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お財布令嬢〜愛の切れ目がお金の切れ目〜貴方にはもう貢ぎません!  作者: 迦陵れん


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ノスタリス子爵の思考

 婚約者(馬鹿)の裏切りを、諦念と悲しみの混じった表情で淡々と自分(ノスタリス子爵)に報告したミディア()──。


 あの裏切りに遭うまでは、まだ婚約者(馬鹿)に情があるようだった。


 しかしあれで完全に情が断ち切れ、本当の意味で婚約破棄を視野に入れ始めたのだろう。


 それまでのミディアは、口では婚約破棄すると言いながら、どこかでまだザガロに期待しているような様子があった。


 おそらくだが、相手に婚約破棄を突きつけることで気持ちを取り戻そう──もしくは、少しでも態度を改めてもらおうと考えているような節が見受けられた。


 だから、自分は動くことができなかったのだ。


 実のところ、メラニン侯爵子息が馬鹿であることなど、ミディアに報告される前から薄々勘付いていた。それでも婚約を破棄しなかったのは、ミディアのザガロに対する情が残っていると感じたからだ。


 貴族の婚約は一度破棄してしまえば、再婚約は難しい。


 だからこそ一時の感情で婚約を破棄してしまい、後からもう一度婚約したいと言い出されても不可能なことが分かっていたため、ミディアが別の人間と婚約できるギリギリの年齢になるまで見極めようと考えていた。


 その年齢以前にミディアがザガロに見切りをつけるようなら、婚約は破棄する。しかしそうでないなら──たったの一欠片であろうとも、未練が残っているようなら婚約は継続させる。


 そう決めていたから、ミディアが何度ザガロの非道を訴えてきても、心を鬼にして取り合わないふりをした。


 できれば一度目の約束をすっぽかした時点で婚約を破棄してやりたかったが、娘の気持ちを最優先にすると妻と約束したこともあり、表面上は無関心を装って、アドバイスなどとはとても言えない酷い言葉を投げつけた。


 早く現実を直視して、一日でも早く目を覚ましてもらいたかった。


 あんな金目当て、我が家の豪勢な食事目当ての卑しい男なんかに、可愛い娘をくれてやるものか──。


 真面目にミディアの話を聞いてしまえば、感情が先走り、婚約破棄へと話を進めてしまうかもしれない。今のミディアはそれで良いだろうが、明日は? 明後日は? 優しくされて気が変わったらどうする?


 そんな懸念もあり、今日まで婚約を破棄することができなかった。


 しかし今日は、今日こそは、念願の婚約破棄ができる。


 百パーセントあちら側の有責だ。こちらが責められることはない。


 婚約破棄のせいでミディアは一時的に“傷もの令嬢”と言われるだろうが──側にはクロニエ男爵令息がいる。彼ならきっとミディアを守ってくれるだろう。


「あなた……」


 隣に座る妻から軽く肘を突かれ、ノスタリス子爵はそこでようやく我に返った。


 メラニン侯爵家と婚約破棄すると同時に縁を切れることが嬉しすぎて、つい感傷に浸りすぎてしまったようだ。


 場を仕切り直すように一度咳払いをした後、彼は堂々とした声で会話の口火を切った。


「このたびは、いきなり婚約破棄の書状を貴家に送りつけるような無礼な真似をして、誠に申し訳なかった」










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