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【書籍化&コミカライズ】悪役令嬢なので、溺愛なんていりません!  作者: 美依
第四章

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 不本意すぎる聖女の称号を得てから数日、王家と神殿の連名で聖樹の新芽が確認されたと発表された。


 誰もが気になる聖女の存在に関しては、神殿の上層部しか知らない。


 王家にはまだ隠されている。表向きの聖女の役割はリサで、聖樹の浄化に関してはアレクシアが担う――は揺るがない決定事項であり、そのための環境を整えるためだ。


 いいようにしてくれるだろうと、絶対的な味方のサヴェリオに丸投げにしていると、教皇から聖樹の浄化を試みてもらえませんかと打診された。


 普段は神官たちが聖力を捧げた聖遺物を使い、教皇かその次席、護衛も担う聖騎士が浄化を行っているらしい。悪しき者を近づけないため、聖樹の庭に入れる者はごくわずかに徹底されていた。


 興味もあり引き受けたアレクシアは、身バレしないようベールで顔を隠して向かい、紹介された聖騎士の整っている容姿にひそかにテンションを上げた。


 けれど庭に足を踏み入れ、我に返る。向かい合った聖樹は、風がないのにはらはらと葉を落とし、枯れかけていると植物に関して疎いアレクシアでもわかった。


(ほんとに浄化できちゃったし)


 促されるままに魔力を流すだけで、違和感も頑張った感もなかった。 


 満面の笑みの教皇に見送られ神殿を後にした日からしばらくして、思いがけない知らせがアレクシアのもとへ届いた。


 神殿からだった。

 教皇が不在時には責任を担う人物自らが、ロシェット家を訪れた。


 聖女の存在を公にしていないので、儀礼的に水晶を公開していたところ、ある女性が触れて聖女の資質を示したらしい。


 当然、事情を知っている者たちは困惑する。聖女が二人になったからだ。


 聞かされたアレクシアも、にわかには信じられない。

 水晶の中へ封じられていた聖女の力はフェルナンドのものであり、それはすでに本人の元へ戻っている。その時点で、誰かが得る力はない。


 聖女の力があるとされたアレクシアは、ブレスレットのフェルナンドを身に着け過ごすことで、魔力が影響を受けたからだ。


「その方の、お名前を伺っても?」

「ナタリー・ヴェルネ男爵令嬢です」


 ああ、とアレクシアは心の中で感嘆の声を洩らす。


 ゲームのヒロインだ。

 本来は水晶に封じられていた力を受け取るのがナタリーだったのだろう、きっと。


 また邪魔をした? と思うものの、元々はフェルナンドの力だ。意図して奪い取ったわけでもない。持ち主が取り戻しただけだ。


 ただアレクシアがジェフリーの婚約者候補から辞退し、隣国に遊びに行かなければフェルナンドはこの国へ来ていないし、水晶の力を受け取れていない。


 本来と違う行動をするとこんな風に変化するのかと驚くばかりだ。


 水晶から聖女となる力を得ることはできないのに、ヒロインであるナタリーが特別なのか、何か意図を持って聖女を騙っているのかまではわからない。


 やはり前世の記憶か何かがあるのでは? と考えてみるが、水晶も聖女としての資質に反応したらしいので、あながち偽者と断じるわけにはいかなかった。


 思考に行き詰まりを感じる。お手上げの気分だった。


「聖女の役割、お譲りしますが?」


 やります! とアレクシアが手を挙げたわけでも、望んでやっているわけでもない。なんなら代役さえもアレクシアは立てている。


 それならば聖女の資質を持ち合わせた、やりたい人がやればいいのでは? に思考が傾き、軽い気持ちで提案すると向かいの神官が青い顔をした。


「そのようなことを言わないでください!」


 縋るような眼差しだ。声には切実さが滲む。

 けれどやりたくない宣言し、対価を要求する俗物的なアレクシアにこだわる理由がわからない。


「やりたい方にやってもらった方が、神殿もよろしいのでは?」


 うっかり手に入れた、聖女の肩書きに未練はない。

 ナタリーが引き受けてくれるのならば、どうぞどうぞ、なのだが、フェルナンドから事情と仕組みを聞いているので疑問は残る。それでもどちらが本物か競い合ってください、などと提案されるなら辞退一択だ。


「まず、本物かわかりません! ロシェット様はすでに浄化をされているので間違いなく本物です。ですが、もうお一方はわかりません」


 新たな聖女がただ騙っただけの可能性が完全には否定できない。


 アレクシアを聖女の任から解放した後で、やっぱり違った、などとなった時は判断した全員が責任を問われる。再度頼まれたところで、いらないと言ったのはそちらですよね? とアレクシアならば拒否だ。


 よくわかっているなぁと感心する。あれだけ嫌がって代理まで立てているのだから、危機管理能力の高い者なら察するところがあるのだろう。だからこそ逃がすまいと必死だ。


「では、どうされるのですか? 競い合う気はありませんよ」

「はい! それは承知しております」


 良い返事の後すぐに、神官の視線が揺れる。上層部以外聖女の存在を知らないせいで数人の神官が、聖樹の浄化を試みてもらえばいいのでは――と主張しているらしい。


 それがいいのでは? とアレクシアも思うが、極々限られた者以外は入れない場所に、曖昧な立場のままでは立ち入ることを許可できないようだ。


「……どうしたらいいですかね? ロシェット様」


 なぜ私に聞く? と、アレクシアは呆れた。

 神殿の責任者ではないし、決定権も持っていない。押しつけられたような力があるだけだ。


「私ではお役に立てないかと」

「そうおっしゃらず!」


 教皇が出張とは言え、次点で偉い人だと聞いている。こんな風に指示を仰がれたら、まるでアレクシアが陰で神殿を牛耳っているみたいだ。


「神殿が対処すべきことですよね」

「ロシェット様を聖女から外すことはありえません。これは神殿の意思です」


 はっきりきっぱり言い切る。ロシェット家を敵に回すなど神殿としてありえませんと続き、アレクシアよりも父兄が怖いのだと察した。


「ですので、新たに名乗り出た方をどうするべきかのご相談です」

「それを私に相談されましても……」

「彼女も聖女の資質を持っているのならば、拒否して神のご意志に背くことになるわけにはいかないのです」


 無神論者のアレクシアとは違い、神に仕える者の苦悩だった。


「ヴェルネ様が聖女の力を持っているかどうかを、見極めることはできませんか?」

「残念ですが……」


 人の魔力の質などアレクシアにはわからない。何を以て聖女かもあやふやであり、シナリオではナタリーでした、以外確信を持って断言できなかった。


「むしろ、神殿ではできないのですか?」

「はい。聖女様は癒しの力を持ち、聖樹を浄化することができるとしかわからないのです」

「悩ましいですわね。ですが、教皇様がお戻りになるのをお待ちするのがよろしいかと」


 フェルナンドならできるのかな? と思ってみるが、頼んだところで、何で俺が? 面倒くさいと言われそうだ。


「それがですね、ヴェルネ様の触れた水晶が反応したのを目撃した神官がおりまして、聖女として迎え入れられない事情を説明しないわけにもいかず、すでに聖女の資質を証明している方がいると話したら顔合わせを望まれまして」

「顔合わせを?」


 聖女の存在をナタリーに伝えたら、聖女は私ですと言っていたらしい。公平を期すために、揃って教皇と向き合いたいと言って譲らないようだ。


「同じ立場な者同士、会う権利はあるでしょうと。それで急ぎロシェット様の元へお知らせにまいりました」


 そうなると、神殿がなんとかしなさいよ、などと悠長なことを言ってはいられない。代役を担うリサは生活に慣れるためにすでに神殿に身を寄せているので、他人事ではなかった。


 面倒事には関わり合いになりたくないの、ほんとなんでよ! と心の中で嘆きながら、アレクシアは同席することを告げた。


綾瀬先生によるコミカライズのコミックス2巻がが3月30日に発売になります。

どうぞよろしくお願いいたします。

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