第49話
通りを歩きながら、店先に視線を向ける。
香りを確かめる人もいた。
値段を見ている人もいた。
買う物が決まっている人もいた。
同じ薬草を前にしているのに、見ている場所が少しずつ違う。
何を基準に選んでいるのだろう。
「一つ聞いてもいいですか?」
「なんでしょう」
「状態が良い物って、やっぱり売れるんですか?」
地下保管庫で見ていた薬草を思い出す。
色が残る。
香りが残る。
それは良い事のはずだ。
「そうとも限りませんね」
彼はすぐに答えた。
その時だった。
「おう」
近くの店先へ男が立ち寄る。
顔馴染みらしい。
店主もすぐに顔を上げた。
「今日は良い葉が入ってるぞ」
そう言って袋を持ち上げる。
男は中を覗き込み、小さく頷いた。
「確かに良いな」
「だろう?」
店主は少し得意げだ。
だが男は隣に並んでいた別の袋を指差した。
「今日はこっちでいい」
「そっちか?」
「家で使う分だしな」
男は笑いながら銅貨を取り出した。
店主も慣れているのか、それ以上は勧めなかった。
私はそのやり取りを見つめる。
良い葉を勧めていた。
客も良い物だと分かっていた。
それでも選んだのは別の方だった。
「ああいう事です」
横から声がする。
「家で使うだけなら十分、という事ですか」
「そういう人もいますね」
軽く頷く。
「もちろん、少しでも良い物が欲しい人もいます」
肩を竦めた。
「同じ薬草でも、人によって欲しい理由が違うんですよ」
私はもう一度、先程の男を見る。
薬草というから、もっと特別な物だと思っていた。
けれど、あの人にとっては違うらしい。
毎日使う物。
特別な時だけ手にする物ではない。
だから選び方も、私が思っていたものとは少し違うのかもしれない。
薬草もまた、暮らしの中にある商品の一つで、普通の買い物と同じなのかもしれなかった。




