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バーで水を飲む

――10月31日、金曜日――


 時刻は夜7時30分。『バッハバー』で宮嶋さんたちと合流した俺と金田はバーの壁際にある小さなテーブル席に向かう。

 俺から見て、宮嶋さんの友達と金田の順で隣同士、そして俺と宮嶋さんが隣同士で座る。俺と宮嶋さんの友人、金田と宮嶋さんが向かい合う。


 ちなみに、香澄には友達と飲んでくると連絡しておいた――が、香澄も今日、桃園と飲みに行くと言っていた。デパートでの再会で、2人は連絡先を交換したらしい。


「はいはい、お姉さん方! 今日の出会いを祝してカンパーイ!」


「……乾杯」


「おいおい、柳木ぃ。ノリ悪いぞ。しかも何でお前だけ水なんだよ」


「別にいいだろ。今日は水が飲みたいんだ」


「柳木くん。金田くんの言う通りよ。今日は気が済むまで飲みましょうよ」


 俺は細々と水を飲んでいると、頬を紅く染めた宮嶋さんが豊満な体を俺に寄せる――が、俺は右ひじで宮嶋さんの体を小突いた。ついでに金田の様子を見ると、金田は宮嶋さんの友人と楽しそうに話している。金田め……あとでラーメン奢らせてやるからな。


「柳木くん。どうして、私を見ないの?話してくれないの?」


 俺は見逃さなかった。宮嶋さんの手が俺のももを触ろうとしているところを。俺は心の中で舌打ちをしたあと、宮嶋さんの手を払い除けた。


「柳木くん?」


 俺は宮嶋さんに鋭い視線を向ける。


「宮嶋さん。ここキャバクラじゃないでしょ。それに、俺は宮嶋さんの事好きじゃないし、俺に近づくなって何回も言ってるじゃないですか」


「好きじゃなくてもいいのよ! 私は柳木くんが欲しいの」


 話にならん。好きじゃなくてもいいから欲しいなんて考えは、危険だ。下手に関係を持ってしまうと、宮嶋さんの欲が増えるだけだ。

 やっぱり、香澄の事、話さないとダメか。俺は口を開きかけると――



「柊センセイ。このバー、雰囲気いいんですよぉ♡」


「あら、桃園さんって色々知ってるのね。まあ、お洒落なお店!」



 聞き覚えのある声を聞いた俺は、声の方向を見る。


「んな!?」


 俺は思わず、間抜けな声をあげてしまった。


「あら?」


「どうしたんですか? 柊センセ……あ!」


 香澄と桃園。何故ここに? 香澄と桃園は俺を見て、驚嘆した。桃園は、俺と……宮嶋さんを見た後、俺たちに近づいてきた。


「柳木センパイと宮嶋さん? ついでに金田センパイ。どーして皆さん、こんな所にいるんですかぁ!?」


「あらぁ、桃園さん。お久しぶりね。相変わらず頭が悪そうで安心したわ」


「ふふふ。宮嶋さんこそ。相変わらずのタレ乳とデカ尻のおばさん体型で安心しましたぁ♡」


 桃園と宮嶋さんは、俺の元カノと浮気相手。2人はお互い認識があった。当然、仲は悪い。全部、俺が悪いのだが……


「あんれー!? 麻由ちゃんと香澄ちゃんじゃないですか!? どうしてここに?」


 金田は、香澄と桃園に笑顔で手を振る。何だかややこしくなってきた。

 金田と桃園は一応、知り合いである。俺と桃園が知り合ったのは、金田からの紹介であった。


「そーだ! アタシたちもご一緒させてくださいね♡」


「ちょっと、勝手に決めないで! 私は柳木くんと……」


「えー? いーじゃん。麻由ちゃんも香澄ちゃんも一緒に飲もうぜ。な? 柳木」


「……どうぞ。ご勝手に」


 やかましくなってきた。まあ、桃園が来て助かったかも。

俺は水を飲み干した。

 桃園は店員さんを呼ぶと、4人掛けのテーブルに更に2人掛けのテーブルをくっつける。


「ハイ。柊センセイはぁ、柳木センパイの隣ね♡」


「え?」


 桃園は香澄を俺の隣に座らせ、そして宮嶋さんの友人の隣には桃園が座る。


「香澄ちゃん。久しぶり」


 金田が香澄に話しかける。香澄と宮嶋さんの友人が置いてけぼりなのを、金田はフォローしようとしている。


「金田くん。久しぶりね。元気そうで良かった」


 ここで宮嶋さんが香澄に話しかける。


「桃園さんが柊先生と言ってましたね。もしかして……」


「はい。桃園さんと金田くんに柳木くん。全て同じ高校で私の生徒たちです」


 香澄は笑顔で答えた。


「あの……宮嶋さんは桃園さんたちのお友達でしょうか?」


「いいえ。私は柳木くんの元浮気相手ですわ。今、彼女になれるようにアプローチ中よ」


 ブー! 俺は水を噴き出す。


「やだ! 柳木センパイきったない!」


「す、すまん……」


 宮嶋さんめぇーー! 香澄に何という事を……さすがにこれ以上は許さん!


「あの、宮嶋さん。柳木くんは、難しいと思います」


 俺は香澄に視線を向けると、香澄は穏やかな表情をしている。一体何を話すんだろうか?


「どういう事かしら?」


 宮嶋さんは香澄を睨みつける。香澄に対する鋭い視線が俺にも伝わってくる。もし、宮嶋さんが香澄にひどい事をするようなら、俺が止めないと。


「柳木くんは、高校の時……陰でやんちゃな事ばかりして、手がつけられない生徒でした。それは家庭がうまくいってない事情があって……愛情に飢えていたんです。だから柳木くんが今一番に欲してるのは異性の愛でなく、家族の愛だと思います」


 香澄が宮嶋さんに話した内容は――俺の本質だ。



「ハイ。そーゆー事なんですよぉ。宮嶋さん。だから柳木センパイは諦めてくださいね♡」


 何がそーゆー事だ。桃園は俺の事よく知らないだろうが。

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