第5列車 束の間の休息
―NR東海関西支所 - 大阪仕業検査車輌所
「―担当列車A501A行路、東京6時26分・新大阪9時30分。異常・遅延はありませんでした。」
「異常なし、了解しました。」
最後に、乗務手帳に捺印をもらい、この列車の運転は終了となる。
「…では、お疲れ様でした。」
「―お疲れ様でした。」
ふぅ…と、一つ安心のため息が出る。
何度も言っているが、新幹線の運転というものは高速度な運転の中で身体中の五感全てを発揮して集中しなければならない。
たった1本。片道の列車と言えど疲労はたまる。
X-RAYはあくまで試験走行車両を私が勝手に営業化した車輌なので、共通運用が図れない。
だから、新大阪では基本的に折り返しの準備に入り、再び同じ車両が運用に入るひかり501号も、新大阪で車両交換となる。
今日の私の仕事は…新大阪から東京までのぞみ号で行って、あとは東京からこだま号の浜松行に乗務して、そのまま浜松にある車両基地にピットインするだけ。
…信じられないほど簡単な乗務行路だけど、これだけでも癖の強く他のN700系とは全く違うといってもいいX-RAYは片道だけでも本当に疲れるのです。
休憩所へと入り、ちょっと遅めなのかもしれない朝ごはん。
東京運転所で昨日の運用後直ぐに作った自家製お弁当だ。我ながら上出来。
朝を食べても、私の様にいつでも話が出来る様な暇人はそうそう居ないので、車輌所へといったん戻り、X-RAYの各部点検をするのがよくある事。
今日ともに乗務した佐久間さんも、朝を食べたと思ったらあっというまに東京行きの「のぞみ」へと乗務点呼を済ませて向かっていった。
一般の乗務員から見たら喧嘩を売ってるように見えるかも?
でも、私が「X0編成走行試験」に参加している限り一応貢献はしているので特にそのような振る舞いも見せない。
というか誤解を招くとこっちも困ったことになっちゃうので。
車内・車外の点検も終え、さぁ、本当にあと1時間暇になってしまった。
時刻はまだ12時35分。
運転所には多種多様様々な人が運転を終え、また引き返してゆく。
時々私を知る人が挨拶してくるようになってから、自然に今度はこっちから挨拶するようになった。
束の間の(?)ひと休憩。
着替えさえすればいつでも大阪観光もできなくは無かったのだが、運転士としての命は「体調」。
無理に何かを食べて体調を崩す訳にもいかないし、それよりも外に出るのが面倒くさかった。
こんなことは、不定期運用の運転を任される私にはよくあることだ。
一時期は運転所の掃除を手伝っていたこともある。
暫くすると、その一息を裂くかのように、運転所内にチャイムとともにアナウンスが入る。
《業務連絡、業務連絡。A23Aは車両故障の為「新大阪」にて抑止。東京方面より山陽は車交運休。》
すっと横になっていたソファから起き上がる。
その緊張感のある薄い声は運転取り止めの連絡だった。
私はすぐに、休憩室壁にある運行状況パネルを見つめた。
23A列車は定期運行となっている「のぞみ」だが、走行中に発煙が発生。
本来ならば新大阪から先、博多駅へと向かう列車となるはずだった。
運転見合わせ区間は山陽新幹線の区間で、運転は何度かしたことあるけどNR東海の管轄外でも
あるから一方に関係は無かった。
でも、胸の中に少しあった彼女のいやな予感は、直ぐに的中することとなる。




