表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノドの地  作者: 音切萌樹
第二章.変わらぬ日常
34/49

27.財務管理部の苦労

後編はおなじみ18時から!

 バートンの屋敷のとある一角。この部屋は朝から怒号が飛んでいた。


「ほら!もうこっちの書類捌き終わったぞ!これ持って行って次持ってこい!」

「カルマ様!続きの書類先にできたものをお持ちしました!順番を一時的に前後させてます!」

「それしっかりと管理しとけよクロナ!ベル!ルニとイルメナのところに書類持ってけ!」


 指示を飛ばすカルマや大量の書類を持って移動するクロナ。それ以外にもドタバタと走り回る人や書類を持って右往左往とする人など様々な人間が小さな部屋の中を走り回っていた。

 この部屋は通称『給金室』月に一度の給金の日には地獄となると噂されている部屋だった。

 

 そして、今日は給金日の前日。室内はやはり地獄と化していた。


「123456789101112131415・・・・・・100、この束終了。次、123456789101112131415・・・・・・」

「ランク下位の人間はこっち、中位はこっち・・・・・・ちょっとこっちに上位の人混じってんだけど!」

「これも確認完了これも確認完了・・・・・・あれ?」


 ひたすら背を丸めたまま札の枚数を数え、書類との差がないことを確認するイルメナが書類を横に流す。横に流された書類を確認しながら不備を見つけ、声を荒げる修道女のメディナにクロナが駆け寄り、不備のあった書類を回収する。

メディナが無事に確認できた書類をまたさらに横に流すとメディナの隣に座っているクマが酷い美人のルニが上司確認の証明印を押しながら一瞬書類の内容に首を傾げる。

 

 クロナは先ほどメディナから受け取った書類を最後に処理した人物に書類の再処理をお願いするとまた元の場所に戻ってきた。そのクロナのことをルニが両手で行く先を制して呼び止めた。


「クロナさん、この書類再計算してもこの人とのランクに合わないし給金を上げるって話も聞いてないんですけど何か聞いてますか?似たような報告がちらほらあるんですが」

「えっ、そんな急に給金を上げるだなんてことカルマさんが許可しないと思います。書類を見せてもらってもいいですか?」


 クロナが素早く書類の内容を確認していると、逆サイドでは再度カルマの怒号が飛んだ。どうやらまた誰かが計算を間違えたらしい。


「いいか!?一銭の乱れも許されねえぞ!こんな簡単な足し引きの計算なんてガキでも出来んだ!少しでも間違えてファミリーに分配してみろ!間違えた人間と同じチームの来月の給金はねえと思え!!」


 大声でまくしたてていると控えめに扉がノックされ、恐る恐るといった様子で体格のいい青年が顔を出した。室内の怒号と異様な雰囲気に臆しながらも、堂々と声を張り上げた。


「失礼、いたします。ネイン・パールと申します。バルザーク様の命で参りました。マテリア様のサインを頂きたいのですか今お時間宜しいでしょうか」


 部屋の中で作業をしていた人間は一斉に悟った。『あぁ、死んだな』と。だが、それを覆すようにカルマが普段通りの様子でネインのほうに向かった。


「お疲れ~バルドルからの書類だね、待ってたよ。ちょっと待ってね~」


 あまりにも普段外で見ている時と変わらない様子にネインは動揺した。これが、先ほどまで怒声を放っていた人物なのかと。

 カルマは自身の机からペンを持って戻ると受け取った書類を声に出して読みながら随所随所にサインをしていく。


「ほー、次はこんなとこ行くんだ。エイラはもちろん、それに付き合うバルドルも大変だな~・・・・・・あー、なるほど。そのためにこれが必要だってこの間ぼやいてたのか。納得~」


 すらすらとサインをしていくカルマだったがある一点でピタリと手を止めた。しばらく難しそうな顔で考え込んでいたが書類をネインのほうに差し出しながら一点をトントンと指で指した。


「ねえ、ネイン君。この部分の詳細って聞いてる?」


 カルマが指さしたのは領地から少し離れたところへの遠征予定の報告だった。

 遠征するためには物資も金もいる。そのため、長期・遠距離遠征の場合は薬物の管理をしているルーファとファミリーの財務を管理しているカルマのサインが必要となっていた。

それをバルドルからしっかりと聞いていたネインは戸惑いながらもそれに答えた。


「あ、えっとここはあとで兄が・・・・・・レイン・パールがファルタナ様のサインの入った物を持ってくる手筈になっています。それがあれば解決できるかと」

「なるほど・・・・・・ならこの書類はしばらく預ってていいかな?財務管理部としても詳細が分からないとOKも出しずらいからね」

「畏まりました。バルザーク様にもそうお伝えしておきます」


 カルマに書類を渡し、入れ替わりに書類を受け取る。それでは、失礼いたします。とネインが部屋を出ようとするとクロナが慌てた様子でカルマのところへやってきたがそのまま部屋を出て、扉を閉める。

部屋の中からカルマの怒声が響いているように聞こえるが、きっと気のせいだ。


そう、気のせいに決まっているのだ。


「触らぬ神に祟りなし、って言いますしね・・・・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ