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一歩一歩

 ぼくは、才能ゼロと言われた。

 この国、アステリア王国では3歳になった子供は鑑定の儀を受けなければならない。この儀を受けて初めて、魔法を使えるかどうかが判明し、適正属性、特別な才能が判明する。もちろん、第八王太子である僕も3歳の時にこの儀を受けた。そして、言い渡された結果は

「魔力微小故、計測不可。」

王である父はこの結果を聞いてもなお、ぼくを愛してくれた。けれど、兄たちや使用人、国民たちに落ちこぼれと呼ばれ軽蔑された。ぼくは、その時初めて認識したのだ。自分は、人一倍努力しなければならないと。五歳の時、その考えに拍車をかける出来事が起きた。


 その日は、雨が降っていた。じめじめとしていて天然パーマのぼくは髪がはねて嫌だった。そんなとき、魔物が襲ってきた。ゴブリンの大群が王城に詰めかけ、ぼくの目の前にも現れた。もう、命はないと思った。未練はなかったし逃げようとも思わなかった。そんなぼくを救ってくれたのが、現魔導師団長、当時は魔法学院を卒業して間もない新人魔導師であったルカリオ・リアンレーヴ様だ。ぼくがこの世で最も尊敬している人。ぼくがゴブリンに殺されかけたとき、新人とは思えぬ火魔法でゴブリンを倒した。無詠唱という誰も到達できないような領域に達していた。その人が魔法陣を展開すると辺り一帯深紅の炎に包まれて、近衛兵でもさばききれない数百を越えるゴブリンをあっという間に殲滅していった。


 その出来事があってから、ぼくはルカリオ様がいる魔導師団に所属するため、魔法の訓練をたくさん行った。四大属性の火、水、風、土に加え中位属性の雷、氷、木、音の計八つの属性は高位魔法が使えるようになるまで努力した。習得には数十年かかると魔導書には書いてあったけれど、あこがれの人に近づくために寝る間も惜しんで努力した。朝は日が昇る前から王都一周走って、昼間は剣術と魔法の練習、夜は月がてっぺんに昇るまで魔法理論の勉強をした。五歳の時にルカリオ様に出会ってから十歳になるまで毎日、雨の日も、風の日も、雪の日もやった。


 十歳になると、貴族や王族の子供は魔法学院や騎士学院に通う。今日は入学試験の合格発表。順位も発表されるため、入学時の実力順が分かってしまう。百二十人中三十七位、僕は上の中くらいの立ち位置だった。自分がここまでいけると思っていなかった。生きることをあきらめたこともあった。魔力微小と言われ、落ちこぼれ王子と呼ばれ、父以外味方はいなかった。そんな自分がここまで実力を上げることができたのはこの五年の努力の成果だとぼくは思う。このことは、誇っていいのかもしれない。

「ぼく、もっと頑張ろう。」

もっと頑張って、もっともっと頑張って、ルカリオ様に会う。それがぼくが生きて、がんばる理由だから。


 だから、このときのぼくは知らなかった。ぼくの試験結果をめぐり、学院上層部で激しい論争が起きていたこと、そして、父や兄たちが『魔力微小』のぼくが八つも属性を扱えることにとても驚いていたことを。

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