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卒業式のプロポーズ  作者: てけてけ
エピローグ
96/114

終わりの見えない世界をどう生きる?

――5年後――


「カケル。優一の親父、無期懲役が決まったらしいぜ」

「そっか。こんな事を言うと、他人事みたいだけど……柳木くん家族も大変だね」


 柳木病院での事件から5年の月日が流れた。

 大地()とカケルは情報機関のどこかの研究所の休憩室でご飯を食べている。


「優一の親父、もともと精神病院から抜け出したんだろ? 確か精神に何か異常がある場合は刑が軽くなるって聞いたんだけどな」

「大地。法律はある程度考慮するけど、結局最後に刑を決めるのは人間だよ。過去に例外になったケースは数えきれないくらいあるのがその証拠さ」

「そういうもんなのか」


 俺はカレーを一口食べる。


 優一から聞いた話によると、柳木病院での事件のあと、優一の親父と母親は離婚したそうだ。あの親父が人を殺した事をきっかけに母親は一気に疲れたんだとか。あの親父にさんざん振り回された挙句、あれだけの事件を起こしてしまったんだ。誰だって疲れるだろうよ。優一の母親は今までよく耐えていたよな。そこは子供を持つ母親だからなのかな……


「あ、大地。明日から紛争地域に潜入するから小型時限爆弾の用意しといて」

「わかった。万全の状態にしてあとで渡すよ」

「大地の時限爆弾、ボタンを押下してから爆発するまでの時差がほとんどないから助かってるよ。時差がほとんどないって、本当にすごいよね」


 カケルはサラダをムシャムシャと食べる。


――


「大地兄さん」


 俺とカケルは情報機関の病室で横たわっている、妹のるりを訪ねた。

 刑務所から出たるりも、俺と同様カケルに拾われ、情報機関へ保護されたようだ。

 るりはすっかりやせ細ってしまっている。何を食べても太らない。体調が悪いわけでもないのに……


「るり。体の調子はどうだ?」

「食欲はあるんですが、もう、体中の力が入らなくて……もう、立つことすらできないんです」

「なあ、刻印の色はどうなってる?」

「赤黒いです。しかも……ほとんど黒色で……」


 るりは怯えた目をしている。もう、自分は長くない――そんな恐怖がるりの顔によく出ている。

 そんなるりを見たカケルは――


「おい、るり。悟兄さんを監禁していた頃の異常な愛からくる情熱はどこいった? 呪いの研究は少しずつだけど……進んでるよ。なぁんだ、るりの言う愛って大した事ないんだね。これじゃ悟兄さん、他の人と結婚しちゃうよ?」

「何ですって! 悟くんは私の王子様なんです! そんな事私が許しません! うきー!」


 いつものるりに戻った。

 カケルとるりは犬猿の仲のようにいつも喧嘩している。もしかして、本当は仲がいいんじゃ……?


「おおコワ。やめなよ、るり。ヤンデレの需要があるのは2次元だけであって、現実のヤンデレは洒落にならないって。ほら、王子様が恋するのは美しいお姫様だけだよ」

「な、ななな! 私はヤンデレじゃありません! カケルくんは悟くんと見た目が一緒なだけで中身はクソ雑魚ですね!」

「るりにクソ雑魚なんて言われる筋合いはないけど?」


 2人は睨み合ったあと、『ふん』と言って顔を背ける。はあ、頭が痛い。

 そういえば――喧嘩はするけど、カケルはいつもるりの病室に顔を出している。もしかして、カケルはるりの事、気になってるのかな……色々と。


「じゃあ、大地。僕は先に戻るよ」

「ああ」


――


 病室で妹のるりと2人きりだ。


「大地兄さん。カケルくんは私の事……慰めてくれてるんですよね。私は悟くんの脚を奪ったのに。どうしてでしょうか?」

「え? ああ……何でかなぁ? 本人に聞けば?」

「はあ!? 何で私があんな王子様の皮を被ったクソ雑魚に聞かなければいけなんですか? 本物の王子様の悟くんの爪の垢を直接飲ませてやりたいです」


 るりぃ……なんて辛辣な言葉を……

 もしかして恥ずかしいのか。るりは頬を赤くしているように見える。


「ま、まあ……私は最後まで諦めるつもりはありません! 王子様のもとに帰るまでは!」


 るりは元気を取り戻したようだ。カケルのおかげだな。俺1人だけではここまで元気にならないからな。

 終わりの見えない世界の中、るりらしく元気に生きていてほしい。それが俺の願いだ。

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