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ノドの地  作者: 音切萌樹
第一章.バートンとトラグス
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15.仲が悪いのはボスだけじゃなく

続きは明日の18時に公開します⊂⌒~⊃。Д。)⊃

 ヴィオレッタ壊滅作戦から数日が経った。その間にバルドルが主導で特例ではあるがウォズ・ヴィオレッタとレヴィアーノ・バリストンの葬儀が執り行われた。

もちろん、すでにファミリーは壊滅しているため送り出すのはバルドルを含めバートンファミリーの面々と呼ばれて参列したジェットだけだった。それでもバルドルはかつての友をしっかりと送ることができたことに喜んでいるように見えた。


 そして、今日。バートンとトラグスによる会談がここ、元ヴィオレッタの屋敷で行われていた。

ヴィオレッタの屋敷に染み込んでしまった血糊はまだそのままになっており、片付いているのは会談場所である中央エントランスのみとなっている。

 屋敷の玄関でもある中央エントランスに長机を運会議用に並べ、今回の会談が始まった。


 トラグスはボスのカインと側近のオニキス、実働隊のジェットとベリルの4人が参加、バートンからはボスのアベル、そして側近のユダとカルマ、実働隊のバルドルが今回の会談に参加していた。

もちろん、それぞれの部下もついては来ているが、今回の会談そのものには参加させず屋敷の外で護衛という形で放逐していた。


 中央エントランスに両陣営が集まった。向かって左側にバートンが、右側にトラグスが席につく。

全員から見える位置に用意したボードの前にトラグス側からオニキスが、バートン側からユダが前に立った。ボードには資料と同じ内容のものが拡大された物が張り出されている。


「それでは本日20日火曜日。バートン・トラグス両家の会談を始めます。進行はわたし、トラグスファミリーのオニキス・ジルコニアとバートンファミリーのユダ・カナルマンが担当いたします。まずは実働隊が独自に結んだ契約について確認します」


 オニキスの開始の宣誓とともに会談が始まった。オニキスに指名され、ジェットが席を立ち、書類に目を落とす。


「1つ。ターゲットであるウォズ・ヴィオレッタは見つけ次第一時捕縛。情報を聞き出したら処分。

1つ。聞き出した情報はトラグス、バートン共に共有する。

1つ。屋敷や領地については後日ボス同士の会談を持って締結。以上が任務中に結ばれたものッス」


 発言を終えるとジェットは席につく。同じようにユダがバートン側からバルドルを指名する。


「実働隊バルドル・バルザークだ。契約を結んだのはもう一人だが俺もそれを聞いていた。間違いねえよ」


 さっと話をまとめ、また席につく。ボードに張られた内容から「任務中の独自契約」の文字に大きく丸を付ける。こうして一つ一つ確認し、クリアリングしていく。綺麗に丸が付いたことを確認し、オニキスはまた書類に目を落とした。


「では、次に進みます。元凶であるウォズ・ヴィオレッタについては側近レヴィアーノ・バリストンが処理、のちに彼も後を追った、と」

「情報については残されていた資料ですべてだと聞いています。間違いないでしょうか?」


 オニキスの内容に補足するためにユダが追加する。少しの沈黙ののち、バルドルが口を開いた。


「ああ。他にも散々わめいていたが特に気になった情報はねえよ」

「俺も、同じッス」

「あたしもー」


 バルドルに続いてベリルとジェットも声を上げる。この件に関しても問題がないと判断したのか、オニキスはボード前にいたユダに目線を送り、ユダがボードの「情報共有について」に大きく丸を付ける。


「……それでは本日の大本命に移ります。このヴィオレッタが治めていた領地と屋敷の所有権について、ついては賠償金の請求についてが本日の本命です。違法薬物(ジギタリス)の使用については両陣営とも掟で禁じているのでそれぞれにお任せいたします。まず『主犯のヴィオレッタファミリーがバートンの傘下』であること。『ジギタリスの原料がトラグスの領地でしか採れない』こと。そして『両陣営ともに被害が出ている』ことを加味し、トラグスファミリーからはバートン:トラグス(6:4)で提出いたします」


 その言葉にカルマが「意義あり~」と手を挙げた。オニキスが少し不満そうにカルマを指定するとニヤニヤしながらカルマが語る。


「いやいやそれはないっしょ~。実際ヴィオレッタが調べ上げた資料によればトラグスで出ていた被害自体はごく少数。実験自体はバートン領地周辺で行われてたみたいだし?バートンファミリーからはその逆、バートン:トラグス(4:6)を提案するよ~」


 カルマの言葉にオニキスはピキッという音が聞こえるほど血管を浮かび上がらせた。初対面の人間が見ても怒っているとわかるほど表情をゆがめていた。


「守銭奴め……」

「あんたには言われたくないかな~鉄仮面」


 カルマとオニキスはにらみ合いながら言い合いを続けた。

 バートンの右腕とトラグスの右腕は仲が悪い。そう言われている理由は敵対組織だからというだけでなく、どう考えても性格の不一致だろう。

生真面目なオニキスと基本適当なカルマ。どう考えても馬が合うとは思えない。


「埒が飽きませんね……」


 おもわずため息をついたユダだったが、すぐ目の前で何か考え込んでいるアベルをみてアベルに発言を促す。二人もアベルが指されたことで口論を止め、発言を待った。

 アベルは少し黙り込んだがすぐにカインのほうを見つめた。


「オイ、カイン・トラグス。お前はどう思ってんだ」


 急に名指しされたカインも一瞬驚きはしたようだが、真面目な顔つきになってすぐに答えた。


「ふむ、全体的に見れば被害にしてもなんにしても大体同じくらいね。ならトラグスファミリーを治める者としては5:5、賠償金は平等清算という事を提案するけど、どう?アベル・バートン」

「言いたかねえが俺も同じ意見だ。こっちの監督不行き届きとはいえトラグスの研究員も一枚絡んでるみたいだしな」


 双方納得したのかアベルはユダを、カインはオニキスに目をやった。


「オニキス、聞いた通りよ。『賠償金の支払いは共に無し』そう記述しておきなさい」

「畏まりました……首の皮がつながってよかったな、守銭奴」

「はっは~、今に毛の一本まで毟り取ってやるから覚悟しとけ鉄仮面」


 ごく一部だけバチバチと火花を散らしていたが、ユダがごほん、とわざとらしく咳ばらいをすればオニキスは慌てたように進行に戻った。

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