
「素敵ですね。いつか、聴いてみたいです」
作戦のために用意された美月のその一言を、一雄の脳内フィルターは『自分の内側を知りたいという合図』として極大の運命へ変換し、狂おしいほどに舞い上がり始めて――。
次回のすれ違いの頂点、絶対にお見逃しなく!
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【主題歌のお知らせ!!】
主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!
①iti「運命の人〜暴走〜」
②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」
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