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お財布令嬢〜愛の切れ目がお金の切れ目〜貴方にはもう貢ぎません!  作者: 迦陵れん


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独り占め

 突如ジェニーが、ザガロと距離を置いてミディアと仲良くするようになった。


「馬車の都合があるから、学園への行き帰りは必ず二人一緒にしよう」


 と何度言っても、それを無視してジェニーは放課後ミディアと一緒に平民街へと繰り出してしまう。 


 故にザガロは平民街へと向かう二人を学園内で見つけるたびに引き離し、「そんなに行きたいのなら僕のことも必ず誘うように」としつこいぐらいに言い聞かせた。


 しかし、ジェニーにとってそれは何の効果もなかったばかりか、むしろそれによって余計にザガロから距離をとるようになり、その後はまるで彼を出し抜くようにしてミディアと共に平民街へと向かうようになってしまった。結果──彼が数えきれないほど悔しい思いをする羽目になったことは言うまでもない。


 しかも腹の立つことに、ザガロが悔しい思いをしたのは、そのことだけではなかった。


 ジェニーの部屋から出るゴミの中に含まれている高級菓子の箱──。


 ゴミとして大量に出てくるその箱の中身は、一度としてザガロの口に入ったことはない。つまり、ジェニーが全て一人で食べてしまっているということだ。


 放課後に寄り道している平民街で良い思いをしているにも拘らず、ジェニーは家でまで高級菓子を独り占めして味わっている──そのことを知った瞬間、ザガロの頭の中は真っ白になった。


 思わずその場に力なく座り込み、ゴミを集めていた使用人に不思議そうな目を向けられても気づかぬほどに。


 自分はあの宝飾品の件があってから、一度もミディアの家で夕食をご馳走になっていないばかりか、数えるほどしか平民街に行けていない。なのになぜ、ジェニーばかりが。


 学園に入学するまでは、月に二回──多ければ四回、ザガロはミディアの邸で夕食をご馳走になるなり、美味しい菓子を手土産でもらうなりしていた。あの頃自分は、病弱なせいであまり外出できないジェニーのことを気遣い、お土産は全て二人で仲良く分け合って食べていたし、ジェニーが食べたがるお菓子をわざわざミディアに頼んで──実際は脅迫まがいに言うことを聞かせた──まで買って届けてもらっていたのだ。


 それなのに、そんな風に思い遣ってあげていた自分を無視し、ジェニーは高級菓子を独り占めして楽しんでいた。


 そんなことが許されるのか?


 ザガロは自分自身に問いかける。


 なんといっても相手はジェニーだ。可愛い自分の義妹だ。将来は自分の手元に、義妹という名の愛人として置いておきたいほどに愛している女性。


 しかし、だからといって何だというんだ?


 彼女が自分の言うことを聞かないのは事実だし、高級菓子を独り占めしていることもまた事実だ。


 ジェニーだからといって、自分が彼女を愛しているからといって、何でもかんでも許していたら、それこそ全く言うことを聞かなくなるんじゃないのか?


 だとしたら、それは避けるべきだ。男である自分が女であるジェニーの言いなりになるなんて考えられない。


 今まではジェニーが可愛すぎて自分の方が何でも言うことを聞いてあげてしまっていたが、そろそろそれも潮時だろう。これからは自分が彼女を躾けていかなければ。


「とはいえ、どうやって躾けてやろうか……」


 ベッドから身体を起こし、顎に手を当てて考えながら、ザガロは呟く。


 できることならジェニーを部屋に閉じ込めるのが一番手っ取り早いのだが、学園もあるし、今は自分こそが閉じ込められている状態のため、そんな無茶はできそうにない。


 だったら、どうする……?


 どうしたら、ジェニーをうまく躾けられる?


 眉間に深い皺を寄せ、唸りながらザガロが懸命に考えていると、そこで不意に部屋のドアをノックする音が聞こえた。










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