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16/22

4-1 七人の作戦会議

挿絵(By みてみん)


【前回の振り返り】


美月のマンションの前、月明かりの下で手紙を開いた一雄。


そこに綴られていたのは、彼が信じて疑わなかった『運命』を根底から覆す、残酷な拒絶の言葉だった。


萎れきった一輪の薔薇を抱きしめ、夜空に向かって号泣する一雄。


――しかし、その手紙が書かれるまでには、少女たちの長い準備期間があった。


物語は、あの絶望の夜から「一か月前」の過去へと遡る。




【作品紹介】


本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。



一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。


【公式連動楽曲】

iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!

一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!


【2作連動の仕掛け】


主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?


二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。



【連動楽曲】

YouTube・noteにて順次公開!

①iti視点「運命の人〜暴走〜」

②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」



激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。


(リンクは後書きの下にあります)

【4-1 本文】


ここから物語は、一か月前へ遡る。

第三章で、一雄は美月からの手紙を読んだ。


月明かりの下で、一輪の薔薇を抱えたまま、声を上げて泣いた。


しかし、その手紙が書かれるまでには、長い準備期間があった。


第二章の終わりで始まった、UVA48の作戦会議。


その続きを描く。


〜〜〜〜〜〜


その夜。


ハンバーガーショップの閉店後、スタッフルームにUVA48のメンバー七人が集まっていた。


普段なら、仕事を終えたあとの短い休憩場所だ。


着替えをしたり、飲み物を飲んだり、他愛のない話をしたりする。


しかし、今夜は違っていた。


白いテーブルの中央に、一雄からの手紙が置かれている。


手紙の隣には、美月のスマートフォン。


そして、美月本人は、手紙から少し離れた椅子に座っていた。


腕を組み、何度も手紙を見ている。


けれど、手紙に触れようとはしなかった。


「もう、一人では抱えきれない」


美月が、静かに言った。


その声には、疲れがにじんでいた。


向かいに座っていた星野美咲が、ゆっくりとうなずく。


「うん。これは、ちゃんとみんなで考えたほうがいいと思う」


美咲は、七人の中で最も落ち着いていた。


話し合いが始まると、いつも自然に全体をまとめる。


今夜も、テーブルの上にメモ用紙を置き、ペンを手にしていた。


「まず、確認するね」


美咲は、一雄からの手紙へ視線を落とした。


「一雄さんは、美月の自宅の住所を知っている」


美月が小さくうなずく。


「配達先として知った住所を、仕事とは関係ない目的で使って、部屋の前まで来た」


「そう」


「しかも、手紙の内容は……かなり一方的」


美咲がそこまで言うと、高橋愛梨が手を挙げた。


「はい!」


「愛梨、学校の授業じゃないんだから、手を挙げなくてもいいよ」


田中莉子が、すぐに突っ込んだ。


「でも、こういうのは形から入ったほうがいいじゃん!」


愛梨は、真剣な顔で言った。


「まず名前をつけようよ」


「名前?」


美月が聞き返す。


「そう。作戦名があったほうが、みんなの気持ちもひとつになるでしょ?」


愛梨は、テーブルの上にあったペンを手に取った。


そして、メモ用紙に大きく文字を書いた。


『プロジェクト・完全拒絶』


「どう?」


愛梨が、得意そうに紙を掲げる。


莉子が、すぐに眉をひそめた。


「名前が物騒すぎない?」


「でも、目的は完全に拒絶することなんだから、間違ってはいないよ」


水野涼香が、冷静に答えた。


その隣で、莉子が愛梨の書いた文字を見つめる。


「いや、間違ってるとは言ってないけど……」


「それなら決定ね!」


愛梨が、すぐにペンで丸をつけた。


「まだ決まってないから!」


莉子の声が、スタッフルームに響いた。


美月は、二人のやり取りを見ていた。


ほんの少しだけ、口元がゆるむ。


しかし、すぐに表情を戻した。


「笑ってる場合じゃないよね」


美月は、手紙を見つめながら言った。


「ごめん。私のせいで、みんなを巻き込んでしまって」


「美月のせいじゃないよ」


桜井結衣が、すぐに答えた。


結衣は、美月の隣に座っていた。


さっきから何度も美月の様子を確認している。


「怖かったよね。自分の部屋の前に、あんな手紙が置かれていたら」


美月は、ゆっくりとうなずいた。


「うん……」


「しかも、仕事で知った住所を使って来たんでしょ?」


「そう」


結衣は、手紙から一雄の名前へ視線を移した。


「それなら、曖昧な態度を続けるのは危ないと思う」


水野涼香が、静かに続けた。


「一雄さんは、美月の言葉を自分に都合よく解釈している」


「天気の話をしただけで、好意があると思われた」


美月が言った。


「会話を終わらせようとしても、もっと話したいと言われた」


「笑顔を見せただけでも、特別な意味に変換される」


涼香は、メモ用紙に短く書き込んだ。


曖昧な態度では伝わらない。


「一度、はっきり断ったほうがいいんじゃない?」


小林ひなたが、手紙を指差した。


「この手紙に、返事を書くとか?」


「返事を書いたら、また会いに来るんじゃない?」


結衣が答える。


「でも、返事をしなかったら、もっと勝手に解釈されるかも」


ひなたは、困ったように首を傾げた。


「どっちにしても、面倒だね……」


その言葉に、莉子が深くうなずいた。


「本当にそう。普通なら『ごめんなさい。お付き合いできません』で終わる話なのに」


「普通ならね」


美咲が、静かに言った。


「でも、一雄さんは普通の受け取り方をしない」


スタッフルームに、短い沈黙が落ちた。


誰も反論できなかった。


美月は、手紙を見つめたまま、両手を膝の上で握りしめている。


「私、もうあの人とは関わりたくない」


美月が言った。


「店で会うのも嫌。家の前に来られるのも嫌。これ以上、私の生活を知られるのも嫌」


その声は震えていた。


結衣が、美月の手にそっと触れた。


「うん。そうしよう」


愛梨が、少しだけ身を乗り出した。


「じゃあ、どうやって完全に関わらないようにする?」


涼香が、メモ用紙を新しく一枚置いた。


「まず、今の住所を知られている」


「引っ越しが必要だね」


美咲が言った。


美月は、黙ってうなずいた。


「それから、この店に来れば、また会えてしまう」


莉子が言う。


「じゃあ、退職?」


ひなたが、驚いた顔をした。


「引っ越して、仕事も辞めるの?」


「そこまでしないと、逃げられないと思う」


美月は、苦しそうに答えた。


「私だって、この店を辞めたいわけじゃない。でも、一雄さんが配達に来るたびに、これからも同じことが続くなら……」


美月は、そこで言葉を止めた。


結衣が、その続きを代わりに言った。


「美月が安心して暮らせる場所を作るほうが大切だよ」


美咲は、メモ用紙に書き込んだ。


・新しい住居を探す

・退職の準備をする

・一雄と直接会う機会を減らす

・手紙への対応を決める


愛梨が、メモをのぞき込んだ。


「でも、引っ越しと退職だけだと、一雄さんは探し続けるんじゃない?」


「そうだと思う」


涼香が答えた。


「だから、ただ消えるだけでは不十分。本人に『もう関係がない』と納得させる必要がある」


「納得するかなぁ……」


莉子が不安そうに言った。


「一雄さん、何を言っても自分に都合のいい意味へ変えちゃうから」


「だったら、伝え方を変えるしかないよ」


美月が、初めて顔を上げた。


七人の視線が、美月に集まった。


美月は、テーブルの中央に置かれた手紙を見つめた。


そして、ゆっくりと口を開いた。


「一雄さんを、遊園地に誘おうと思う」


スタッフルームの空気が止まった。


愛梨が、最初に声を上げた。


「えっ!?」


莉子も、目を見開く。


「そっち!?」


結衣は、美月の顔を見つめた。


涼香だけが、黙って次の言葉を待っていた。


美咲が、静かに尋ねる。


「遊園地に誘って、そのあとどうするの?」


美月は、少しだけ息を吸った。


「私は、行かない」


愛梨の口が、大きく開いた。


「デートに誘うのに、行かないの!?」


「うん」


美月は、はっきりとうなずいた。


「でも、ただ誘うだけじゃない」


美月は、テーブルの上に置かれた手紙を見つめた。


「一雄さんが、絶対に断らない状態にするの」


「絶対に?」


莉子が聞き返した。


「うん。ここ一か月、一雄さんに少しずつ優しくする」


美月は、ゆっくりと言葉を続けた。


「名前を呼ぶ。会話を増やす。笑顔を見せる。歌の話を聞く。一雄さんが、自分に特別な気持ちを持たれていると思うようにする」


「つまり……」


ひなたが、少し不安そうに言った。


「一雄さんを、どんどんその気にさせるってこと?」


「そう」


美月は、うなずいた。


「一雄さんが、私から遊園地に誘われたら絶対に断らないと思うくらいまで、期待させる」


愛梨の目が輝いた。


「それ、作戦っぽくなってきた!」


莉子が、すぐに突っ込む。


「いや、やってることはかなり怖いよ!」


「でも、今のままでは何を言っても伝わらない」


美月は、静かな声で言った。


「はっきり断っても、自分に都合のいいように解釈される。だから、今度は一雄さん自身に、遊園地へ来る理由を作ってもらうの」


水野涼香が、腕を組んだ。


「一雄さんが、絶対に来ると確信するまで、態度を変え続ける」


「そういうこと」


美月は答えた。


美咲がメモ用紙に書き込んだ。


・一雄に少しずつ優しくする

・会話の回数を増やす

・名前を呼ぶ

・音楽への関心を示す

・一雄が断れない状態にする

・遊園地へ誘う

・その間に引っ越しと退職を行う

・結衣が手紙を渡す


愛梨が、メモをのぞき込んだ。


「一か月で、そこまで仕上げられるかな?」


「仕上げるしかないよ」


美月は、手紙を見つめながら言った。


「一雄さんが遊園地へ来なければ、この作戦は成立しない。だから、来るかどうかに賭けるんじゃない」


美月は、はっきりと言った。


「必ず来るようにするの」


スタッフルームに、短い沈黙が落ちた。


莉子が、ゆっくりと口を開いた。


「それって、完全拒絶のために、まず一か月かけて完全に期待させるってこと?」


「そう」


美月は、小さくうなずいた。


「一雄さんが、私とのデートを人生で一番大切な予定だと思うくらいにする」


結衣の表情が、少しだけ曇った。


「美月……本当に大丈夫?」


美月は、結衣を見た。


「大丈夫じゃないよ」


正直な言葉だった。


「でも、これ以上、普通に接しても終わらない。なら、終わらせるために、最後までやるしかない」


美咲は、メモ用紙の一番上に、大きく作戦名を書いた。


『完全拒絶作戦』


その下に、第一段階を書き込む。


『一雄を、絶対に断らない状態にする』


愛梨が、その文字を見つめた。


「なんだか、恋愛作戦みたいだね」


莉子が、すぐに言った。


「恋愛じゃないから。拒絶だから」


涼香が、冷静に続ける。


「ただし、一雄さんにとっては、恋愛が始まる一か月になる」


美月は、目を閉じた。


そして、ゆっくりと息を吐いた。


一か月後。


一雄は、自分から遊園地へ来る。


美月を待つために。


運命のデートだと信じて。


その間に、美月はこの街から消える。


「明日から始める」


美月が言った。


七人の視線が、再びテーブルの中央へ集まった。


白い封筒。


そして、完全拒絶作戦の計画書。


その夜から、美月が一雄を遠ざけるための一か月が始まった。



【4-2へ続く】

第16話をお読みいただき、ありがとうございます。


【次回の見どころ 毎日18時頃更新予定】


第17話 4-2


申し訳ございません。まだ書き上げておりません。急ぎ準備してますのでお待ちください。





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【主題歌のお知らせ!!】

主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!

①iti「運命の人〜暴走〜」

②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」


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