第6列車 スクランブル
ピリリリリリ…
神代のポケットにしまってあった業務専用携帯機(乗務の際等に利用する携帯電話)が鳴る。
「…はい、東京運転所 神代」
「神代さんですね、新幹線総合運行指令の岸部です。」
「あっ、岸部さん。どうも。」
「―で、どうされたんですか?珍しく一報を業務用携帯なんかに。」
「この時間ならまだ大阪で暇こいてるんじゃないかtt…手短に話します、時間がない。」
「―A23A(のぞみ23号)の件はそちらに一方入りましたね?」
「ははぁ…京都~新大阪で車両発煙って。大変ですね。」
「他人事じゃないですよ。発煙がひどくって34分延でなんとか新大阪に向かってるんですから。」
―げっ、嫌な予感が的中した。
「山陽区間は運行不能運休で、新大阪で車交(車両交換 - その駅で車両を入れ替える)です。」
「…で、それを私に担当してほしいって事ですね。西日本管轄区間を。」
―っ、折角大阪で美味しいもの食べに行こうと思ったのに!
「ご理解の様で何より。こっからFAXで臨時の業務時刻表を送りますので、点呼場で待機しててください。詳細は点呼担当が通告します。」
そうとだけ言い残すと、まるで私の良い訳を遮るかのように電話は切れた。
車両故障による遅延・運休は新幹線の中でも割と確率が高い。
普通なら途中駅や中継駅などに停車・あるいは運転停車(ドアを開けないで止まる事)となり、そこで乗務員が原因を特定して済ませるのだが、今回ばかりはたちが悪い様だ。
しかも相手は東京行きではなく博多行。
私はNR東海の運転士だが、新大阪から先のNR西日本が管理する区間は原則運転できないが、試験走行やその他特別な時はNR西日本の乗務員の付き添いの許NR西日本区間でもNR東海の運転士がハンドルを握ることがある。
私も試験走行で6度も博多まで乗りとおしたことがあるし、東海・西日本の運輸指令にはきっとここでのんびり待機している私には都合がよかったのだろう。
身支度を済ませ、制服を正し、髪を直して再び点呼場へと足を運ぶ。
点呼場もなんだか少し騒がしいような気がした。
「あ、神代さん。司令からFAX届いてます。準備が出来次第点呼に入ります。」
―駆け足で車輌区へと戻る。
「X-RAY、一つ仕事が増えたよ。」
運転室に乗り込み、ICカードを差し込み、点検を手際よく済ませていく。
『こちら回1863Aです、現在構内5番停車中。新大阪22番への出区許可願います。』
急ごしらえで作られた「新大阪始発」ののぞみの業務時刻表片手に、取り扱い指令へ連絡を入れる。
『―回1863A、出区を許可します。構内信号が進行現示(青信号)になり次第「速やかに」出区してください。』
時間が相当押しているのだろう。30分以上の遅れとなれば当然後続の列車が遅れ、さらにその後続が遅れ…と、連鎖的に遅延が増していく。
ある一定の時間の東海道新幹線では、新大阪~東京の区間だけで実に60本の列車が居るのだから。
X-RAY、今回も頼むよ…
運転席に、緊張が走る。




