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第3列車 タイムマシン①

…作話で述べた通り、新幹線を含む鉄道界での「遅れ」とは数秒単位でも恐れられるようなものである。


世界一時間通りに走る鉄道は日本だけ…?


その裏には、数秒単位で最高2000人もの命を超高速で安心安全に運ぶ運転手の汗と努力が有ってこそであり、それがまた付き物なのだ。



「信号 70。」


―ATC

東海道新幹線(山陽新幹線)を含む日本の新幹線(在来線直通区間の新幹線(山形・秋田)を除く)にはATC(列車自動制御装置)が設置され、使用されている。


ATCは、在来線などの路線で使用されているATS(列車自動停止装置)と呼ばれる装置が使用されているが、高速度で走りかつブレーキをかけても最高速度からの場合3~5kmほどの滑走距離が必要となり、「赤信号(最高制限信号)」を通り過ぎないとブレーキがかからないシステムであるATSでは安全性に問題がある。


また、300km/hで走るようになった(東北新幹線)現代の新幹線では、地上に設置する信号機を確認するのは早すぎて難しい。

そのため、運転席の速度計に制限速度を表示する地上信号式と呼ばれるシステムを搭載し、制限に応じてブレーキを1段ずつ使って速度を落とすATCが開発された。

自動車で言うと、道路わきにある速度標識をセンサが読み取り、それを速度計に表示してオーバーしている場合は自動ブレーキが滑らかに掛かる…と言ったところだろう。


東海道新幹線では1964年開業時より使用されており、無事故(故意による事故除く)という新幹線の安全を守っている(なお後に更に新しい型のATC装置に交換された)。



「新橋ポイント通過…う~む。だめだ、遅れてる…」

(ここは冷静に…ノッチ3…)


―運転手は各個人個人でブレーキやアクセル(ノッチ)をかけるタイミングを標識や並走する在来線の駅・架線柱に書かれた番号などで図っている人が多い。


(次の品川までの回復はまず無理だけど、新横浜なら何とかなるかな?X-RAY…)


「―彼女とあのN700系は、きっと一心同体なんだ。」

ある運転所の運転士はこう言った。

彼女とX0編成は、会った時から実に何万キロも走り続けていて、彼女はこのX0編成の特性や性能を身をもって理解している。ベテラン運転士ならまだしもこの仕事に就いてからまだ4年の彼女は異常とも言える。

過去に彼女がX-RAYを運転するまでに何人もの乗務員がこの車両を動かしてきたが、X-RAYの構造を知り、癖を知り、車両の状態を全てを理解しているのは彼女のみだった。



「浜離宮176通過…」



普段は必ずと言っていいほどよくある遅れなのに、今日ばかりは彼女も手に汗を滲ませている。


「…ATC 構内ポイント照査。」

「―品川、停車確認。停車位置共通。」


ブレーキハンドルが事細かに場所を移す。

「信号 30。」


ブレーキが、速度が落ちてゆくにつれ制御装置の音とともに大きくなってゆく。

出来る限りのスピードを出して、停止位置へと近づく。

時計を見ている暇はない。



ほんの少しの衝動のあと、背後でドアが開く音がした。

「品川停車。」

「延時分…26秒。」


《―ひかり501号、新大阪行は直ぐの発車となりまぁす。ご利用のお客様はお急ぎご乗車ください。》


まるで空港の飛行機の最終案内の如く催促放送が流れる。

駅停車中、遅延回復は車掌と駅員の連携による乗り降りの終了が頼りとなる。

ホーム上では、乗らないお客様が多く見られた。


「―そっか、この後続はのぞみだっけ…」


「ひかり」も勿論各駅に止まっていく「こだま」よりかは全然早いのだが、それでも東海道新幹線で一番早く移動できるのはのぞみ号。

名古屋や京都・新大阪等主要な駅へ行く人はほとんどのぞみ号しか使わない。


また、品川駅は新幹線の車輌の「寝床」ともいえる車庫、通称「東京大井総合車両基地」への「信号場」としての役割も同時に果たしており、一つ手前のホームには回送の車輌が車内電源を落したまま出発の時を待ちわびている。

詳しく言うと、信号場としての役割の場所が丁度在来線の品川駅に隣接していたからここに駅を造ったとされている。


また再びドアの閉まる音がする、今回ばかりはスムーズな開閉だったかもしれない。


「ドア点灯、構内ポイントよし、ブレーキ緩解よし。」




「―品川発車。19秒延。」

ブレーキハンドルを一気に引き、続いてマスコンハンドルを手前に大きく引いてゆく。


屋根のかかる品川の駅を出ると、大都市東京を象徴するビル群の間を掻い潜って朝の斜陽が運転台に差し込む。

「おーっ、今日もいい天気になりそうだねっ。」

一筋の大きな太陽の光は、''ひかり''に当たってそれの輝きさに一層磨きをかけていた。

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