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ノドの地  作者: 音切萌樹
第二章.変わらぬ日常
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23.後方支援部隊の過去

後半は18時!

 ウォンウォンとモーターの音が部屋に響いている。情報処理室と言われるここはバートンファミリーの機密情報の保管をはじめ、他のファミリーの情報収集部隊の部屋となっている。

 PCは精密機械だ。熱や衝撃には極端に弱い。そのため、この部屋は年中無休で低設定で冷房がかけられている。

 そんな部屋でグースカ昼寝をしている少年がいた。上下薄いグレーのスエットで何もかけずに椅子の上で眠りこけていた。部屋の中にはこの少年以外誰もいる様子がない。このままでは風邪をひいてしまうだろう。


 そんなPC室をコンコンと、控えめにノックするものが現れた。もちろん、少年は寝ているため返事はない。返事は返ってこないであろうことを理解しているのかノックした人物はゆっくりと扉を開けた。


「ロキ、寝ているの?」


 やってきたのはルーファだった。ルーファはため息をつくと扉を閉め、ロキの定位置に向かう。

やはりロキは自身のPCデスク(定位置)ですやすやと眠りこけていた。

 ルーファは軽く息を吸い込むと叫んだ。


「ロキ!起きなさい!!」


 ビクッと身体を揺らしてロキが椅子から身を落とした。尻もちをついたのか痛そうに腰付近をさすっている。


「ルーファ……起こす時はもっと優しくしてって言ってるじゃないか」

「優しくして起きた試しがないじゃない。ロキにはこれくらいがちょうどいいのよ」

「ふぁあぁ……で、何のご用事ですか、白ヤギさん」

「お手紙ですよ、黒ヤギさん……ごはん、食べてないんでしょ。だから来たの」

「そんな……僕外出るのはちょっと……」

「馬鹿ね、これよこれ。わざわざ持ってきたんだから感謝しなさいよ」


 ずいっ、とバスケットを差し出す。ロキが中を覗けば様々な具材の挟まったサンドイッチが入っていた。


「この間もご飯を持ってきたら貴方、なんて言ったか覚えてる?」

「えっと、なんだっけ……?」

「『簡単に食べられてパソコンを汚さないやつじゃないと食べない』そう言ったのよ。寄りにもよって照り焼きチキンを持ってきたときに」

「そう、だったっけ?覚えてない……」


 ほんの数日前の話だ。食事時にやってこないロキに痺れを切らしわざわざ食事を持ってやってきたルーファにロキは悪ぶれもなくそう言いきったのだ。もちろん、ルーファによる鉄拳制裁が入ったことは言うまでもない。

 少し悩んだ様子を見せたがロキはもう何度目かになる欠伸をしだす。話し最中に何度欠伸をされてもルーファは何も言わず、それどころかロキの口にサンドイッチを突っ込み始めた。


「ほら、早く食べなさい。そしてちゃんと薬飲みなさい」

「バートンの掟で薬は禁止だよ、ルーファ?」

「薬とドラッグは別物よ。飲みたくないからってドラッグと一緒にするのはやめなさい」


 ピシャリと発言を却下し、まだ物の残っているロキの口にもう一つサンドイッチを突っ込む。

この子は放っておけば最初に渡したものだけですぐに逃げようとする。そのため、逃げる前に食べさせるのだ。そうクロナに話したときには「まるでフォアグラを作るみたいですね」と言われてしまった。もちろん、そんなつもりはないが。


「るーふぁ、ふぉうひへふぁ(そういえば)うへふぁ(上は)ふぉうふぁっへふふぉ(どうなってるの)?」


 口の中にサンドイッチを詰め込んだまま、ルーファに問いかけた。ルーファは特に意に介すこともなく言葉を返す。


「上?ああ、ボスたちね。問題はないわ。いつも通りって言うのかしらね。トラグスのボスともいつも通り言い争ってるわ」

ふぉんふぉーひ(ほんとーに)ひふほほーふぃ(いつも通り)はんふぁへ(なんだね)ふぁあ(じゃあ)ふぁふぁん(カナン)っへふぁふは(ってやつは)?」


 ロキの問いにルーファは少しの沈黙の後静かに首を横に振った。


「それについては話に上がっていないわ。知っているのは私とあなた、そして実際に言葉を聞いたバルドルとエイラだけよ」

「……!んく、それって、ボスにまで話をあえて上げていないってこと?あの謎のカナンって人物のこと」

「あげるべき、だとは思うわ。けど、あなたが探っても見つからないのであれば相当の実力者、もしくは私たちでは探れない、探ってはいけない人物ってことよ」


 ルーファの言葉にロキはあからさまに不快感を表情に出した。


「……僕は、負けてない」

「もちろん、私が手塩をかけて仕込んだ貴方が負けるだなんてそうは言わないわ。けど、相手はそう思わないかもしれない。私たちが探り続けていつまでたっても相手を見つけられなかったとき、それは弱味に、舐められる要因になるわ。カナンという人物にとってバートンファミリーの情報管理は甘い、簡単に欺ける、ってね」

「そうだとしても、僕は……」


 悔しそうに俯くロキを宥めようとルーファが瞬間腰を浮かしたが、すぐに体制を直し、扉に顔を向けた。


「どちら様?開いてるから入ってきなさい」


 ルーファの言葉を待ってから扉のノブがゆっくりと回りだし、扉が開く。そこにはスーツ姿の軽薄そうな青年がいた。

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