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入学式と事件の香り。3



「さて、帰りましょう……と、言いたいところですけど、何故エリオット様が一緒に?」



もう馬車のお迎え来てるから、早く帰りたいんだけど。

リアム、先に乗り込むな。



「僕も一緒に帰るよ」



王宮まで送れと? えー、めんどい。



「お嬢様、声に出てます」



「あら失礼。自分の馬車でお帰り下さいませ」



「大丈夫、行くのはヴェルトハイム邸だから」



「まさかお茶しにですか」



「ああ、いつもの事だろう?

それにマルニーももれなくついてくるぞ」



そりゃ、そうでしょうね。



「お嬢様、早く殿下を乗せて帰りましょう!

お茶の準備をしないとっ」



貴方、マルニーさんにつられたわね。全く。

知ってるのよ。

陰でスチュワートを師匠と呼び、

マルニーさんをじぃちゃんと呼んでいる事。

たまに本人達の前で間違って呼んで、ニヤニヤされている事も知ってるわ。

マルニーさん嬉しそうだもんね。

「リアムがじぃちゃんって呼んでくれたんです!」って、ミルラ様に興奮気味に話してたの聞いたわ。



「殿下、お嬢様、おかえりなさいませ。

お茶の準備をして参りますね」



「ただいま。スチュワート頼むよ」



ナチュラル。すごくナチュラル。

ココ私の家よね、スチュワートはお父様の執事よね。

実家レベルで寛いでいやしないかい?王子よ。



「あっ、スチュワートさん!私(・)も手伝います(じぃちゃんの分、淹れてやろう)」



ふっ、リアムの副音声が全部聞こえてくるわ。

私のお茶は淹れてくれないの?

ボーナスカットしちゃうぞ、はーと(棒)



「ところで新作発表会だけど、僕も行って良いよね」



「良いかな、ではなく、良いよねと言うあたり、

私の意思など聞いていませんよね。どうぞ。

ついでに手伝って下さいませ」



「構わないよ。体力仕事? 氷魔法? 」



「情報ですわ。

ローレヌ公爵夫人を招くにあたって、粗相がないようにしたいのです」



「なるほど。それであれば、クリスティア夫人の方が詳しいと思うけど、、、何が知りたいの? 」



「ではまず、現在のローレヌ公爵家の家族構成から」



――――――――――――

――――――

―――



うーん、公式設定のまんまね。

サラ夫人はすでに精神を病んでいて、

公の場に出る事が減って来ているらしい。


名前が出て来なかった子爵令嬢は、

テレサ・フォン・グラビエル

兄は、ジーモ・フォン・ローレヌ


ジーモがサラ夫人を毒殺したきっかけは何かしら?

実母のテレサが虐げられていたのが原因なんだろうけど、行動を起こすきっかけがあったはずよ。


そもそも、夫人が死んだ後、テレサとジーモはどうなったの?

ゲームでは何も語られていないわ。



「リアム、ロベルトさんにお披露目する香水を追加すると連絡しておいて。

明後日までに用意するわ」



「……今からでございますか?」



「そうよ。

さて、エリオット様。出番ですわっ」



「・・・はい」




自慢の風景式庭園のガゼボの横には、中型のアランビック蒸溜器。

冷却槽が工場に比べてかなり小さいから、

そのままやっても出来るけど、エリオット(便利人間)が居るから手伝ってもらった方が短縮出来るわ。


クラリセージ、ゼラニウム、ローズウッド、ベルガモット、ビターオレンジは、オイルがあるから……

うん、ホーリーグラスがピッタリね。



「精霊達(ちびっこちゃん)、ホーリーグラス持って来てくれる?」



「なぁに〜」「エリオットもいるぅ〜」「リアム、リアム!」「シルヴィア、蒸溜水(ジュース)ちょうだいっ」

1人リアムにベッタリな子が居るわね。

ちょっとジェラシー。



「どうか心が静まりますように

(サラ夫人を守って)」


―――ポワァッ



「えっ? 」



何? 急にハーブが光出して………



「お嬢様っ⁈ 」


「これはっ⁉︎ まさか【緑の一族】の〈祈り〉?


―――シルヴィアは、やはり愛子なのか? 」



「爺様きたぁ」「じぃさまだ!」「シルヴィー、爺様きたよぉ」「爺様っ、シルヴィーイイ子!」



精霊達(ちびっこ)は何を騒いでいるの?

爺様って誰よ、その前にこの現象説明してー!

ごっそり魔力持っていかれてる気がするんだけど。

ヤバくない、コレ大丈夫?



――――ザアァッ‼︎‼︎ ピカッ



「――ほう、久しいな。銀髪の娘よ」



「・・・・ダレ? 」



何コレ、ファンタジー? いやファンタジーか。

急に空間が歪んで、イケメンが出て来たんだけど。

神々しいというか、光っちゃってるし、


……とりあえず、イ(・)ケ(・)ヴ(・)ォ(・)!




「誰だと? 我を忘れたのか、銀髪の娘よ!」



―――ブワァッ



「ナニっ、急に風がっ」



「シルヴィア、爺様だよっ」「シルヴィア、あいさつしてっ」「じぃさま、僕のシルヴィア!」「爺様、風つよぉい!きゃはっ」


え゛、爺様ってこの人?

どう考えても20代前半じゃ。



「あっあの!私、ヴェルトハイム家のシルヴィアと申します!」



「シルヴィア。はて、そんな名前だったか? 」



どなたと間違えてらっしゃるか知りませんけど、

初対面です。

私がイケメンを忘れるわけないじゃないですか!



「ふむ。似ておるが、違うのか?

我はオーベロン。人の子は我を緑の王と呼んでいたな」



緑の王? それって初代様の?

本当に実在したの!



「オーベロン様?が何故こちらに。

何かあったのでしょうか」



「ん? 懐かしい魔力を感じたのでな。

お前であろう? 我に祈りを捧げたのは」 



「祈り?

もしかして、この光ったハーブの事ですかっ!」



あら? さっきまで光っていたのに……

普通のホーリーグラスに戻ってる



「うむ、それだな。ちゃんと成功しているようだ。

筋が良いではないか」



⁇⁇

私って何したの、リアム。チラッ。



「(何したんですか、殿下)」



「(え、僕?)恐らく、シルヴィアは〈祈り〉の魔法を使ったんだ。

ヴェルトハイムの初代が得意としていた魔法だよ。

ただ、使える人間がなかなか現れないから衰退していったはずなんだけど。

君はどこで、その魔法を覚えたんだい?」



そうなの?

魔法なんて使った覚えないんだけど……



「なんだ、分からずに使ったのか。

情けないのぅ、娘。

よし、暇をしていたところだ。

我が手伝ってやろう。ほれ、さっさと作る物を作って、我をもてなせ」



「シルヴィアっ、緑の王に従うんだ。

早く抽出しよう(コソッ)」



「わっ分かりましたわ!」



* * * * * *


ふむ。懐かしい魔力に惹かれて人間界(こちら)に来たが……違ったのか。


柔らかい魔力も艶やかな銀髪も、あの子に瓜二つだというのに。人間の命は短いのぉ。


だが、600年ぶりに来て帰るのはつまらんな。


どれ、あの娘の面倒でも見てやるか。


………あの娘は、先程から何をしておるのだ。

あの錆色のカラクリは何だ?

あれに植物を入れるのか。


お? 出来たようだな。


「爺様、のむぅ〜!」「蒸溜水(ジュース)美味しいよぉっ」「シルヴィアがくれたのぉ」


む、飲み物を作っていたのか? どれ。


「違うの、オイル作ってるぅ〜」「蒸溜水(ジュース)はおまけぇ」


美味い!なんと、これがオマケだと言うのか!

気に入った。

やはり、しばらく面倒を見るついでに世話になるとするか。


「お前達、我はしばらくここに留まる。

ジュースとやらを、もう少しもらってきておくれ」


「やったぁ!シルヴィアー」「爺様、シルヴィー気に入ったぁ!」「シルヴィア、おかわりぃ」


子供達が元気なのは、良いものだな。




* * * * * *



「エリオット様、何なんですの?〈祈り〉って」



「僕も城にある歴史書で読んだだけなんだが、

呪(まじな)いに近い魔法らしい。

詳しい事は分からないが、付与魔法の一種だと考えられる。

魔法がかけられた物は、効力が上がったり、願いが成就しやすくなったそうだ。

だが………」



本当に呪(まじな)いみたい。

御守りに願掛けする感じかしら。

にしても、とんでもない大物が出て来てしまったわ。

でも、もしかしたらサラ夫人を助けられるかもしれない!

未然に防ぐのが1番だけど、最悪、万能解毒剤があれば良いのよ。



「だが、何です?」



「建国前、その力は脅威とされながらも羨望の的だった。

だから人々はその力を求め、手に入れようとした」



「まさか、使える人間が現れないというのは……」



単純に発現者が少なくなったわけじゃなくて、

血が絶たれたって事なの?



「当時〈祈り〉が使える者の多くは、【緑の一族】と呼ばれていた。

だから彼らは、力を求める者達によって閉じ込められ、一族の2/3が死んだ」



「そんな!」



「初代(アキラ王)は、一族を失いながらも、手を差し伸べてくれたオリヴィア・ヴェルトハイムに感謝と誓いの意味を込めて、公爵の爵位を贈ったんだよ」



「私、知りませんでしたわっ、

そんな事、今まで一言も!」



「これは代々、ヴェルトハイム公爵と一部の王族しか知らされない、語(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)歴(・)史(・)だ」



「では、何故私に? 」



「君が、愛子(オリヴィアの再来)かもしれないから」



ゲームには、そんな設定一言もなかったわ。

ただ、小さな女々しい嫌がらせをヒロインにして、

断罪されて死ぬのよ!



「シルヴィア、君に謝らないといけない。

僕の卒業と同時に婚約を解消する約束だったけど、

王家はきっと、その力を野放しにはしないだろう」



何で、何で今まで気付かなかったんだろう。

作中にあったヒロイン誘拐事件や暗殺事件は、

シルヴィアがやったとは証明されてない。

証明された嫌がらせは、全部小さな嫌がらせだけ。 

毎日せっせと細々した嫌がらせをするシルヴィアが、

そんな大それた事を考える? 

シルヴィアが犯人じゃなかったとしたら?


おかしな話よ。

四大公爵家の令嬢であり、エリオットの婚約者であるシルヴィアが、男爵家の令嬢を虐めた罪で断罪されるなんて!

日本だったら、イジメが悪だと分かっているから、考えもしなかったけど、ココは完全な階級社会。

むしろ男爵家が殿下を誑かした罪に問われる事はあっても、公爵令嬢が罪に問われるわけがない!


断罪後だっておかしいわ。

敵国の人質にされたり、夜盗に襲われたり。

もし全部仕組まれていた事だったら?

〈祈り〉の力を持つ者を消そうと考えた人が居たら?



「エリオット様? 正直にお応え下さいませ。

【緑の一族】を1番多く捕らえた人物は誰ですの?」



「ガーク・ボルテー。ボルテー伯爵家の先祖だよ。

尤も、その一件さえなければ公爵だったろうがな。

ガーク・ボルテーは、建国前の有力者だったから」



ボルテー伯爵家って、ラカンスター男爵家の寄親よね。

たしか、ゲームでもボルテー伯爵家の長男が、

ソフィア(ヒロイン)の相談にのるシーンがあった。


ただの相談じゃなかった可能性はない?


どうしよう。

恋愛云々に関係なく、

ソフィア(ヒロイン)は、―――敵かもしれない。



ブクマ&評価有難うございます‼︎

次話はランドルフ回です。

宜しくお願い致します。羊

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