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ノドの地  作者: 音切萌樹
第一章.バートンとトラグス
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07.喧嘩両成敗

しばらく火・土曜日で更新が続きます。

 カキンカキン、と金属同士がぶつかり、悲鳴を上げる。銃声もかまわずなり続け、もはや硝煙と砂ぼこりで霧のようになっていた。


「さて、これじゃあカイン様を止めるのも一苦労ですね」

「そうですね。アベルが一瞬でも動きを止めればいいのですが……」


 銃声が一発、二発と続けて鳴った。

硝煙と土埃でできた壁はお互いの姿を隠すだけでなく、気配も混ぜているらしく、行き先の定まっていない弾丸が、ユダとオニキスの身体をかすめた。


 パスッと小気味の良い音と共に背後にあったコンクリート壁に弾丸がめり込む。

あと数センチ横にずれていれば確実に当たっただろう。


「……」


 オニキスが大きく息を吸い込み、そして吐き出す。


「ユダ、ちょっとすみません。さきほどまとめたこの資料。一度外に出しませんか?」

「ええ、ちょうどそれを提案しようとしていました」


 にっこりと笑い、二人同時に一度外に出る。

部屋を出ると競歩選手のように早足で廊下を進み、屋敷の扉を勢いよく開く。

外で待機していたバートンとトラグスの部下たちが互いににらみ合っていたが突如出てきたユダとオニキスの姿に戸惑いながらも、それぞれの上司に駆け寄る。


 どうしたのかと問いかけるがそれをすべて無視し、それぞれ待機させていた部下たちに資料を押し付け、また同じように廊下を進み、元の部屋の扉を開けた。

部屋の中では部屋を出る前と変わらず銃を打ち合い、剣をはじき合う互いのボスの姿があった。

部屋は、出た時よりも壊れている。


「さて、ユダ。どこまでやりますか?」

「もちろん、徹底的に。ちなみにこの後のご予定は?」


 にっこりと笑ったまま互いの武器である刀とグラディウスを抜く。


「予定?ハハッ、さっき資料を渡した時に指示書を出しました。全部キャンセルさせます。後始末はラピスがやってくれますし」

「おや、奇遇ですね。こちらもすべての予定をキャンセルしたんですよ。あとはあそこにいたカルマや本部にいるルーファがやってくれるでしょうし、ね」


 ニコニコとしたまま首を、手首を鳴らす。互いに獲物を手に、ボスであるアベルとカインの動きを追う。


「さて、どうしましょうか。とりあえず一言、ですかね」

「そうですね……カイン様、次の予定が迫っております。早急にお遊びを御止めください」


 大声で、確実に聞こえるであろう声で叫ぶ。それにユダが続く。


「そうですよ、アベル。次の予定に間に合わないとまた書類が増えますよ」


 一つ、二つ、三つ。しばらく待つがカインからもアベルからも返答はない。


「……はあ。どうせこうなるとは思っていましたよ」

「ですね……それじゃあ、始めますか」


 しっかりと自身の武器を構え、互いにボスの姿を追う。

金属音が耳に刺さる。

一度、二度、三度。


「見えました。私はいけます」

「同じく。わたしも問題ありません」


 互いに確認し、数度息を吸う。


「次の鍔競り合いで行きますよ、オニキス」

「ええ、了解ですユダ」


 金属音と銃声が響く。

家具が飛ばされ、破壊されていく。


 瞬間、ユダとオニキスが同時に走り出す。途中銃声が響くが気にすることなく走り続け、間に割り込み、剣を受ける。

 アベルをオニキスが、カインをユダが受け止める。

互いの臣下の出現にハッとした表情を浮かべ、アベルとカインは互いに罰が悪そうに目を背けた。


「バートン殿、お遊びにしては少々周りの言葉を聞かなさすぎでは?わたしの声もユダの声も聞こえていなかったようで」

「トラグス様も同様です。貴方様の場合、聞こえていてあえて聞こえないフリをしている節が見れました。重要な用事がこの後詰まっていたのではないのですか?」


 口だけにっこりと笑いながら告げるとボス二人はわかりやすくビクリとした。


「あの、えと、オニキス。確かに夢中になってしまったことは謝るわ。だから」

「問答無用です!そこになおりなさい!」


 剣を鞘に納め、カインの首根っこを掴んで引き離すとすべての武器を取り上げ、座らせる。

その様子を見てくすくすと笑いながらアベルも自身の剣を鞘に納めた。


「はっ!ざまあねえぜ!この年になって説教かよ」

「アベル?貴方も人のことを言えると思っているんですか?同じようにそこに正座しなさい!」


 同じように首根っこを掴まれカインの隣に並びで座らせられる。

ぶつくさと文句を言うが予定を狂わされた二人に勝てるわけもなく、オニキスとユダの説教が始まる。


「大体ですね、カイン様もカイン様ですがバートン殿もバートン殿です。いったいいつの時代にやめろと言われてもやり続ける大人がいるんですか?それともまだ子供だったんですか?まだ子供気分でいるのならば即刻気分を改めてください。わたしを含め、下の者の迷惑です」

「アベルはどうしたいんですか?これから一生屋敷に缶詰めにされて書類を捌くことだけしていたいんですか?私は別にそれでもいいんですよ?けどアベルがそれは嫌だというからこうやって執務にも連れて出るんです。本来ならばこの程度のこと私やカルマに任せておけばいい程度なんです。わかりますか?貴方のわがままに付き合っているといっても過言ではないんですよ?」


 ぐちぐちと続く説教にぼそりと文句を垂れる。


「別に俺だけのせいじゃ……」

「やーい、ざまあみろー」

「てめえ、終わったら覚えておけよ?」


 小声で始まる喧嘩に目ざとく気づき、ユダは二人を刀の鞘で叩く。


「そこ!きいているんですか!?」

「聞いていないようなのでもう一度、最初から、教えてあげてください。ボスとは何たるものかを」


 ユダの言葉に大げさなくらいに二人は狼狽えた。


「ま、待った待った!聞いてた!聞いてたから!!」

「そ、そうそう!聞いてたから!私もアベルもちゃんと聞いてた!」


 にっこりと引きつった笑顔を浮かべながらアベルとカインは互いに固く握手を交わす。

お説教が始まると定番のやり取りだ。だが、今回に至ってはオニキスの怒りのボルテージが高すぎた。


「問答無用です。聞いていようが聞いていまいがもう一度説明します。よく聞いていなさい、二人とも」


 涙目になりながらお説教を受けるアベルとカインをユダは一歩引いて見つめていた。

 元々説教には向くタイプではないと自己評価しているし、何よりオニキスというお説教に向いている人間が怒っているため、ユダは安心して一歩引いて傍観していた。


「さて、今日はどのくらいかかるかな……」


 掟破りのファミリーを壊滅させるのが先か、オニキスのお説教が落ち着くのが先か。ユダは胸ポケットから懐中時計を取り出し、時間を確認した。


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