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第一章 実力2番、努力は一番                   第三話 『人』としての対話【第一章完結】

前回のあらすじ

人助けをしていい気分だった智仁は朽木たちに決めつけられ気分が沈んでしまう。そんな智仁はめいやスープジャーに入れてきたみそ汁で徐々に気持ちが晴れてくるがそんなときハイスペックな幼馴染の翔から不思議な相談をされて…


※割と重要です。〜(波線)で囲われているナレーションシーンのことについては智仁たちはその情報を知ったわけではありません。

智仁『わかった。』


翔『んじゃそういうことでよろしくな!』


嵐のようなやつだ。


あいつは抜けてるとこもあるから普通になくしただけかもしれない。

でもたしかに小野ならやりかねない気もする。とはいえ断定は良くない。まずは放課後だ。


『テスト返すぞー』


この前のテストか。まあ力を使えば毎回満点なのだろうが、僕はそれを望まない。普通の高校生として生きたいんだ。


みっちゃん『先生...トイレ行ってきてもいいですか?』


『行ってこい。』


『次、神智仁。』


うっわ62点。ひどい点数だ。

古文とかやっぱりよくわからん。


めい『智仁くん、何点だった?』


智仁『うーん。あんまよくなくて62点。』


めい『えっわたしよりいいよ。わたしなんか57点...。』


智仁『そんな変わらないよ玉舘さん。元気出しなよ。』


可愛い。うん。


朽木『お前ら楽しそうだな。俺の点数見ろ。』


当然のごとく差し出された答案の点数は三桁がある。三桁目まであるということはそういうことだ。嫌味な上勉強ができるのが腹立たしい。


小野『朽木様ほどではありませんが私の点数も見てくださいよ。』


こいつは90点台。まったく神はもう少し善人に才を分け与えましょうよ。


朽木『小野、お前もなかなかいい点じゃないか。』


小野『ありがとうございます!朽木様。』


あれ?みっちゃんがいない。

今日休みだったのか?気が付かなかった。


『ほら一席に戻れ。解説するぞー。』


朽木『戻るぞ。』


小野『はい!朽木様。』


その後解説が始まったようだが僕はそっちのけでぼーっと窓の外を眺めていた。解説なんて無駄だ。そのまま流れるようにホームルームまで終わり放課後。約束通り翔のクラスに行こう。


翔『おっ来た来たー』


智仁『翔。理由、分かるんだろうな?』


翔『静かにしろ。ほら、あいつ。』


彼の指がさす方向に目を向けると、


智仁『ほんとだ。』


たしかにそこには小野の姿。翔の机を漁ってなにかを持ち出している。ほとんどクロじゃないか。しかもなんか足早に教室から出ていったぞ。


翔『追いかけるぞ!智仁。』


智仁『わかった。』


2人で追いかけるとその先で小野が自分のかばんに漁って得たものを詰め込んでいるようだ。


智仁『小野!何してんだ。』


身体をビクッと震わせ

小野『智仁!?なんでここに...』


智仁『翔もいる。言い逃れはできないぞ。』


小野『わかった認める。盗んだよ。でも毎回返してるだろ?』


翔『返せばいいわけじゃないだろ?現に俺はそのせいで教科書なくて困ってるんだ。返せよ。』


小野『ほらよ。返しただろ?』


翔『返せばいいわけじゃないって言ってるだろ?なんでこんなことしたんだよ。』


小野『翔、頭いいからお前の教科書の書き込み見て勉強してたんだよ。悪いかよ。』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

小野は由緒正しい家柄の生まれ。一人っ子ということもあり、ひときわ厳しく育てられてきた。「できることは当たり前」という教育方針により、小野はできることは褒められるに値しないほど当然のことと思うようになる。その教育方針は小野にとって合っていたのか小野は幼少期、周囲から神童と言われるほど優秀であった。得意の将棋では全国大会に出場し、テストではほとんど満点。小野もそのことに誇りを持っておりそのまま輝かしい人生を歩んでいくはずだった。


しかし転機が訪れる。地元の小学校から名門中学に上がるとき小野は自らが井の中の蛙だということを思い知らされた。朽木葵。彼は小野を上回る天才だった。地元では負けなしだった小野に敗北の味を覚えさせたのは彼だったのである。彼の存在により一番でなくなった小野に両親は期待を寄せなくなった。小野をちやほやしていた周囲の人間も同様に。小野は大海に出て己の周りからの評価は常に薄氷の上にあったに過ぎなかったと悟った。そして同時に諦めた。一番であることを。しかし、小野は勉強することを諦めたのではない。ただ、疲れたのだ。一番でいることに。そしていつしか一番でなくなった自分に価値を見出せなくなり小野は朽木の腰巾着として振る舞うことを選んだ。朽木の取り巻きになったのは一番を諦めてからも彼は一番に近い場所にいることを望んでいたからだった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


小野...小野もここまでなりふり構わないほど必死で勉強しての成果だったのか。才能とか言って悪かった。


翔『悪いに決まってるだろ。でも、帰ってきたし今回は許してやる。二度とこんなことするなよ。』


小野『そんなすんなり終わらせていいのかよ。』


翔『怒って済む問題か?俺はお前とけんかしたかったんじゃない。返してほしかっただけだ。』


小野『そうかよ。悪かったな。』


翔『おうよ。言ってくれれば貸してやったのに。』


ほんとだよ。

まあ小野なりにプライドがあったんだろう


小野『え?』


翔『当たり前だろ。友達なんだから。』


小野『友...達...?』


その瞬間小野はポロポロと泣き始めた。いつものように悪態などつかず静かに。


翔『おっおい。泣かせるつもりはなかったんだって。』


智仁『翔。小野は嬉しくて泣いてるんだよ。』


翔『そうか。そういうことか。』


なんでわからんのよ翔。


智仁『ところで結局、教科書と靴がよく無くなるって言ってたよな?靴は?』


小野は鼻をすすりながら答えた

『私は...靴は本当に知らん。靴なんかどうやって勉強に使うんだ。』


智仁『じゃあ、靴はただお前が無くしてるだけなんじゃ...』


翔『え?犯人俺?』


小野『ふふっ。』


翔『小野、お前笑うなよ。』


小野『笑うとこだろここ。』


翔『靴に関してはごめん。疑って。』


小野『別に気にしてない。』


智仁『なんか2人は仲良くなれそうだね。』


翔&小野『なれない!』


智仁『ほら、ハモった。』


ひとしきり笑った。笑ったんだ。あの小野が。彼にとって今日はいい日になったんだろう。たぶん。魔法なんてなくても...いや、魔法でないから人の心は救われるのかな。

第三話にも目を通していただきありがとうございます。これにて第一章は終わりとなります。これからも彼らの物語は続いていきます。連載も次回から第二章に突入します。次回、第二章の第一話は明日投稿する予定です。これからも定期的に更新していきますので今後ともよろしくお願いします。

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