09.話し合い
ヴィオレッタファミリーについての話し合いはとてもスムーズに進んだ。どうやらバートンにカルマから連絡が来たようにトラグスのほうにも同じように連絡が来たらしい。
その指示書の中に『バートンと手を組んで行え』と書いてあったから来たとジェットは語った。
「俺らのほうの被害も甚大だ。早急に事を終わらせたいのはそっちも同じだろうけどなぁ」
「同感だな。ならばさっさと済ませるべくだが……あと一人こちらのメンツが足りてねえんだ」
「知ってるー。『色欲』でしょ?準備待つくらい余裕だからゆっくりでいいって言っといて?」
つまらなさそうに爪を見たまま一切こちらを見ることなくベリルは返事を返す。
「よく足りてないメンツが『色欲』だと気づいたな」
「……カンよ。あたしらバカだからそこまで頭まわんないし」
一瞬の間をおいてベリルは返事を返す。爪を見ることを止め、バルドルとルーファに目線をもどす。
「とにかくこっちから出せる兵隊は出せるだけ出す。細かいアタマ使うようなことはあたしら苦手だからそっちに任せるけどあくまで対等。あんたら『アザゼル』があたしらに命令できると思わないで」
「ほぉ。『アザゼル』っていう呼び名知ってんのか。どこで聞いた?」
「わ・す・れ・た。はなし脱線させないで」
唸るように声を響かせるがベリルは一切知らぬという顔を貫き通す。隣にいるジェットのほうが何か隠して良そうな表情を浮かべているがバルドルには見えていないらしい。
アザゼルという名はバートンファミリー七人の幹部を総称した名であり、外部では使われることはない。
「とにかく作戦立案はこっちが。実働は貴方たちとこっちの筋肉達磨がやればいいってことでいいのね」
「そういうこと。とりあえずあたしは疲れたからあとジェットよろー」
「はぁ!?ベリルお前仕事放棄かよ!?」
「ジェット、落ち着け。とりあえず進めるぞ」
ふざけるなよ!と声を荒げるジェットに落ち着くように声をかけ、座らせる。どのみち最後のメンバーが揃わないと動けないのだ。落ち着くことに越したことはないとソファに深く腰を落ち着ける。
隣に座るルーファがガリガリと一心不乱にペンを走らせ作戦を立て始める。だが、あと一歩のところで何度も手が止まる。殲滅しろ、という命令ならば屋敷の隠し部屋などもすべて知っていなければならない。今は、その情報が足りていなかった。
「とりあえず今ある情報から作戦を4パターン考えたわ。あとは……」
「はぁいアタシの出番かしら?」
「おせえぞエイラ」
シンプルなスーツスタイルに着替えたエイラが入り口からようやく顔を出した。美しい金髪は高い所で結い上げられ、歩くたびに左右に揺れる。
カツコツとヒールを鳴らしながらバルドルの後ろに回るとルーファの立てた作戦原案を覗き込む。
「んー、とりあえず作戦AとDは無理ね。屋敷のここに対侵入者用の罠があるしなんなら今物理的に通れない。あそこのボスがなんか衝動買いしたらしいわよ。ジギタリス、って言ってたわね」
エイラの何気ない一言にその場にいた全員が固まる。この騒動の中心『ジギタリス』それを大量に仕入れていたのであればもう隠しようがない。
「っていうか、んな作戦考えねぇでつっこめばよくねぇか?この戦力ならつっこんでも余裕だろ?」
「それもそうだけど体裁ってもんがあんのよ。あくまで『謎の人物が侵入するところを発見したので敵排除のために屋敷にやって来た』ってことにしたいのよ」
なにをへんなことを言っているのかとジェットを馬鹿にするがベリルのその発言にルーファが目を見張った。
「……案外考えているんじゃない。アタマ悪いって言ってたくせに」
「……たまたまよ。で、どうすんの。どうせ時間はないんだからさっさと決めて終わらせたいんだけどあたしは」
「まぁ、そうね。バルドル、ジェットを先頭にエイラ、ベリルが屋敷に侵入。不振人物をおってきた体で屋敷に侵入。嫌がるようなら無理矢理侵入しちゃいなさい。エイラとベリルはジギタリスを見つけ次第全部燃やしなさい。必要なんてこの世界にはないから」
ルーファの言葉に全員が頷き、武器に手を伸ばす。全員がそれぞれの武器の手触りを、感触を確かめる。
「それじゃあ、始めましょうか。『薔薇狩り』を!!」




