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臥薪嘗胆

「魔法適性の再鑑定を行ってもよろしいでしょうか?」

 あこがれの人、ルカリオ様にそんなことを言われたぼくは驚いた。なぜ、今になって鑑定を行うのか。ルカリオ様が言うことだからきっと何かしらの意図があるのだろうが、見当がつかない。

「どうしてですか?」

その問いに、学院長が答えてくださった。

「レイン、お前の入学試験の結果が、上層部で話題になっているというのは知っているか?」

「…え?」

「入学試験、いくつの属性を使った?」

「えっと、八つです。」

「そう、それが問題なんだ。」

「鑑定の儀で魔力微小と言われた十歳の子供が、こちらにいらっしゃる魔導師団長のルカリオ様ですら成しえない八つの属性を使うというのは前代未聞だ。」

少し間があいて。

「どうやって習得した?まさか、『才能』があったのか?」

寝る間も惜しんでやった訓練。毎日努力して習得した属性魔法。八つも使えるのは自分が頑張ったからだと思う。魔導書には習得に数十年の時間を要すると書いてあったけれど、ぼくは、ただルカリオ様に追いつきたかっただけだ。

「いいえ、『才能』はありません。ぼくは、頑張っただけです。」

「頑張っただけ...?」

ルカリオ様が不思議そうな顔をする。

「ちなみに、何年お続けになられたのですか?」

「五年です。ルカリオ様に会ってからずっとです。」

部屋がしんとなった。夕方特有の、カラスの鳴き声だけが遠くから聞こえてくる。

「なんだと!?」

グライ先生はとても驚いている。学院長はなぜか、明後日の方向を向いている。ルカリオ様に至っては、何かを考え込むように目を伏せてしまった。

「そうですか。」

二、三秒。間が空いてからルカリオ様が目を輝かせた。

「あっはは!殿下、僕のところに来ませんか?訓練して差し上げますよ!」

ルカリオ様が突然、そんなことを言い出した。

「努力でここまで属性適性を増やすとは。」

「もしくは、計測できなかったのでしょうか?興味深いですね。」

もしかしたらルカリオ様は研究者気質なのかもしれない。王城の研究室にいた研究員さんも、新しい発見をするとこういう目をしていた。

「殿下、やはり再鑑定が必要なようです。今すぐ行いましょう!」

ぼくは、新しいルカリオ様の一面を知ることができた。いや、今はそんなことを考えている場合ではない。ぼくの耳が悪くなければ、今、ルカリオ様は『今すぐ行う』とおっしゃった。そこまで急を要するものであるとは想定していなかった。


 そして、その後の鑑定の結果が一国の王を震わせ、魔法学院のみんなを驚かせることになるとはこのときのぼくは思わなかった。

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