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第四話:前日譚1

 後にELFと呼ばれる存在の故郷――コール。


 この広い宇宙のどこか、星々の煌めきの中に宇宙船(しま)は浮かんでいた。

 コールという名の(ふね)は群島からなる一つの大陸だった。


 そのコールの白銀の王宮に、トゥアナ・フィリアという王がいる。


 だが今は病に伏し、眠りから醒めないのであった。

 女王リシアも悲しみに暮れ、倒れてしまい。


 残されたのは王子であるエイリス・ニグ、その人ただ一人。


 けれど彼は実験室に篭り、何やら怪しげな実験をしていた――。



「これで——。」


 彼は複雑な模様が刻まれた床の上に立つと、そばにあった小瓶を飲み干す。

 小瓶の中には黒いウネウネとした何かが蠢いている。

 

 すぐに世界が揺れた。

 心臓が一拍遅れて鳴り、彼は床に倒れる。


 鉄の味が口の中に溢れた。


 内側から食い破られるような痛みが走る。

 ぐるぐると世界が回った。

 けれどそれでいいと思った。


 口から溢れ落ちた赤が床を濡らす。

 複雑な紋様が輝いて世界が二重になった。

 一時的に並行世界を作り出しているのだ。

 この実験さえ成功すれば。

 彼はそう信じていた。


 誰も来ない部屋の中で王子は微笑む。


 冷たくなりつつある手を伸ばして、意識を手放す。

 それは誰にも知られない始まりの物語だった。

 

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