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14/22

3-7 店に残された手紙

挿絵(By みてみん)


【前回の振り返り】


誰も来ない遊園地を後にし、美月の身を案じて表札の消えたマンションへ走った一雄。


そこで管理人から告げられたのは「今日引っ越したよ」という非情な現実(夜逃げ)だった。


壊れそうな現実を前に、一雄は彼女の残像を追い、バイト先であるハンバーガーショップへと再び激走する――。




【作品紹介】


本作は、noteで「運命の人〜ストーリー〜」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。



一人の男がバイト先のハンバーガーショップの店員(実は地下アイドル『UVA48』のセンター・美月)への純愛を暴走させ、周囲を巻き込む大騒動へと発展していく、切なくも狂気的な音楽連動型・現実世界恋愛小説です。


【公式連動楽曲】

iti視点ソング『運命の人〜暴走〜』の歌詞世界と完全シンクロ!!

一雄の脳内で運命の歯車が激しく回り出す瞬間を、ぜひメロディと共にお楽しみください!


【2作連動の仕掛け】


主人公「宇場一雄」は、別作品『フーデリオン』の主人公と同一人物です。あちらの作品に登場する「喉に傷があるバイク屋のオヤッサン」の正体とは? そして店に飾られた「一輪の赤い薔薇」の真相とは……?


二つの世界線が交錯する時、本当の『運命』が紡がれます。



【連動楽曲】

YouTube・noteにて順次公開!

①iti視点「運命の人〜暴走〜」

②UVA48視点「運命の人〜完全拒絶〜」



激しく狂おしい音楽の予感を胸にお楽しみください。


(リンクは後書きの下にあります)

【 3-7 本文】


一雄がハンバーガーショップに到着したとき、店内はすでに閉店間際だった。


自動ドアの前で、一雄は立ち止まった。


呼吸が乱れている。


遊園地から駅まで走った。


電車の中でも落ち着かず、最寄り駅からマンションまで走った。


そして、マンションから、またこの店まで走ってきた。


胸が苦しい。


左手には、白い紙に包まれた一輪の薔薇を握っている。


薔薇は、すっかり元気を失っていた。


それでも一雄は、手放さなかった。


美月に渡すまでは、捨てるわけにはいかなかった。


一雄は、自動ドアの前で深く息を吸った。


そして、店内へ入った。


「いらっしゃいませ」


店員の声が聞こえた。


しかし、そこに美月の姿はなかった。


カウンターの奥。


厨房の前。


客席。


どこを見ても、美月はいない。


一雄は、店内を見回しながらカウンターへ近づいた。


そのとき、ひとりの女性店員が一雄に気づいた。


UVA48のメンバー、桜井結衣だった。


結衣は、一雄の顔を見ると、ほんの少しだけ表情を変えた。


驚いたようにも見えた。


困ったようにも見えた。


しかし、それは一瞬のことだった。


すぐに、いつもの接客用の笑顔に戻る。


「……一雄さん」


結衣が、名前を呼んだ。


一雄の胸が跳ねた。


「美月さんは?」


結衣は答えなかった。


カウンターの下へ手を伸ばし、白い封筒を取り出した。


一雄は、封筒を見つめた。


差出人の名前はない。


封筒の表には、黒いペンで、短く書かれていた。


『一雄さんへ』


「これは……?」


「美月からです」


挿絵(By みてみん)


結衣は、封筒を一雄へ差し出した。


一雄は、すぐには受け取らなかった。


白い封筒。


見覚えのある文字。


美月が、自分のために書いた手紙。


そう思った瞬間、心臓の鼓動がまた速くなった。


「美月さんは、どこにいるんですか?」


結衣は、一雄の顔を見た。


その視線が、ほんの少しだけ揺れた。


「……私からは、何も言えません」


「何も?」


「この手紙を読んでください」


「美月さんが、ここに置いていったんですか?」


「はい」


「いつ?」


結衣は、少しだけ間を置いた。


「今日です」


今日。


その言葉を聞いて、一雄は封筒を見つめた。


美月は、今日この店に来ていた。


遊園地には来なかった。


しかし、この店には来ていた。


一雄の胸の奥で、何かがつながった。


美月は、遊園地へ来られなかったのではない。


来なかった理由を、この手紙に書いたのだ。


きっと、急な用事があった。


きっと、体調を崩してしまった。


きっと、自分に会えなかったことを謝っている。


そして、きっと――。


「美月さんは、僕に会いたがっているんですよね」


結衣の笑顔が、わずかに固まった。


「……手紙を読めば、分かると思います」


その言葉を聞いて、一雄はうなずいた。


結衣が何かを知っている。


それは間違いなかった。


美月に何かが起きた。


けれど、結衣はそれを隠している。


一雄は、そう考えた。


隠しているということは、きっと美月を守るためだ。


美月は、自分に会いたい。


しかし、何かの理由で会えない。


だから手紙を書いた。


一雄の中で、都合のいい答えが次々に組み立てられていった。


結衣が差し出した封筒を、一雄は両手で受け取った。


封筒は、驚くほど軽かった。


しかし、一雄には、その中に美月のすべてが詰まっているように感じられた。


「一雄さん」


結衣が呼び止めた。


「はい?」


「その手紙を読んだら……」


結衣は、そこで言葉を止めた。


何かを言おうとしている。


しかし、言ってはいけないことがあるようだった。


一雄は、結衣を見つめた。


「読んだら?」


結衣は、視線を落とした。


「……いえ。何でもありません」


一雄は、封筒を胸元に抱えた。


「美月さんに、よろしく伝えてください」


結衣は返事をしなかった。


ただ、静かに頭を下げた。


一雄は、店内をもう一度見回した。


美月がいつも立っていた場所。


美月が商品を手渡してくれたカウンター。


美月が、自分の名前を初めて呼んでくれた場所。


そこに、美月はいなかった。


それでも一雄は、絶望しなかった。


手紙がある。


美月が、自分に宛てて書いた手紙がある。


一雄は、白い封筒と一輪の薔薇を抱えたまま、店の外へ出た。


夜の空気が、頬に触れた。


封筒の中身を、すぐに確認したい。


しかし、ここで読む気にはなれなかった。


美月の手紙を読む場所は、ここではない。


二人が最初に出会った場所。


あの雨の日、運命が始まった場所。


一雄は、その場所を思い浮かべた。


「そこで読もう」


一雄は、そう決めた。


そして、封筒を胸に押し当てた。


美月からの手紙を抱え、一雄は夜の街へ歩き出した。



【3-8へ続く】

第14話をお読みいただきありがとうございました!


【次回の見どころ 毎日18時頃更新予定】


第15話 3-8「月の下の手紙」


手渡された白い封筒を抱え、一雄が向かったのは二人の運命の始まりの場所。


静まり返った月夜の下、震える指先で開かれた便箋――そこに並ぶ美月からの「本物の言葉」が、一雄のすべてを容赦なく打ち砕く。


萎れゆく一輪の薔薇を抱きしめ、おっさんが夜空の月に向かって号泣する、第三章・怒涛の最終回!


次回のグランドフィナーレ、絶対にお見逃しなく!



少しでも面白いと思ってくださったら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】でのポイント応援や、ブックマーク登録をぜひよろしくお願いいたします!


【主題歌のお知らせ!!】

主題歌は2つ 別々の視点から作詞しました!

①iti「運命の人〜暴走〜」

②UVA48「運命の人〜完全拒絶〜」


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挿絵(By みてみん)


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