入学式と事件の香り。2
誤字脱字報告いつも有難うございます。
本当に有難いです!泣
「え〜っとぉ、エリザベス嬢はオッケーで、
シルヴィア嬢は嫌だってことぉ? 」
その言い方には語弊が。
いや合ってますけどね?
お断りすると言ったけど、あくまで嫌とは口に出してないわ。思ってはいるけど。
「私は、もちろん皆様のお手伝いをさせて頂きますわっ。殿下」
「ありがとう、メディス嬢。
シルヴィアは………ダメだろうか?」
そんな瞳で見られても私には効きませんよ。
「ご期待に添えず、大変申し訳ありませんが、
自ブランドの運営もせねばなりませんので。
どうか、ご理解賜りますようお願い申し上げます」
要約するとアレですね。
忙しい事知ってるくせに面倒ごとを押し付けるな、という意味ですわ。
「へ〜っ!殿下の婚約者ってどんな人か気になってたけど、いがぁい!
てっきり良い子ちゃんだと思ってたんだけどなぁ」
「まぁ、私は良い子ではないと?」
どう見ても、私は良い子でしょう?
エリオットもリアムも、どうして目をそらすの。ねぇ。
「なかなか愉快なご令嬢のようだ。
エリオットが気に入っているのも理解出来る。
この場で決めず、少し考えてから答えを聞かせてはくれないか?」
愉快な要素は全くなかったと思うけど、
帰っていいなら、そういう事にしておきましょう。
「分かりましたわ、ランドルフ様」
「出来れば良い返事を期待しているよ、シルヴィア嬢。
母が『シルヴィー化粧品』のファンでね。
最近クリームを出しただろう?
メイド達に嬉しそうに話していた」
それはそれは!お買い上げありがとうございます!
潤沢な資金が出来たから、ついに作ってしまったの!
銅製蒸留器アランビックカラムタイプとスチームタイプ。製作期間まる2年。
材料は相変わらず精霊達が頑張ってくれているから、エッセンシャルオイル作り放題!
オイルを抽出できる様になったおかげで、
化粧水の効果も上がったし、クリームや香水も作れるようになった。
なんせ、工場建てましたから。
店舗は、2店舗。領内に1つ(本店)、王都に1つ。
小規模商会と呼べるまでに成長したわ。
私の手腕が素晴らしいと言いたいところだけど、
ロベルトさんが、すごく頑張ってくれたの。
今は、商人ギルドを辞めて、ウチの商会でバリバリ働いてくれているわ。
経営面だけでなら、彼の商会だと言っても良いくらい。
「嬉しいですわ!ローレヌ公爵夫人にも、ぜひお礼を申し上げ……た、い……」
「シルヴィア嬢?」
待って。今ってたしか、14歳よね。
エリオットと同じだもの。
14歳の時にランドルフのお母様って毒殺されるんじゃなかった⁉︎
この1年の間に事件が起こるってこと?
ゲームには14歳の時としか書いてなかったし……
映像を思い出すのよ、私!
――――――っ紫陽花、
ランドルフがサラ夫人の死を知らせられるシーンは、
雨が降る公爵邸の中庭。
そこには紫陽花が咲いていたわ!
という事は、6〜7月。もう時間がないわっ。
もう4月なのよ? 助けないとっ!
でもどうやって?
「サラ夫人が毒殺されるかもしれないから、気を付けろ」って言えば信じてもらえる?
「犯人は貴方の兄よ」って伝えて、彼は怒らずに冷静でいられる?
……ムリよ。
どうすれば防げるの?
「シルヴィア、大丈夫か?」
「エリオット様……私、私っ。
………っ感激したあまり、
つい言葉に詰まってしまいましたわ」
私には、とても言えないわ。
「・・・なんだ、良かったね、ランドルフ(何か思い詰めた様に見えたけど、気のせいか)」
「そうだわ、本店で内輪向けに香水の新作発表会をしますの。
来週の休日を予定しているのですが、ローレヌ公爵夫人をご招待させて頂きたいですわ!
夫人にお話しして頂けないでしょうか」
とにかくサラ夫人に直接、探りを入れましょう。
正直、夫婦間・家族間の問題はどうしようもないわ。
サラ夫人と、子爵令嬢の仲を取り持つのは不可能と言って良い。
可能性が高いのは、兄とランドルフの関係性ね。
兄弟で上手く意思疎通が取れれば、悲劇は防げるかもしれない。
「母もきっと喜ぶ。でも良いのか? 」
「もちろんです。初期の『シルヴィー化粧品』からご愛用頂いているんですもの!
私としても、発売前にぜひ感想をお聞きしたいです」
「ありがとう」
生ランドルフ スマイル頂きましたー!
大丈夫よ!貴方の笑顔は守って見せるわ!
そしてヒロインと存分にイチャコラするがいいわっ。
「シルヴィア?(僕は誘われてないけど?)」
あら、もちろんエリオットとヒロインのイチャコラもサポートしますから、ご安心下さいませ。
* * * * * * *
リアム視点
俺を執事に拾い上げてくれたシルヴィアお嬢様は、
自分にとって1番大切な人だ。
見習いになったばかりの時は、1つ下の彼女に追いつこうと必死だった。
贅沢なことに、スチュワートさんとマルニーさんの2人体制で英才教育をされた結果、
平民でありながら公爵家の使用人として恥じない人間に成長出来たと思う。これは自慢だ。
(ヴェルトハイム家に純粋な平民出の者は、ほぼ居ない。爵位を継げない下流貴族の出か、末端貴族が占めている)
ただ。成長するにつれて、目標としていたお嬢様は、
実はバカではないかという疑念が大きくなっていく。
小規模商会でありながら、抜群の知名度を誇り、
社交界において一種のステータスとまでされる『シルヴィー化粧品』。
その会頭であり、ほとんどの商品を手がける彼女は、
間違いなく天才だ。
同年代はおろか、大人まで憧れる彼女だが、
まさか立ち上げた理由が「リアムのお給料の為に、趣味と実益を兼ねたのよ」とは誰も思わないだろう。
何より、婚約者である殿下を顎で使い(本人無自覚)、厨房に入り浸り、市場で変な食材を仕入れては高笑いしている様な人間だ。
変な食材の1つ、コーヒー豆事件は衝撃的だった。
ある日、お嬢様が「コーヒーが飲みたい!」と言い始め、市場で買い占めたという変な豆をニヤニヤ笑いながらテーブルにばら撒き、1粒1粒を「イイ、ダメ」とブツブツ言いながら3時間も選別をしだしたのだ。
その時は、何をしているのか誰も分からず、
旦那様は少し泣いていた。
その後、ニーナさんの魔法で豆を焼き始め、バチッと豆が爆ぜる度に喜んでいた。
奥様はそれを見て何も言わず、そっと自室へ戻られた。
豆を粉砕し、お湯を注ぎ始めた時、マリエラさんが気付かれないように逃げようとした事がバレて、お嬢様に捕まり第1犠牲者となった。
出来上がった黒い液体は、とにかく酸っぱ苦くて不味かった。
お嬢様曰く、焙煎に失敗したらしい。
「明日リベンジする」と言い出し、みんなを青ざめさせた。
ニーナさんに至っては、「お嬢様が魔女のくすりを作ろうとしている」と戦々恐々としていた。
ちなみに6回目で美味しいコーヒーが完成した。
旦那様とスチュワートさんは、紅茶より好んで飲んでいる。
行動力があり過ぎるのも、令嬢としてどうかと思う。
憧れたお嬢様はまやかしだった。
徐々にお嬢様に対する認識を改め、
だいたい理解出来るようになったのが、2年前。
マリエラさんからの引き継ぎが多くなり、
ついにお嬢様付きの執事に昇格したのが、昨年。
と言っても完全に「見習い」がとれたわけではない。
中等部3年間を試験期間とし、見極めるそうだ。
だからどうか、首を突っ込まず、平穏な学園生活を送って下さいと願ったのが、今朝の話。
入学式早々、殿下に呼び出され生徒会?やめて頂きたい。
ローレヌ公爵夫人を招待だあ?
内輪って意味ご存知ですか、お嬢様。
公爵夫人はお客様であって、商会の人間ではありません。
それ相応のおもてなしが必要になっちゃったでしょうが!
しかも見なさい!あの殿下の顔。
自分は呼ばれてないのに、内輪向けの発表会に公爵夫人が呼ばれたんだ。
機嫌悪いよ、あれ。
殿下もいらっしゃると考えて準備する必要があるな。
だが、何だろう。
この得体の知れない悪寒は。
まさかまだ何かやらかすつもりですか、お嬢様。
まじで、給料上げろ。




