34.決して無駄にはしない
ここから三章。まだ三章!長いけどまだまだ続くよ!
ボイスドラマとこちらでは台詞が違うのは仕様です
(時間気にしてめちゃくちゃ端折って詰めたんだよおお!!)
控えめなノックが部屋の中に響いた。現状、比較的手の空いていたレオンがノックの主に声を返せば主はゆっくりと扉を開いた。
ノックの主はルーファだった。珍しく白衣を脱いでおりその身は喪服に包まれていた。
「さっき、クロー・ヴェルハウンドの葬儀が終わったわ」
「そう、ですか……わざわざありがとうございます」
深々と頭を下げるレオンにルーファは首を横に振った。
「いいのよ、伝えに来たのは私のエゴ。どこかロキが後悔していればいいなんて思ってしまったんだもの」
「それでも、しっかりと見送ってくれてありがとうございます、ルーファさん」
また同じように深々と頭を下げたレオンをルーファは困った表情で見つめた。
レオンもロキと同じようにクローの葬儀に出なかった数少ない人間だ。
葬儀のことを伝えてもロキと同じようにキーボードを叩き続けた人間だ。
ルーファにはこの二人がよくわからなくなってきていた。
「……レオン、ロキにこれを渡しておいて」
「これは?」
「彼の、クローの腕輪よ」
布に包まれたままの腕輪を差し出しレオンに預けるとルーファは用は終わったと言わんばかりに情報処理室を出ようとドアノブに手をかけ、一度だけロキのほうを振り返った。
ブツブツと「はやく、これが、無駄にならないうちに」と呟きながらキーボードを叩きづつけるロキを見つめ、一言
「ほどほどにしておきなさいよ」
と言い残し、ルーファは部屋を後にした。
* * *
クロー・ヴェルハウンドの葬儀から数日が経った。アザゼルをはじめ、バートンファミリーは何事もなかったように日々を取り戻していた。
いつものように執務室の中ではアベルの声が響いていた。
「……飽きた」
「そう言う前に手を動かしてください」
「そうそう~はい、ボス。書類追加~」
「はぁ!?また倍以上増えてんじゃねえか!ちょっとは減らせ!」
いつものように処理待ちの書類たちが山となっていた。
アベル本人の怠け癖もあるがここ最近、葬儀や情報の確認や襲撃やらとイベントごとがたて続いていた。そのせいもあるのかもしれない、とカルマたちは感じていたがそこで甘やかせばさらにやらないことは知っていたため心を鬼にして書類を捌き続けていた。
「大体俺じゃなくても捌ける書類も俺に回してんだろ!」
「あ、バレました?いつ気付くかなーってカルマと話していたんですよ」
「そうそう~。えと……三ヵ月だからユダの勝ちか~」
「はぁ?!三ヶ月!?そんなに前からかよ!」
ワイワイと騒ぎ続ける三人の耳にコンコンとノックの音が響いた。今日、面会の予定はない。
しばらく黙っていると扉の外から「ロキだけど」という声がかけられ、ユダがそれに答える。
声に答えればロキはゆっくりとその扉を開き、執務室の中へと姿を見せた。
普段からクマは酷いほうだが、今日はいつにも増してクマが酷いように見えた。
「久しぶりですねロキ。クロー・ヴェルハウンドの葬儀からもう五日ですよ?」
「五日……もうそんなに経ってたんだ……けどなんだろう、もやもやしているというより今とてもすがすがしいんだ」
ロキの言葉にカルマが首を傾げた。部下を失い清々しいなんて言う人間は普通いないだろう。
だが、ロキの過去を知っている身としてカルマは首を傾げる以外なにも言わなかった。
「そんでロキはなにをしに来たの?まさか元気ですって報告だけじゃないよね~?」
「あ、そうだった……ボス、報告していいかな」
その言葉にアベルは目だけで返事を返せばロキは待ってましたと言わんばかりに持ってきた書類をカルマへと手渡した。カルマからユダとアベルにその書類が渡ったのを確認し、ロキが口を開いた。
「クローの残した暗号化された情報を解読、解析、情報の信憑性を調査した結果を書類にまとめたよ。要点だけ掻い摘んで説明するね」
「ああ、頼む」
「結論から言うとトラグスの非正規研究所を発見したよ。クローの情報からトラグス本部のデータベースに侵入して確認したから間違いない」
ロキの言葉に目で書類を確認していたカルマたちの動きが止まった。ロキは一切気にせずに続ける。
「研究している内容についてはデータに残っていなかったから不明。けど、いくつか薬の情報を探していたみたいだからこれは契約違反ってとってもいいんじゃないかと思うよ」
ロキの言葉にアベルは深く息を吐き出し、頭を抱えた。
バートンとトラグスは以前から契約をしていた。互いに違法薬物を禁止する領地として決して自分たちが薬に手を出さないというもの。もしこれを破るものがいたならば必ずけじめをつけるという簡単な契約。
もし、ロキの報告が本当ならばこれは重大な契約違反である。
アベルはロキの報告を聞き、手元の書類にすべて目を通すと一度、目を閉じた。
重大な契約違反、敵対するトラグスの動き。そして、この情報を持ち帰ったロキの部下クロー・ヴェルハウンドが死にかけで帰ってきた事実。そのすべてが到底許せるものではない。
アベルはゆっくりと目を開くと目の前にいる部下たちを見つめた。全員がアベルの言葉を待っている。
アベルはゆっくりと視線をカルマのほうへ向けた。カルマはカタンッと一つキーボードを押した。
「……カルマ」
「今バルドルに連絡は取ったよ~武器はすぐに準備終わるよ~」
「そうか、ユダ」
「バルドルを除いたすべてのアザゼルに連絡済みです。エイラも外に出ていましたがすぐに戻れる距離だそうです」
カルマとユダの返答にアベルはゆっくり頷くと最後にロキのほうに目をやった。
「ロキ、全員分の書類を用意しろ。そしてお前はクローんところに行ってやれ……まだ行ってないだろ?」
「……いいの?」
戸惑いがちに発された音にアベルは笑みを返した。
「良いも何も、お前とクロー・ヴェルハウンドのおかげでこの情報を手に入れたんだ。お前とクローにはゆっくり休んでもらいたいのが本音だよ」
「けど、休めない」
「あぁ、けどせめて会いに行く時間くらいはどうにかさせるからお前は今は休め」
ゆっくりと席を立ちロキの元まで足を進めるとアベルは労う様にロキの肩を叩いた。アベルが歩を進めるとともに肩から手が離れるとロキは労いの言葉と与えられた熱をかみしめるように俯き、唇を噛んだ。
アベル派そのまま迷いなく足を進め、執務室の扉の前で振り返るとニヤリと悪い顔で笑った。
「そんじゃ、トラグスの野郎共をぶっ潰しに行くか」




