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22/22

4-7 手紙の作戦

挿絵(By みてみん)


【前回の振り返り】


美月からの突然の遊園地デートの誘いに、考えるより先に「行きます!!」と秒速で即答した一雄。


スマホに刻まれた『美月さんと遊園地』というあまりにも幸せな予定。


しかしその裏では、一雄を縛り付けている数時間の隙に、夜逃げと退職を同時に完了させる悪魔のカウントダウンが冷徹に刻まれていた。


約束の日まで、あと一週間。

閉店後のスタッフルームに、少女たちが再び集結。


すべてを終わらせるための、最後にして最大の罠――「一通の手紙」を清書するために。




【作品紹介】


本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。



一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。


【公式連動楽曲】

iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!

一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!


【2作連動の仕掛け】


主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?


二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。



【連動楽曲】

YouTube・noteにて順次公開!

①iti視点「運命の人〜暴走〜」

②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」



激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。


(リンクは後書きの下にあります)

【4-7 本文】


遊園地へ誘った翌日。


約束の日まで、あと一週間。


UVA48のメンバーは、閉店後のスタッフルームに集まっていた。


テーブルの中央には、白い便箋と封筒が置かれている。


美月が書いてきた、手紙の下書きだった。


美咲が、便箋を見つめる。


「今日は、手紙の内容を決めるんだよね?」


「うん」


美月は、便箋を手に取った。


「一度、みんなに読んで聞いてもらう。変なところがあったら、直したいから」


「変なところがある前提なんだね」


莉子が言った。


「それでは、お願いします」


愛梨が、少し身を乗り出す。


美月は、便箋の一番上を見つめた。


そして、読み始めた。


「一雄さんへ」


「そこは普通だね」


莉子がうなずく。


美月は、気にせず続けた。


「一雄さんがこの手紙を読む頃には、私はもうこの街、このお店にはいません」


スタッフルームの空気が、少しだけ静かになった。


「私から一雄さんを遊園地に誘っておきながら、約束を破ってしまって、ごめんなさい」


ひなたが、小さく手を挙げた。


「ちゃんと謝るんだね」


「そこは大事だから」


美月は、淡々と答えた。


「正直に、本当のことを伝えます」


美月は、少し間を置いた。


「私の実家は、とある田舎の名家です」


全員の動きが止まった。


「……名家?」


莉子が、ゆっくり顔を上げる。


美月は、読み続けた。


「私は、その名家の長女として生まれました」


「美月って、名家の生まれだったの?」


愛梨が尋ねた。


「違うよ」


美月は、即答した。


「普通の一般庶民の家に生まれたよ」


「じゃあ、今のは何?」


「手紙の設定」


莉子が、額を押さえた。


「いきなり、かなり大きな嘘が始まったね」


美月は、何事もなかったように続けた。


「そして、私の家の仕来りで、長女は十八歳になると、親同士で決められた許嫁先に嫁ぐ決まりがあります」


「ちょっと待って」


莉子が、手紙を指差した。


「十八歳?」


「うん」


「美月って、十九歳だよね?」


「そうだね」


「こないだ、みんなで美月の十九歳の誕生日を祝ったよね?」


「祝ったね」


結衣も、思い出したようにうなずいた。


美月は、少しだけ胸を張った。


「私は永遠の十八歳です」


「そこを誤魔化すんだ……」


莉子が、あきれたようにつぶやいた。


ひなたが、首をかしげる。


「でも、一雄さんは信じるかな?」


「信じると思う」


美月は、迷いなく答えた。


「即答なんだね」


美咲が、苦笑した。


美月は、再び手紙に目を落とした。


「十八歳になるまでは、せめて自由にさせてほしいと両親に頼み込み、田舎から離れて、一人暮らしとアルバイトを経験していました」


「一人暮らしとアルバイトをしている理由だけは、ちょっと本当っぽい」


愛梨が言った。


「でも、実際は普通に働いているだけだよね」


「そうだね」


「そこから、どうやって許嫁の話につなげるの?」


美月は、次の文章を読み上げた。


「でも、両親には見張られていたようです」


涼香が、静かに口を挟む。


「もう、両親がかなりの実力者になってる」


「名家だから」


美月が答えた。


「名家、便利に使いすぎじゃない?」


愛梨が笑った。


美月は、構わず続けた。


「一雄さんと遊園地に行くことが両親に伝わり、約束当日の朝、私は両親に実家へ連れ戻されました」


莉子が、しばらく黙った。


「遊園地に行くことが、親に伝わるの?」


「見張られていたから」


「その設定、思ったより怖いね」


ひなたが言った。


「携帯も没収されてしまい、連絡も取れず、すみませんでした」


結衣が、白い封筒を見つめる。


「これなら、一雄さんが遊園地に来なかった理由を、自分に都合よく考えられるかもしれない」


「両親に連れ戻されたから、仕方なく来られなかった」


涼香が整理した。


「一雄さんは、美月に嫌われたとは考えない。運命に邪魔されたと考える可能性が高い」


「そこまで計算しているんだね」


莉子が、美月を見る。


「うん」


美月は、真剣な顔で答えた。


「普通に断っても、納得しないと思うから」


「じゃあ、手紙の中では美月が一雄さんを嫌いになったわけじゃないことが重要なんだ」


美咲が言った。


「そう」


美月は、手紙の続きを読み上げた。


「両親の目を盗み、何とか店長に手紙を送り、一雄さんへこの手紙を渡してくれるよう頼んだ次第です」


そこで、美月は顔を上げた。


「ここは、店長じゃなくて結衣にする」


「私?」


結衣が、自分を指差した。


「うん。結衣にお願いしたいの」


「分かった。私が預かる」


結衣は、白い封筒を手に取った。


「一雄さんが店に戻ってきたら、美月が退職したことを伝える。それから、この手紙を渡す」


「たぶん、絶対に聞きに来るよ」


涼香が言った。


「遊園地で待って、美月が来なかった理由を知りたくなる。そのあと、きっと店へ戻ってくる」


「そのときに、結衣が手紙を渡す」


美咲が確認する。


「うん」


結衣は、封筒をテーブルの上に戻した。


美月は、手紙の続きを読み始めた。


「この手紙が、一雄さんに届いていることを祈っています」


愛梨が、手を挙げた。


「そこは大丈夫。結衣が渡すから、確実に届く」


「そういう意味じゃないと思うけど」


莉子が突っ込んだ。


「手紙らしい文章にしたかったの」


美月は、少し困ったように答えた。


そして、最後の部分に目を落とした。


「また、私を好きになってくれて、ありがとう。いつも私を楽しませてくれて、ありがとう」


スタッフルームの空気が、少しだけ変わった。


「ここは、本当の気持ちだね」


結衣が、静かに言った。


美月は、うなずいた。


「うん。怖かったけど、最初から全部が嫌だったわけじゃないから」


「一雄さんの純愛っぽい部分も残すんだ」


愛梨が言った。


「そのほうが、一雄さんは信じると思う」


涼香が答えた。


「感謝を伝えてから拒絶する。感情の流れとしても、そのほうが受け入れやすい」


美月は、最後の文章を読み上げた。


「でも、もう私のことは忘れてください」


莉子が、静かに息を吐く。


「ここは、はっきりしてるね」


「私も、一雄さんのことを忘れます」


美月は、少しだけ声を落とした。


「さようなら。運命の人」


読み終わると、スタッフルームに沈黙が落ちた。


最初に口を開いたのは、愛梨だった。


「……名家の設定、本当に必要だった?」


「必要」


美月は、即答した。


「一雄さんが、自分のせいではなく、仕方のない運命だと思うために必要なの」


涼香が、静かにうなずく。


「一雄さんは、普通の拒絶では納得しない。だから、本人が受け入れられる物語を作る」


「その物語の中で、美月は十八歳の名家のお嬢様で、許嫁のところへ連れ戻される」


莉子が整理した。


「現実の美月は十九歳の一般庶民だけど」


「私は永遠の十八歳だから」


美月が言った。


「その設定、最後まで続けるんだ……」


莉子が、あきれたように言った。


メンバー全員から、笑いがこぼれた。


しかし、美月だけは笑わなかった。


目の前の白い封筒を見つめている。


「じゃあ、完成版を確認しよう」


美咲が言った。


美月は、便箋を新しいものに取り替えた。


そして、清書した手紙をテーブルの中央に置いた。


そこには、一雄へ渡すための文章が、最初から最後まで書かれていた。


---


一雄さんへ


一雄さんがこの手紙を読む頃には、私はもうこの街、このお店にはいません。


私から一雄さんを遊園地に誘っておきながら、約束を破ってしまって、ごめんなさい。


正直に、本当のことを伝えます。


私の実家は、とある田舎の名家です。


私は、その名家の長女として生まれました。


そして、私の家の仕来りで、長女は十八歳になると、親同士で決められた許嫁先に嫁ぐ決まりがあります。


今年、私は十八歳になりました。


十八歳になるまでは、せめて自由にさせてほしいと両親に頼み込み、田舎から離れて、一人暮らしとアルバイトを経験していました。


でも、両親には見張られていたようです。


一雄さんと遊園地に行くことが両親に伝わり、約束当日の朝、私は両親に実家へ連れ戻されました。


携帯も没収されてしまい、連絡も取れず、すみませんでした。


両親の目を盗み、何とか結衣さんに手紙を託し、一雄さんへ渡してくれるように頼みました。


この手紙が、一雄さんに届いていることを祈っています。


また、私を好きになってくれて、ありがとう。


いつも私を楽しませてくれて、ありがとう。


でも、もう私のことは忘れてください。


私も、一雄さんのことを忘れます。


さようなら。


運命の人。


---


読み終わったあと、誰もすぐには口を開かなかった。


最初に沈黙を破ったのは、莉子だった。


「……十八歳の部分だけ、どうしても納得できない」


「私は永遠の十八歳だから」


「もういいよ!」


莉子のツッコミに、再び笑いが起きた。


結衣は、完成した手紙を丁寧に封筒へ入れた。


「これを、私が預かるね」


「うん」


美月は、結衣に封筒を渡した。


「一雄さんが店に戻ってきたら、渡してほしい」


「分かった」


結衣は、封筒を両手で持った。


「でも、手紙を渡したあとの責任までは取れないよ?」


「責任?」


愛梨が聞き返す。


「一雄さんが泣き出したり、運命について語り始めたりした場合の責任」


「それは、みんなで対応するんじゃないの?」


ひなたが言った。


莉子が、すぐに首を横に振る。


「私はできれば、少し離れたところにいたい」


「逃げないの」


美咲が、全員を見回した。


「ここまで一緒に作戦を進めてきたんだから、最後まで全員で対応する」


美月は、白い封筒を見つめた。


この手紙が、一雄のもとへ渡る。


それが、すべての終わりになるはずだった。


遊園地の約束の日まで、あと一週間。


その日、一雄は美月を待つ。


美月は、そこへ行かない。


そして、UVA48の手によって、一雄のもとへ一通の手紙が届けられる。


そこに書かれているのは、嘘ばかりだった。


しかし、その嘘でなければ、一雄を止めることはできない。


「これで、完全拒絶作戦の準備は整ったね」


美咲が言った。


美月は、静かにうなずいた。


「うん。あとは、当日を待つだけ」


UVA48のメンバーは、白い封筒を見つめていた。


その封筒が、一雄のもとへ届く日。


それが、美月と一雄の物語の終わりになる。


――のはずだった。


『運命の人』 〜 完 〜



【運命の人をお読みいただき、ありがとうございました】


『運命の人』第一部、ここに堂々の完結です!!


最後までお読みいただき、本当に、本当にありがとうございました……!


美月が紡いだ「田舎の名家」「永遠の18歳」「許嫁」という大嘘だらけのフィクション手紙。


少女たちのちょっとしたコメディ混じりの作戦会議のはずが、何も知らない一雄にとっては、30年後まで信じ続ける「汚い大人の陰謀で引き裂かれた運命の物語」の真実になってしまった……。


この表裏のミッシングリンクが完璧に繋がった瞬間、胸が締め付けられて言葉になりません。


怖かった。でも、全部が嫌だったわけじゃない――。


美月が最後に残した微かな本心が、どうか30年後の未来に届くことを祈るばかりです。


【次なる戦場へ!『フーデリオン』へ魂のバトンタッチ!! 】


宇場一雄の物語は、ここでは終わりません。


30年後の未来世界(2056年)を舞台にした、もう一つの2作連動クロスオーバー超大作、

『フーデリオン』にて、喉の潰れたオヤッサンとなった「一雄のその後」の激闘が現在リアルタイムで連載中です!


なぜオヤッサンは喋れなくなったのか?

なぜ毎週ガレージのコーヒー缶に、一度も束にすることなく【一輪の赤い薔薇】を手向け続けているのか?


本作を読み終えたいま、『フーデリオン』を開くと、散りばめられた全ての伏線が一本の線に繋がり、鳥肌と涙が止まらなくなります。


ぜひ、一雄の魂の行く末をあちらの世界で見届けてください!




【作者から、一生に一度の大切なお願い m(_ _;)m】


これまで毎日、一雄と美月のすれ違いをハラハラしながら追いかけてくださった皆様。


もし「おもしろかった!」「切なすぎる結末が最高だった!」「22日間毎日更新お疲れ様!」と少しでも思っていただけましたら……、


ぜひ、ページの一番下にある【☆☆☆☆☆】を、満点の【★★★★★】にタップして、この作品に最後の「星」を灯していただけないでしょうか? 


わずか1秒のそのタップが、毎日必死にプロットを組み、音楽を生成し、駆け抜けてきた私にとって、これ以上ない最高のご褒美になり、救いになります。


また、スマートフォンの画面の上か下にある【ブックマークに追加】ボタンをぽちっと押していただくだけで、明日の18時の更新が最速であなたの本棚に届くようになります。どうか応援よろしくお願いいたします!



【主題歌のお知らせ!!】

主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!

①iti「運命の人〜暴走〜」

②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」


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挿絵(By みてみん)


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