コーヒーは嗜好性が高い。8
―――パン
「さっ、皆様。お騒がせしました。
コーヒーや軽食は召し上がって頂けていますか? 」
手を鳴らし、店内全体を見回すと、ドリンクや軽食がほとんど減っていない。
こんな中、飲み食い出来ませんよね。
本当にごめんなさい。
「では、来週のオープンを前に、皆様にはどういったメニューが提供されるのか、お試し頂きたいと思います」
本題はコレよ。
実際、お客様に注文してもらっての動き、そして改善点。要望。
でないと、来週のオープンが怖くて仕方ないわ。
即潰れる!
「今からメニューをお配りしますので、お好きな様に注文して下さい。
そこで1つお願いがあるのですが、ご自身で支払うと仮定して注文頂きたいのです。
それを踏まえて!
後ほど、こちらのアンケートに価格やサービス、味などの評価や要望をご記入下さい」
ホールスタッフにメニュー表とアンケート用紙を配らせ説明する。
ふむふむ。
貴族や出入りの業者の方々は、どれを注文するか楽しんでるわね。
逆にスタッフの家族や、街の八百屋さんなんかは、困った顔でメニューを見ている。
単純にメニューに載っている名前が分からないのか、
価格がネックなのか。
アンケート次第では、考えなきゃいけなそうね。
出来れば、平民の人々にもコーヒーを楽しんでもらいたいのだけど……。
提供するメニューは、ドリンクを充実させた。
{ドリンク}
・コーヒー ice/hot
・アイスカフェラテ
・エスプレッソ
・アイスカフェオレ
・ブレンドティー ice/hot
・ローズティー
・ハーブティー (リラックス)
・ハーブティー (スッキリ)
・ハーブティー (ビューティー)
{スイーツ}
・ガトーショコラ
・シフォンケーキ コーヒー/紅茶
・ティラミス
{軽食}
・サンドイッチ
・日替わりスープ (パン)
(・気まぐれカレー ※ 月に1度を目安に提供します)
エスプレッソマシンは、まだ圧が上手くかからなくて完成していないのよね。
だから、しばらくは直火のタイプでやるしかないわ。
クレマ*が少し不安だけど、そこは店長の腕にかけましょう。
残ったクレマにグラニュー糖をかき混ぜて食べるの美味しいから、ロイドには頑張ってもらわなきゃ。
軽食は、正直カレーを提供するつもりはなかった。
ロベルトさんが絶対加えろって言うから、月1で妥協したけど……。
せっかくコーヒーブレイクを楽しみに来たのに、カレーの香りが充満したら何か違くない?
雰囲気ぶち壊しな気がするのは私だけ?
「注文いいかね」
あら、子爵が1番乗りだわ。
「すまないが、このカフェラテとカフェオレの違いを説明してくれ」
「はっはい!
カフェラテは、1番濃いエスプレッソをミルクで割ったもので、マイルドですがほろ苦さが楽しめます。
カフェオレは、お客様が今お飲みになっているコーヒーをミルクで割ったものです。
苦味が苦手な方にオススメでござます」
素晴らしい!
完璧な説明よ、そこの従業員君A!
そして何より子爵の態度に驚き。
悪い人ではないけど、貴族かそうでないかで区別する人だから―――てっきり高圧的な態度を取るのかと。すみません、子爵。
「ふむ。以前、シルヴィア嬢が教えてくれた飲み方がカフェオレと言うものか。
私は、アイスカフェオレとガトーショコラとやらを」
「では私には、アイスカフェラテとサンドイッチを下さい」
ビクターさんは、お菓子よりも塩気か。ふむふむ。
「かしこまりました」
彼らの様子を見て、他の招待客も続々と注文をし始めた。
スタッフの家族も興味津々にメニューについて聞いている。
「お兄ちゃん、このカレーって何?
今日は注文出来るの? 」
「おい、職場なんだからやめてくれ。
出来るぞ。このカレーはな、至高の食べ物だ。
お前にはまだ早い」
従業員君Bよ、君の解釈は間違っているぞ。
妹さんに偏った知識を教えるんじゃありません。減点!
「ほら、せっかくヴェルトハイム家のお嬢様に雇ってもらえたんだ。お兄ちゃんの邪魔しちゃダメよ。
母さんの誇りだわ。立派になって……うっ」
「母さん―――っ」
何だコレ。
いや、カフェの店員ですよ。
大げさです、お母さん。
というか、まだオープンしてません。
従業員君B、仕事しなさい。
家族サービスは大事だけど、家でやって。
「おっ俺も妻もカフェなんて、はっ初めてでサッパリだ。
すまんが、お嬢さんのオススメをも゛もらえるか」
「かっか、か、かしこまりました」
大丈夫か、八百屋さん夫妻。
挙動不審ですよ。
従業員さんC、挙動不審が移ってる。落ち着いて、平常心よっ!
でも可愛いから、それはそれで良いとオモイマス。ハイ。
「3番テーブルのお客様、5番テーブルのお客様、追加でティラミスと――――――……」
ちょ、誰よ。あのやけに慣れてる子は。
「ロベルトさん、こっちこっち」
「何か問題がありましたか? 」
「あの子誰? どこで見つけて来たの」
「ん? ――ああ。ザーグですか。
彼は商業ギルドからの紹介なんですよ」
「あら、公募とは別に推薦枠ってこと? 」
「ええ。実は貴族の出らしくて、ギルドも扱いに困っていたそうで」
問題児じゃねーか。おっと、失礼。
面倒な方を押し付けられてしまったのね。
手際が良すぎて貴族には見えないけど。
「飲食業の経験があるのかしら。
とても動きが良いわ。出自を差し置いても、仕事には困らないんじゃない?
ギルドがロベルトさんに頼まなくても」
「あー、いえ。経験はない様です」
「えっ本当? すごいわ」
「ただ、そのぉ、ご本人は依頼を受ける気満々だったそうですが、依頼人の方が逆に………」
性格に難有りとか? それは困るわ。
「歯切れが悪いわね。
ハッキリ言って下さる? 」
「ゔっ、ハイエルン侯爵家のご子息なんですっ! 」
あー。アレね、アレだ。
近衛騎士団長だったかしら?
という事は、騎士団長の息子かー。うんうん。
「それは、よくない話ね」
「いやー。ギルド長に頭下げられちゃいまして。
ほら、ギルドには育ててもらった恩がありますし。えへ」
えへ、じゃないわよ。
貴方いくつ。そんなキャラじゃないでしょ!
最悪、第1騎士団とかならいいわ。よくないけど。
近衛はマズイ。
ハイエルン家は代々、王族の警護を任される家柄。
なんてこと。
これでは要らぬ誤解を生んでしまうわ。
ベーヴェルン王国の近衛騎士団は、ハイエルン家を中心とした少数精鋭。
よって、護衛対象は王族と王族が指示した一部の貴賓のみ。
婚約者とはいえ、ヴェルトハイムが無理を言って護衛させていると思われたら……。しかも、お店の為だけにっ。
考えるだけでも嫌だわ。
むしろ、王家を意のままに扱えると勘違いされたら?
ヒロインが登場する前に、破滅フラグがっ!
「どういう理由で彼がギルドに在籍しているのか知らないけど。一応相談して欲しかったわ」
「すみません」
「私がする事には、全てヴェルトハイムの名前がついて回るのよ。商会の利益だけ考えてはイケナイの。分かるわよね」
「っ! 申し訳ありません。失念しておりました」
「はぁ。いいわ、彼の事は考えるから。
罰としてオープンから2週間、店長を手伝いなさい」
「会頭ぉ〜〜〜っ! 一生ついて行きますゔ」
会頭なんて普段呼ばないくせに。調子良いんだから。
「お嬢様、用意していたカレーがなくなりました。
追加して作らせますか? 」
「え、そうなの? 」
「(ほら! だからカレーは看板商品にすべきだって言ったんですよ)」
くっ、ロベルトさんのしたり顔がウザイ。
コーヒー屋だって言ってるでしょうが!
ご飯屋じゃないのよっ。
カレー臭が勝つの、コーヒー負けちゃうの!
「結構よ。それより、リアム。
ロベルトさん、3週間ココで働く事になったから」
「かしこまりました」
「え゛。増えてませんか、あとお手伝いですよね。ガッツリ働かされそうで恐いんですが」
「その間の商会との連絡は、リアムが代わってちょうだい。
ロベルトさん。3人分の働きを期待しているわ」
「……ちっ。かしこまりました」
「会頭おぉぉ゛っっ」
リアム、貴方ブレないわね。
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――――
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「お嬢様っ、お待ち下さいませ」
「はやく! 日が暮れてしまうわ。
まだ服屋にも行かなきゃ」
「そんなにお急ぎにならなくとも。
それにお召し物は旦那様が用意されます。サイズもわかりませんし」
「そうだけどお〜。でも! 弟が出来るのよっ?
私、兄弟がずっと欲しかったの」
「まったく、しょうがありませんね」
「ふふっ。
あら? 新しいお店が出来てるわ。カフェ、かしら」
「ヴェルトハイム家のご令嬢が開くそうですよ。
使用人達の間で噂になってます」
「まあっ!
もしかして『シルヴィー化粧品』の?
素敵だわっ。
そうだ、彼と一緒に来ようっと」
「まだどんな方かも分かりませんのに」
「名前なら分かるわっ。パパが教えてくれたもの。
―――ジョシュアよ、ジョシュア・フォン・ラカンスターになるの」
「あっ、ちょっと。
もう。お待ち下さい! ソフィア様っ」
*クレマ:エスプレッソ抽出時に圧がかかる事で出来る泡
ブクマ&評価有難うございます!
作中に登場した直火式のエスプレッソメーカーは、『ビアレッティ社 モカエキスプレス』を参考にしました。
私も愛用していて、手軽に使えます。
マシンの様な圧のかかり方ではない為、慣れないとクレマはそこまで出来ません。
次回も宜しくお願い致します。羊




