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ノドの地  作者: 音切萌樹
第一章.バートンとトラグス
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16.ジギタリス会談締結

次回からは週一(土)投稿です。


「さて、それでは気を取り直して続きです。ヴィオレッタの領地およびこの屋敷の所有権についてですが、カイン様」


 オニキスに促され、カインが立ち上がる。


「私たちトラグスはトラグス領に近いほうの3/4を希望するわ。屋敷は該当しないから残りの領地1/4と屋敷はバートンにあげる」


 カインは言いたいことをすべていうとまた同じように席についた。それに不満を漏らしたのはもちろんアベルだ。組んでいた両手を解き、少し前のめりになるように座りなおす。


「ああ?また面白いこと言ってんなぁトラグスのクソ野郎。バートンはその逆を。領地3/4と屋敷の所有権を要求する。てかよこせ」

「あっらぁ~またバートンのお子様が戯言をほざいてるじゃない。譲歩して屋敷までやるって言ってんだから納得しなさいよクソガキ」

「譲歩もクソもねえよなぁ、もともとバートン傘下の人間が治めてた場所だ。俺らバートンに所有権があるって言ってもおかしかねえよなぁ、カルマ?」

「そうだね~ボス。もともとここはバートンの領地だ。それを温情で分けてやるって言ってるのをこの鉄仮面はわかっちゃいねえなぁ~」


 空気がぴしりと固まった。

 ガンッ、と大きな音がたつ。音のしたほうを見ればアベルが両足を机の上にあげていた。

行儀が悪いとユダが声を上げようとするが同じようにガンッ、とカルマも片足を机の上にあげた。


「バートンが、領地3/4。これは譲れねえよなぁ、カルマ?」

「あはは、当たり前だよねぇ。これ以上はバートンの財務管理担当としても下げられないかなぁ」


「あらあら、面白いことを言うじゃない?ねぇ、オニキス」

「そうですねカイン様。こちらとしても譲歩に譲歩を重ねているんです。これ以上譲歩なんてできませんね」


 一触即発。まさにその言葉があっていた。

すでに状況に置いて行かれているユダとバルドル、ジェットとベリルの四人は早々に退散することとしたのかそろりそろりと動き出した。


「大体そっちの部下がジギタリスなんて流通させなければ今回みたいなことにはならなかったんじゃないかしら?」

「だーかーら、そういう事もひっくるめて今回の会談だろうが!話絶妙にズラしていくんじゃねえ!」

「ズレてなどいませんよ。わたしたちは責任はバートンにあるだろうと申しているだけです」

「そんなこと言ってるけどジギタリスを実際に形にしたのはトラグスの研究員みたいだよね~なら形にしたほうが悪くないかな~?」


 バチバチと目には見えない火花が散った。逃げやすい所まで避けていた4人がひそひそと呟く。


「なぁ、ユダ。これは逃げるが勝ちってことでいいか?」

「いいと思います。私も流石に四人相手にして怪我したくありませんし」

「あたしも同感。オニキスさんも一度火が付くと止めらんないし……」

「ならこの後四人でしばらく暇潰しか?」

「そうなりますね……」


 バルドル、ユダ、ベリル、ジェットが共に小声で相談する。

触らぬ神に祟りなし。それを知っている四人はまた先程と同じようにそろりそろりと動き出し、屋敷を後にした。途中、背後からはまだ互いに罵っている声が響いていた。



 * * *



「んで?落ち着いたかよ全員」

「面目ない……」

「やれやれ、この屋敷は完全改築が必要ですね……」


 数時間後、四人仲良くお茶をし、戻ってきて最初に目に入ったのは骨組みだけとなったヴィオレッタの屋敷跡地だった。


 よくよく見れば人間が動いており、それは四人のよく見知った人物だった。

屋敷の骨組みを足場に体術のみで手合わせをするカルマとオニキスに、元中央エントランス部分で投石などの投げ道具を使い戦闘を続けるアベルとカインだ。


流石に我慢の限界が来たのか、バルドルが持ち込んだトランクからR.P.G.を取り出し屋敷跡地にぶち込んだ。

止める間もなかったが、本人曰く「あの四人は殺しても死なない」とのことだからある程度怪我のしない場所を決めて撃ち込んだのであろう。

爆発の煙が晴れる頃にはケホケホと咳き込むが無傷の四人がそこに立っていた。


「さぁてお二人さんよ、今回の会談の目的は何だ?ん?」


 四人を目の前に正座させ、仁王立ちのままバルドルがそう問う。

バートンファミリーの中で最長を誇る彼から見下ろされるのはなかなかに圧迫感と威圧感があるだろう。


「えっと、この領地の、分配とか、決めるため、です」

「互いに損害があったから、それの相談よ」

「ほぉ?ならなんでその分配を決めるはずの場所がなくなってんだ?ん?」


 普段みれないバルドルの笑顔にアベルはひっ、と喉を鳴らすとカタカタ震えながら俯いた。

普段宥め役のユダも今回ばかりは止める気がないのか赤い髪紐の先をくるくると指先でもてあそんでいた。


「ま、まぁまぁバルドルも落ち着いて?ボスもこの通り反省してることだしさ~」

「カルマァ、お前も同罪だって忘れてねえよな?」

「ひっ……」


 バルドル達の様子を見ながらベリルはしばらく終わりそうにはないな、と呟いた。時間がかかるならばこちらも同じようにするだけだ。


「ボス~さすがにこれはやりすぎっしょ~」

「オニキスさんもオニキスさんッスね。これは俺らも庇いきれないッス」

「も、元はといえばバートンが……」

「そ、そうです、あの守銭奴が……」


「言い訳無用!」

「言い訳無用!」


 言い訳を始めるカインとオニキスに珍しくジェットとベリルが説教を始める。

どうやら、こちらも長そうだ。


ユダは一人諦めたようにため息をつくといつものように懐から懐中時計を取り出した。


「いったい、今日は何時間で済むのやら……」


 余談だがこのお説教の後に無事会談は締結。

領地は5:5、屋敷はバートン所有で話が付いた。

会談が始まった時より、心なしかアベルもカインもやつれているように見えたのは気のせいだと思いたい。

次はいつもくらいの長さにするように編集したら二つになりました。

全編を10時、後編を18時に投稿予定です

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