邂逅一瞬
今日は学院の入学式だ。空は雲ひとつない快晴で、春らしく桜も咲いている。入学式が始まり、学院長が壇上に上がる。
「みなさん、ご入学おめでとうございます。みなさんはこの学院に通う誇り高き魔術師の卵です。この学院に在学中は、魔法を極め、学び、学友とともに高めあってください。皆さんの未来に幸あれ。」
そうか、学友。『落ちこぼれの王子 』と呼ばれたぼくに友達はいない。この学院に通ったら、友達はできるのだろうか。いや、引っ込み思案なぼくには難しいかもしれない。
「続いて、来賓紹介です。騎士団長ガイア・アルフォンス様、魔導師団長ルカリオ・リアンレーヴ様です。」
魔導師団長様もいらっしゃると聞いてぼくは思わず顔を上げた。あの日からずっと憧れ続けてきた師団長様が目の前にいる。胸がドキドキする。同時に、自分の実力不足に改めて気付かされる。ルカリオ様はこの五年で師団長になったのに、ぼくはまだ学院一年生だ。ぼくは、もっともっと努力しようと改めて決意した。
クラス発表。クラスは実力順になっていて下からB3、B2、B1、A3、A2、A1、S3、S2、一番上がS1で一クラスは13人程度で少人数だ。そして、ぼくのクラスは驚いたことにS2。三十七位ということを踏まえるとS3が妥当だ。鑑定の儀の結果を踏まえればA2でも納得できる。そんなぼくがS2だ。
「なんでぼくが…?」
理由はよく分からなかったが、とりあえず教室に入ることにした。
「ここが…S2!」
いかにも、魔法の才能がありそうな人たちが集まっていた。魔力微小のぼくは場違いなのではないかと思うほど、緊張した空気だった。
「おい、あいつ例の落ちこぼれ王子様だよな。」
「親のコネだろどうせ。」
軽蔑され、疎まれることには慣れてる。けれど、仮にも六年間、学園生活を共にする学友になるであろう人たちだ。そんな人たちから言われると少し、つらい。
「皆静粛に。」
担任の先生らしき人が現れた。
「今年一年、S2クラスの担任を担当するグライ・ルートだ。適正は水、担当科目は数学だ。数字を知ると魔法を知ることができる。侮ることのないように。よろしく。」
グライ先生。五十代くらいの先生で背は高く細身の人だ。でも、その体からは澄んだ水を連想させるような魔力がずっとあふれ続けている。魔力量で言ったら、教授や魔導師団員などに匹敵するだろう。そんな人が数学の先生をやっているというのはきっと、この人はすごく賢いのだろう。グライ先生のクラスの生徒になれるのはきっと光栄なことだ。
そんなこんなで入学式とお手洗いの場所、この学校のルールなどを確認するためのホームルームを終え、今日は解散した。帰ろうとしたとき、グライ先生に声をかけられた。
「レイン君、少しいいかい?」
学院長室まで連れていかれた。入学早々、何かやらかしてしまったのかと不安になる。学院長室の扉をグライ先生が開ける。すると、そこにはぼくが尊敬してやまない人物がいた。
「る、ルカリオ様?」
「初めまして…ではないですね、お久しぶりです。レイン王子殿下。」
同じ部屋で同じ空気を吸っているということがとてもうれしかった。それと同時に、とても緊張した。
「お久しぶりです。その節は、ありがとうございました。ルカリオ様に救っていただいたこと、今でも鮮明に記憶しています。」
「“様”などとつけないでください。あなたは一国の王子なのですから。」
驚いた。あの時はいっぱいいっぱいだったから気づかなかった。ルカリオ様は魔法もすばらしい。それだけでなく、魔導師団長という雲の上の存在になってもこんなぼくに気さくに接してくれるとても優しい方なのだ。そのことはより一層ぼくのルカリオ様へのあこがれの気持ちを強くさせた。
「いいえ、ルカリオ様はぼくの恩人ですから。」
「そうですか。まあ、そんなことはおいておきましょう。本題に入りますね。レイン殿下、魔法適性の再鑑定を行ってもよろしいでしょうか?」
再鑑定…?なぜ、今になって。そのときのぼくは理由がまったく分からなかった。




