コーヒーは嗜好性が高い。7 〜エリオットの憂鬱〜
本日2回目の更新です。
順番にご注意下さい。
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(エリオット視点)
シルヴィアと街にスイーツを食べに行って以来、言い寄ってくる令嬢が少なくなった。
娘や親戚を妾に売り込む輩も減ったし。
そんな事で安心してしまうとは、僕は相当浮かれていたらしい。
ジルベルトの弟が、シルヴィアの周りをうろちょろしている事は知っていたが……ここまでとは。
最近は、彼女に依頼された機械を作り続けているらしい。
シルヴィアが、毎回グレードアップして凄いと興奮していた。
ハァ、初めから気に食わなかったんだ。
初対面でいきなり“シル”と愛称で呼ぶなんてっ。
“シルヴィー”ならまだ、世間に浸透しているから許せる。
百歩譲ってだが。
よりによって、誰も呼んでいない愛称をシルヴィアが許すのか。
まあいい。
侯爵家の変人と僕。どちらがシルヴィアの役に立つかなんて、比べるまでもない。
「マルニー、シルヴィアは順調そうかい?
たしか、グラビエル子爵だったかな。彼は世間体を気にし過ぎる気があるが、保守的であまり野心はない。
シルヴィアに危害が加わる事はないだろう。
しかし、彼女の計画に狂いが生じる様なら助けてやって欲しい」
「はいはい、分かっております。
あまり過保護なのもいかがなものかと」
「別に過保護なわけではない。
婚約者を助けたいと思うのは当然だろう」
「シルヴィア様には要らぬ心配だと思いますが」
「そう言うな。サポートはいくらあっても困らないはずだ」
「(構いすぎると嫌われますよ)」
数日後、マルニーから報告を受け、頭を抱える事になった。
まあ、助けが必要ないに越した事はないと思っていたが。
困ったな。
いきなりヘビーだ。
王都から離れた領地だから良かったものの、近ければ鎮火は不可能だったぞ。
「どうされますか」
「そうだな。………グラビエル領は、王家の領土だ。
子爵に抑える様に指示してくれ。
領民には――あまり騒ぎ立てると豊作の神に嫌われる恐れがある――と言っておけ。
そっと拝むくらいが丁度良いだろう。
実際、人が押しかけて作物に被害が出たら、シルヴィアが悲しむ」
「かしこまりました。
教会が騒いでいる様ですが、それはどうされます」
教会は厄介だな。
今はグラビエル領内の教会が騒いでいるだけか。
なら、まだ対策のしようがある。
「司教に金を握らせろ。
名目は、祝福の祝いとしてだ」
「何ですか、その変なこじつけは」
「……何でもいいから、最もらしい理由をつけておいてくれ」
「かしこまりました」
「それから、こうも付け加えておいて欲しい。
管轄外の、特に王都の教会ないし神殿に知られたら、きっと貴方は追い出されてしまうだろう。
神が降臨されたかもしれない土地の教会だ。希望者は多いだろう。聖職者にとって名誉だからな、と」
「なるほど、考えましたな。
では、その様に(最近はシルヴィア様がお忙しくて、リアムに会えない。殿下がヴェルトハイム邸に寄って下されば、会えるのに。あまり自由時間もくださらないし。私も学園までお供しようか)」
「ああ頼む。
……マルニー? 何か言いたい事があるのか? 」
「いいえ。
すぐに子爵とグラビエル領管轄の司祭に連絡を取ります」
何だ? 物言いたげな顔だったが。
行き交う人々の噂は止められず、王都でも少し話題になってしまったが。
許容範囲だろう。
「あ、エリオット様。ごきげんよう」
「シルヴィア、今日は顔色が良いね」
笑顔で挨拶をするシルヴィアが、今日も可愛い。
その後ろにピッタリ張り付く執事は、相変わらず無愛想だが。
「あら、そうですか?
心配事が消えたからかしら」
「心配事?
ああ。最近君が園内でモテモテな件かい? 」
「ええ、まあ。大したことはないんですが、思ったより簡単に収拾してくれて(かなりヒヤヒヤしたけどね)」
「へー。それは良かったね。
そうそう。店舗の場所は決まったの? 」
「ええ、良い場所が。
2〜3ヶ月後にはオープン出来ると思いますわ」
「そうか。楽しみにしているよ」
マルニーに頼んで、ロベルトに資料を渡した甲斐があった。
あそこなら、周りの店も身元がきちんとしているし、治安も良い。
少し平民が通うには敷居が高いが、それはシルヴィアが何とかするだろう。
今度デートに誘おうか。
僕も彼女も時間が取れないが、
少しくらい、ご褒美があっても良いはずだ。
結果。デートと呼べるデートもなく、3日に一度のティータイムのみ。
長かった。
明日は、いよいよ『シルヴィーカフェ』のプレオープン日らしい。
オープンすれば、ロベルトが雇ったカフェ従業員が働く。
もちろん、クレームや問題は起こるだろうが、
カフェ内で解決するだろう。
オーナーであるシルヴィアは、ゆっくり出来る。
出来なくてもさせる。ロベルトに任せよう。
これでやっとシルヴィアとの時間が確保出来るな。
僕の婚約者様が食いつきそうなネタも、既にピックした。
フフッ、きっと瞳を輝かせて催促するに違いない。
ああ。楽しみだ。
残念ながら、当日になってもシルヴィアから招待はされなかった。
分からなくもないが、僕より周囲の飲食店のオーナーを気遣っている様で、良い気はしない。
「マルニー、馬車を出してくれ。
護衛は……ミルラ、お前だけでいい」
「「かしこまりました」」
行って驚かせてやろう。
僕を蔑ろにした罰だ。
店に着くと、従業員の家族や商会の人間、グラビエル子爵の関係者で賑わっていた。
予行を兼ねた従業員の動きも、問題はなさそうだな。
問題は、ユースルン侯爵だ。
何故居る。
身内がメインと聞いていたが、変更したのか?
それにしては、浮いている様だが。
入口付近の人達に気付かれてしまった。
いくら貴族が少ないとはいえ、商会の人は僕の顔知ってるからね。無理もないか。
「シー。サプライズだから、知らないフリして」
「「「(コクコク)」」」
そんなに全力で首を振ったら、痛めるよ?
ん? ジルベルトも来ているのか。
昨日、生徒会室で会った時は、何も言わなかったくせに。
「楽しそうだね、シルヴィア。
お出迎えもないなんて、寂しいな。婚約者なのに」
驚いた顔もマヌケで可愛い。
でも一瞬で迷惑そうな表情に変わるのは、いただけないかな。傷つくんだよ、僕でも。
「何故こちらに? 」
「ひどいな。可愛い婚約者の為に祝いに来たんじゃないか」
ああ、色々考えているみたいだね。
心配しなくて良いのに。
やっかんでくる店があったら、裏で手を回してあげるから。
大丈夫。王子とは分からない様にするから問題ないよ?
「これは殿下、ご無沙汰しております」
「やあ、ユースルン卿。……ふーん、どうやら卿とジルベルトは招待されたみたいだね」
「いえ、私はジルベルトの付き添いです。
息子が携わった事業に興味もありましたから」
そうか。招待されたのはジルベルトだったのか。
これはますます説教だな。
じっとジルベルトを見ると、気不味そうに視線を逸らされた。
次の集まりの日は覚えておけよ、お子様会計。
「へー。それは素晴らしい。
だけど彼が関わったのは、機械の開発だよね。
そしたら、今後は滅多に関わる事もないんじゃない? 」
コーヒーミルも焙煎機も申し分ない出来に仕上がったと聞いている。
なんなら、ミルは完成品をもらった。
つまり、鬱陶しいロイド・フォン・ユースルンがシルヴィアの側に居る必要は無くなった。
「はっはっは。違いますよ、殿下。確かにロイドは開発という点で貢献した様ですが、お店の方も手伝う予定ですから」
あ゛?
困った子だ、シルヴィア。
僕は君を自由にさせ過ぎたんだろうか。
一度彼女の交友関係について、話合わせなければいけない様だ。
「……そうなのか、シルヴィア」
不機嫌さを隠せなかったのは、許して欲しい。
侯爵が愉快そうにこちらを見るのも、腹立たしいな。
さて、どうしてくれようか。
僕の可愛い婚約者様?
ブクマ&評価有難うございます!
本日はスーパームーン皆既月食ですね。
曇りで見れるか心配ですが、見れますように!
次回も宜しくお願い致します。羊




