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佐々本家の人々。そして幼馴染。

 俺は佐々本(ささもと) 大地(だいち)。大学2年。

俺は漁師の町で生まれ育った。この町の人々は皆仲が良く、全員が幼馴染であったと言っても過言ではない。


 なおこの町は、俺の通っていた高校・現在通っている大学から少し遠い。


――9月――


 大学はまだ夏休み。

 夕方、俺は実家に戻った。実家は、2階建の一軒家で外壁はだいぶ錆びている。潮風の影響かもしれない。家の裏には大きな空き地があり、子供たちの遊び場となっている。


「ただいま」


 俺は錆びてオンボロになった横開きのドアをガラガラ開ける。


「あは、おかえりぃ〜、大地」


 最初に出迎えたのは兄の啓太(けいた)24歳。現在は漁師をしている。たくましい筋肉と日焼けした肌が、海の仕事の厳しさを物語っている。

 兄貴は結婚していて奥さんも同居しているが、現在妊娠中で実家へ帰省中だとか。

 ていうか、兄貴……酒くさ……既に酔っ払いだ。


「お帰りなさいませ。大地兄さん」


 次は妹のるり。15歳。現在は高校1年。おさげが特徴的なごく一般的な女子高生だ。小さい頃から本が好きで趣味は読書という、根っからの文学少女である。


 俺は2階にある自分の部屋に荷物を置くと、1階の居間に向かう。大きな長方形の食卓の上に魚介類のおかずがたくさん並んでいる。

 そして家族全員が揃う。


「……おお、相変わらずの魚介類パーティー」


「おかえりなさい、大ちゃんが帰ってくると賑やかね」


 俺の母さん、聡美(さとみ)。少しぽっちゃり型でおっとりしているが、地元で食堂を切り盛りしているしっかり者だ。


「おう、大地か。待ってたぞ」


 親父の正蔵(しょうぞう)。兄貴と同じく漁師をしている。体格や肌色も兄貴と同じだ。酒にはめっぽう強い。最近の悩みは髪が薄くなっていること。


 俺の家族構成は3人兄妹の5人家族である。


「「いっただきまーす!」」


 家族全員でいただきますを終えると、それぞれの箸がおかずを取り合う。


「そういえば大地兄さん、紹介したい女性がいるって言ってませんでしたか?」


 るりがご飯を黙々と食べながら、俺に問う。


「おお! そういえば言ってたね〜。いつ来るんだっけ〜?」


「土曜……明日の昼かな。平日は仕事で忙しいから」


 そう、明日、香澄が俺の実家にくるのだ。俺も明日一緒に行く、と言ったのだが――家族だけの団欒も大事だから、と言われ俺だけ先に帰ってきたのだ。


「大地にもついに運命の相手が現れたワケだ! めでたい!」


 酔っ払い親父がガハガハ笑う。


「なあ、母さん。若い頃を思い出すよなぁ」


「もう、信じられないですよ。私が食堂で仕事している最中にいきなり『結婚してください!』て言うんですもの」


「母さんを一目見た瞬間に雷走ったんだから、しょうがないだろ」


 また始まった……酔っ払い親父のデレデレ話。何回も聞いたわ。


「しかし、大ちゃんも罪な男ねぇ」


「そうだよ〜。紗英(さえ)ちゃん、大地が帰ってくるのを楽しみにしていたのにね〜」


 母さんと酔っ払い兄貴が突然、おかしな事を言いだす。


「え? 紗英が?」


 紗英は、俺の幼馴染のうちの1人である。太陽のように明るい女の子だった彼女はいつも人気者であった。紗英とはよく遊んだり、喧嘩したり――しまいにゃ、紗英を泣かせていた。


「私は大地兄さんの運命のお相手が、紗英さんじゃなくて良かったと思います」


 我が妹の発言で辺りは静まり返る。


「紗枝さんは乱暴者ですから……自己主張を勝手に押し付けるわ、蹴るわ、叩くわ、都合が悪くなると泣くわ――あげたらキリありません」


 るりの辛辣な言葉の数々に俺たちは戸惑う。


「るり、それは違うだろ。紗英は自己主張を押し付けてるのではなくて、ただ自分の意見を言ってるだけだし、蹴ったり叩いたりするのは――本気でやってるワケではなくて、紗英なりのコミュニケーションじゃないか」


「それに紗英が泣くのは……ほとんど俺が悪かったし……」


 俺はるりに注意する。


「そうよ、るりちゃん。昔は皆仲良く遊んでたじゃないの。お父さんも何か言ってください!」


「え!? ああ、その……いつかは収まるところに収まるだろ」


「まあ! お父さん!」


「ひぃぃ! 母さん! そんなに怒らないで! 母さんに嫌われたら、俺……生きていけないよぉぉぉおおお!」


 親父は母さんに泣きついた。はあ、なんてダメ親父……


「大地兄さん。もし兄さんが紗枝さんと結婚したら、私、大地兄さんとは一生口聞きません」


「えぇぇ!? そんな……」


 かわいい妹からのキツイ言葉に、俺はショックを隠しきれなかった。


 るりと紗英は、小さい頃はそれなりに仲良く遊んでいたが、俺が高校生の頃には既に亀裂が入っていた――というより、るりが一方的に亀裂を作った――そう言った方が正しいのかもしれない。

 何故こうなったのか……俺にはわからないし、紗英にもわからないらしい。


 るりは子供の頃から本を読むのが好きで、自分から外で遊ぶタイプではない。だから、俺は幼いるりを裏の空き地に連れて、友達と一緒に遊ばせた。

 明るい紗英と内気なるりは波長が合わないのかもしれない――とはいえ、るりの紗英に対する悪態はあまりにも度が過ぎている。俺は、るりが心配になった。

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