12, 小さな家主
アイリッシュは今までにないくらいな速さで仕事を片付けノリノリでクロエの家へ向かっていた。
当たり前だ。罪滅ぼしとはいえ、晩ご飯に誘われたのはこれが初めてなのだから。
特別な日に履くヒールをはいて、髪も解き直して、なんならブレスレッドもして天にも昇りそうな勢いである。
(迷宮でキノコが採れるというのも不思議だけど⋯、まぁ、大丈夫よね?)
迷宮は一般人の常識の物差しで測れるものではないらしい。仕事でたまに行く王都の冒険者の友人は口をそろえてそう言っている。まぁ、クロエは警戒心が強いし大丈夫でしょうと結論づけ、いつもの道のりがもっと長く感じながらクロエの家への道を進んだ。
「あいりちゅ」
「へ?」
そう、大丈夫と思っていた。
家の前に着き、ノックをしても反応がないことを不思議に思いながら取り敢えず家の中に入る。キッチンに向かうと机の上にはもう美味しそうな食事が並んでいた。しかし、肝心のクロエがいない。どこの部屋を見て回ってもどこにもいなかった。
「クロエ?」
「あいりちゅ」
「へ?」
そして先ほどに戻る。ズボンを引っ張られる感覚に驚き下を向けば、そこには小さなクロエがいた。
「ファッ?!」
待って天使がいる。え、クロエ?いや、そんなわけないか⋯。え、でもクロエに似てるし、まさかクロエの子ど⋯。隠し子!?相手誰よ!?
ダメだ。状況がうまく飲み込めない。
「あ~、えっと~まさかクロエ、なの?」
「⋯。」
謎の幼児(仮)はコクリと頷いた。
良かった。隠し子じゃなかった⋯。
「じゃ無いわよ!!」
「ヒッ」
「あら〜ごめんなさいねクロエ。そんなに怖がらないでね。ねぇ、何があったの?説明できる?」
「キノコ、食べた。」
「!?」
「1個だけ、違う種類のキノコあった。気づいたら食べてた」
「なにそれ、こわっ。」
「せいしんそうさ?」
「そんなキノコあるの?」
「めーきゅーならありえゆ。」
意識が体相応になっているのか、敬語が抜けて少し拙い話し方になっていることにも気づいて無さそうだ。
にしても迷宮の恐ろしいこと。
「もとに戻るの?」
「魔法にも限り、ある。そりぇがおわりぇば。
あいりっちゅ、ごめんなしゃい。」
そう言ってクロエは頭を下げる。
「頭をあげて?ね?それより、ご飯おいしそうね?アタシもうおなか減りまくってヤバイから早く食べちゃいましょう?」
「⋯、分かりまちた。」
クロエが話を変えないと謝り続けることは目に見えたので素早く話題を変える。
「クロエ、ところでイスに座れ⋯ないわよねぇ!!」
いつもお茶する時に座る席にバッグを置いて振り返ればイスに登れず降りれなくなったクロエがいた。
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