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家電少女は恋を知らない 〜異世界で快適な暮らし、はじめます〜  作者: 秘色ひすい
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第51話

 しばらく歩いた後、私達は元の店に戻ってきた。


 店先ではダリムが客と話している。

 こちらに気付くと、軽く手を上げた。


「もう戻られますかな?」

「はい」


 リゼが答える。


「十分見学させていただきました」

「それは良かった」


 ダリムは穏やかに頷いた。


「何か参考になりましたかな」


 私は少し考える。


 正直に言えば、薬草の良し悪しはよく分からない。

 葉を見ても、香りを嗅いでも、薬師達ほどの違いは見えない。


「薬草の事は、まだよく分かりません」


 そう答えると、ダリムは静かに続きを待った。


「でも」

 通りに視線を向ける。


「思っていた場所とは違いました」


「そうですか」

 ダリムは少し目を細めた。


「では、来ていただいた意味はありましたな」


 その言葉に私は小さく頷く。


「ところで」

 ダリムが口元を緩めた。


「サイードは役に立ちましたかな」

「親父」


 すぐ横から呆れた声が飛ぶ。


「何だその聞き方は」

「気になりましてな」


 悪びれた様子もなさそうで、思わず笑った。


「とても分かりやすかったです」

「ほらな」


 サイードが肩を竦める。


「俺がいないと駄目なんだよ」

「これ、調子に乗るな」


 即座に返されていた。

 親子らしいやり取りに、リゼも小さく笑う。


「本日はありがとうございました」


 改めて頭を下げる。


「こちらこそ。あまり案内は出来ませんでしたが」


 ダリムも頷いた。


「また機会があればお越しくだされ」


 サイードも軽く手を振る。


「今度はもう少し薬草も見てくださいね」

「努力します」


 そう答えると、サイードは楽しそうに笑った。


 店を離れ、通りの出口へ向かう。

 振り返ると、ダリムは既に別の客と話し始めていた。

 サイードも荷を抱えて店の奥へ向かっている。


 こちらに向けられていた意識はもう商売へ戻っていた。


 それが何だか、この通りらしい気がした。

 やがて通りを抜けると、草の香りも少しずつ遠ざかっていった。


「どうでしたか?」


 隣を歩くリゼが尋ねる。


「面白かったです」


 自然とそう答えていた。


「思っていた場所とは全然違いました」


 リゼは小さく微笑んだ。


「それなら何よりです」


 城へ続く道を歩きながら、私はもう一度だけ薬師通りの方を見る。


 薬草の事は、結局あまり分からなかった。

 けれど、来る前より見えるものは増えた気がする。


 次にフェルド達へ会った時、何を話そうか。

 そんな事を考えながら、王宮への道を歩いた。

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