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新作発表会と〈祈り〉の香水。2



帰って来たお父様に、オーベロン様の事を伝えると、

笑顔で聞こえないフリをされたので、

目の前に連れていった。



「可愛いシルヴィー、どうやらお父様は目が疲れている様だ。今日はもう休むとするかな」



「お父様。夕食は今からですわよ。

トマスも必死で作ったのです。一緒に食べましょう」



逃がさないわよ、お父様。



「まあまあ、ヴェルトハイム公。シルヴィアもこう言っているし、一緒にいただこうじゃないか」



エリオットがウチで食べる時は、

ミルラ様もライアン様も慣れたもので、順番に使用人と一緒にまかない食べてます。はい。

ミルラ様が居るという事は、ライアン様が今食べてるのかな。

使用人達も慣れちゃって、「これも美味しいから食べなよー!」と友人感覚で食事をしている。

近衛騎士って偉いからね。忘れちゃダメよ、みんな。



「おや、殿下、ごきげんよう。 

何故ナチュラルに席についてらっしゃるんでしょう。

最近、我が家を別邸か何かと勘違いされているようで……王宮はあちらですよ、殿下」



「やだなあ、公爵。そう言ってくれる割には、

最近、挨拶や見送りもしてくれないじゃないか」



「そりゃ、3日に1回はいらっしゃいますからね。

面倒というものでしょう」



出てる、出てる。本音が出ちゃってるわ、お父様。

いやー、ほんとナカイイネ。



オーベロン様もトマスの料理を気に入ったらしく、

満足した様だ。

夕食後、お父様とエリオットは何かコソコソ話していたけど、教えてくれないよね。きっと。



さて、エリオット達も帰ったことだし、寝ますか。



「我はどこで寝れば良いのだ? 」



「え゛? 」



ココで寝るの?




――――――――――――

――――――

―――



「おはようございます、お嬢さ―――っ⁉︎」



「ふぁ、おはよう、リアム。どうしたの? 」



―――もぞもぞ



「む、もう朝か」



「お嬢様!これはどういう事ですかっ、

仮にも貴方は殿下の婚約者なんですよ!」



ああ、コレか。

安心しなさい。見ての通りよ、私のこのく(・)ま(・)をご覧なさい。

寝不足よ。



「どうもこうも、昨日オーベロン様が泊まるって言うから、夜(いま)から客間を用意させるのは悪いし、私の部屋で我慢してもらったのよ」



ベッドをとられたから、ソファーで寝たのよ?

首と腰が痛いわ。



「はあっ。悪いなんて気にせずに、夜中だろうが関係なく、呼んで頂きたかったですね」



「すみません」



「とりあえず、今日は客間を用意しますから、

そちらでお休み下さい」



「うむ、世話になる。だが、我はこの部屋で良(よ)いぞ?

娘の近くにいた方が心地良(よ)いからな」



え、私これからずっとソファーで寝るの?



「ダメです。緑の王と言えど、お嬢様には婚約者が居られます。ですので、部屋をお移り下さい。

………蒸留水(ジュース)飲み放題にしますから」



「人間とは難儀な生き物だな。

小僧、忘れるでないぞ。今すぐ部屋とジュースを用意するが良い」



ジュースに釣られるなんて、情けない。



「かしこまりました。

お嬢様はさっさと朝食を召し上がって、支度して下さい」



「はい」





「ごきげんよう、シルヴィア様」



「アンネ様、ごきげんよう」



マイエンジェル朝から輝いてますね。

寝不足のせいか目が辛いわ。



「昨日は何のお話だったんですか? 」



「あー、生徒会のお手伝いをしてくれないかという、お話でしたわ」



――――ザワザワ


「やっぱりそうでしたのねっ」「1年生で生徒会なんて」「さすがシルヴィア様ですわ」



「まあっ!素敵ですわ! 

それで、今日からお仕事ですの? 」



いや、行かんよ。



「いいえ、まだ迷っておりますの。

私、新(・)商(・)品(・)の(・)開発中でして時間が……」



聞き耳を立てているクラスメイトの皆さん、

しっかり宣伝してちょうだい!



「というと、『シルヴィー化粧品』のですかっ⁈

気になりますわ!いつ頃発売に、いえ、何が発売されますのっ? 」



マイエンジェル、宣伝の才能をお持ちね。

サクラかと思っちゃったわ。ステキよ!

勝手に貴方を宣伝会長と名付けましょう。



「ココだけの話、香水を販売しようと考えてますの。

まだ試作段階ですので、内緒ですわよ?(完成済)」



「内緒ですって」「どんな香水なのかしら」


ふふっ、最終段階に入ってるけど、ちょっとした嘘を混ぜた方が内緒話は広まりやすいわ。

いっぱいご家族やご友人に広めて頂きますわよ!



「内緒なのに私に教えて下さったのですかっ?

秘密は必ず守りますわ!ご安心下さいませ」



マイエンジェル、心まで綺麗なのね。

罪悪感、、、

明日にでも、何か持ってくるね。

それこそ、本当に試作中のシャンプーとか。

宣伝に使おうとして申し訳ありませんでした。




「皆さん、おはようございます。

今日は授業の流れと施設についての説明と、

簡単なレベル分けテストを行います」



入学2日目にして、テストとか聞いてないよ?





「お嬢様、お迎えに上がりました」



ウリム先生の仰った通り、簡単なテストだったけど

量が多かった。

45分×5回はダルくない?


あまり行きたくないけど……

とりあえず生徒会室に行って、ランドルフ先輩に新作発表会の詳細をお伝えするべきかしら。

予定だってあるだろうし、すでにギリギリよね。

早い方が良いわ。



「ありがとう、リアム。

生徒会室に寄ってから帰るわ」




――――コンコン



「ヴェルトハイムです。失礼いたしますわ」



「やあ、シルヴィア。どうしたの? 」



「エリオット様、ごきげんよう。

ランドルフ様にお伝えしたい事がございまして」



「へえ。そう」



あら、エリオットの機嫌が悪くなった?

浮き沈みが激しい人ね、本当に。



「シルヴィア嬢、私に用事とは発表会についてか?

(ちょうど聞きたかったけど、エリオットの機嫌

が良くないな)」



「ええ。せっかくですから招待状も作ってみましたの。夫人に渡して下さいます?

あと同伴の方の大体の人数もお聞きしたいのですが」



今日は、会計の方はいらっしゃらないのね。

残念だわ。あざとい系男子も鑑賞したかったのに。



「ありがとう。母上もぜひと言っていた。

同伴はメイドが1人と、私もお邪魔して良いだろうか」



「もちろんですわ(まさかのランドルフが釣れた)

エリオット様もいらっしゃるので、ご安心下さいませ」



「そういうわけだ、ランドルフ(君1人では行かせないよ)」



「(エリオットのヤツ、絶対勘違いしてるな)」



2人して熱い視線送り合っちゃって、なんなの。

萌えるわ!

早くヒロインちゃん出て来てっ。

でないと新しい扉を開いてしまうわ!

うふ腐腐腐



「(お嬢様、漏れてます)」



* * * * * *



「あら、シルヴィア様は? 」



一緒に生徒会室にと思ったのに、いらっしゃらないわ。

どこに行かれたのかしら。

それとも本当に、役員の件をお断りに?



「エリザベス様。シルヴィア様でしたら、

先程執事科の生徒と生徒会室に行かれましたよ」



「まあ、そうでしたの。ありがとう」



行くなら私も誘って下されば良かったのに。



シルヴィア・フォン・ヴェルトハイム

同じ公爵家、同じ年齢、性別。

彼女とは事あるごとに比べられてきた。

メディス家の者として恥じない様、

毎日勉強、レッスンを重ねてきたわ。


だけど、どれだけ頑張っても1番に聞こえるのは

彼女の名前。

何が足りないのか分からなかった。

父にも姉にも出来が悪いと言われた。

ハッキリ言って、姉よりは全てにおいて勝っていると思う。 

それでも、あの子がいる限り、私は1位になれない。


6歳の時、お母様に連れられたお茶会で、初めて彼女を見た。

つり目で、キツそうと言われる私の顔とは正反対の可愛い顔立ち。

まるで絵本から出て来たお姫様みたい。

比較されるのが嫌で、なるべく関わらないように避けた。


7歳の時、お父様が嬉しそうにエリオット殿下の婚約者候補になったと報告された。

とても嬉しかった。婚約者になれば、私は本物のお姫様になれる!

2週間後に来訪されると聞いて、必死にマナーの勉強をしたの。

だけど、殿下はいらっしゃらなかった。

その1週間も前に、シルヴィア(あの子)に決まったから。

お父様もお母様もガッカリして、お姉様には笑われたわ。

でも分かってた事じゃない。

候補者の名前に、彼女が上がっていた時点で。

家族は分からなくても、私は分かっていたわ。

お姫様がいるのに、新しいお姫様は必要ないのよ。


悔しくてたまらない。

でも目で追うのをやめられなかった。

同い年で、商会の会頭になり、王子の婚約者になり、所作だって文句の付け所がない。

憧れない方がおかしいわ。

彼女に近付きたい。あの子になりたい。

その想いで頑張って来た。



「シルヴィア様、私達も生徒会室に参りましょう?」


この一言だけに、どれだけ緊張したか。


入学したてで生徒会に入るなんて、貴族の娘として名誉な事。

それも生徒会長には殿下、副会長には宰相の嫡男。

これほど恵まれたメンバーはいないだろう。

その1人に選ばれた。彼女と一緒に!



なのに、どうして断るんですの⁈

王族からの誘いを断るなんてあり得ませんわ!

せっかく一緒に働けると思ったのに!


今日も何で私を置いていってしまいますのー⁉︎




「くしゅんっ」


「シルヴィア、風邪か? 」


「いえ、違います、たぶん? 」


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