第77話 バビロニアの戦車と白い戦象
龍永初のアジア杯に挑みます
いよいよ開幕したアジア杯グループリーグ初戦イラク戦。今大会はなんと言ってもホームの日本開催である。ここナショナル・スタジアムは超満員。おなじみの青いゴミ袋を地元日本のサポーターがぶんぶん回す。スターティングメンバーは
1番GK佐藤、2番DF杉山、3番DF池田、16番DF下川、17番DF小林、6番MF岡野海、8番MF前田、15番MF青木、10番FW工藤、11番FW中西、21番CF出浦。
控えメンバーは
12番GK西久保、23番GK戸島(ガンツ大阪)、4番DF結城(ASミラン)、5番DF簑口、22番DF田中、26番DFチェイス(RVザルツブルグ)、27番DF石井、7番MF桑原、13番MF岡野航(ASミラン)、14番阿部、19番MF村井、20番MF水本、25番MF 大野、28番MF佐々木、9番FW京谷、18番FW式田、24番FW 益山歩。
そして、選手入場時、アンセムの前に「アメイジング・グレイス」を合唱する日本サポーター。
「共にー、歩もー!このとーきーをー!決してー!忘れぬ、おーもーいー!熱きー!血潮をー!持ちたーたかえー、オーオーオー!出浦ー!龍永ー!」
約8万人の日本サポーターが龍永のチャントを大合唱していた。龍永は
「ようやく来たんだ。俺の時代が・・・このキャプテンマークがある限り俺は何処の誰にも負けねー。」
と呟いていた。
そして試合開始のホイッスルがなると、イラクイレブンは案の定ゴール前をガチガチに固めていたが、日本イレブンは丁寧にパスを繋いでいると龍永が中盤に下がりボールを受けるやいなや、スイッチした工藤が前でタメを作り龍永へ落とすと、そのボールをダイレクトシュート。前半1分40秒、矢のようなシュートがイラクゴールへ突き刺さる。龍永は
「・・・やっぱり監督の言う通りだった。俺は何も考えないで簡単にシュートまで行けた・・・」
と自信を持ち
「前半でハットトリック決めてやる!イメージが完全に出来上がった!どんなボールでもいい。俺によこしてくれ!」
と粋がるが工藤に
「油断してっと怪我すんぞ!この大会はオメーがキャプテンなんだからな!」
と釘を刺すも、前半12分、25分と立て続けにゴールを決め、たった25分で早くもハットトリック達成にナショナル・スタジアムは大熱狂。
「ヤーヤーヤヤー!さあ行ーけ龍永ー!奴ーらーのゴール揺らーせえ!勝利つかーもーおおー!」
この日はスタンド最前列で観ていた京香も
「龍永!もっと取んなさい!お父さんも観てるからね!」
と父、敬助の来ていたレプリカユニフォームを着て声援を送っていた。
「・・・母ちゃん。そのユニフォームGKのやつじゃん。」
と突っ込みたくなったが、前半終了間際にもう1点決め、前半だけで4得点を決める。だが、山中監督は
「あくまで完膚なきまでだからな!後半も点決めろ!DF陣は0点に抑えろ!」
とロッカールームで鼓舞すると、龍永も
「後半確実に当たりが激しくなるぞ!ディフェンスも前で奪うぞ!ハイプレスしっかり!気を引き締めよう。まだ4点しか取ってねーんだ!後半は他にも回すからな!」
と締めて後半に臨むと、後半立ち上がりにイラクが前に出て来た。バビロニアの戦車が丸ごと前に出て来ており、この戦車が備えているキャノン砲のようなミドルシュートを下川が大きく左サイドへトラップパス。龍永は
「おお!ウチのクライファーツがやってたやつじゃねーか!」
と感心していると、そのボールを拾った中西がドリブルからのシュートで5点目、更に22分にハイプレスで難なく奪った工藤が自ら加点し、ここで龍永と点を決めた2人がベンチへ下がる。すると代わって入った京谷が決めて7-0。イラクは完全に戦意を喪失してしまった。バビロニアの戦車は極東の地で沼にはまり傾いて動けなくなった。
続く第2戦タイ戦のスターティングメンバーは11人全員入れ替え
12番GK西久保、27番DF石井、22番DF田中、26番DFチェイス(RVザルツブルグ)、4番DF結城(ASミラン)、19番MF村井、7番MF桑原、13番MF岡野航(ASミラン)、14番FW阿部、24番FW 益山歩、9番京谷。
控えメンバーは
1番GK佐藤、23番GK戸島(ガンツ大阪)、2番DF杉山、3番DF池田、5番DF簑口、16番DF下川、17番DF小林、6番MF岡野海、8番MF前田、15番MF青木、10番MF工藤、11番MF中西、20番MF水本、25番MF 大野、28番MF佐々木、、18番FW式田、21番FW出浦。
この采配にタイ側は
「俺達を舐めてんのか?!」
と頭に来ていたが、前半だけで大量5失点しており
「・・・何なんだよ?出浦と工藤がベンチにいるのにこの強さは・・・」
と顔を青ざめている後半早々、 益山歩のゴールで更に加点した所で龍永、工藤、中西が同時に出て来ると
「これからこいつらが出て来るのか?もう勘弁してくれ!」
と呟くタイイレブンに対し龍永は
「これはあくまでもサッカーだ。ムエタイ使うんじゃねーぞ?」
と睨み付ける。すると、代わって入ったばかりの龍永に対し、アユタヤの白い戦象達が猛然と襲いかかるも、龍永が相手DFを背負いながらもシュート。早速ゴールを決めると、後半30分には左サイド中西が強烈なシュートをゴール前に放ったボールを龍永が柔らかいタッチでプッシュ。早くも2点を決めると
「出浦!ハットトリックだ!狙え!」
と長尾スタジアムの日本サポーターは大熱狂。後半終了間際、タイがパワープレーを敢行する。長い鼻と鋭い牙が日本ゴールを急襲するが、西久保のファインセーブを田中がすかさず拾い、簡単にロングフィード。このボールに反応した龍永がマンマークに付いていたDFと相手GKの間にある中途半端なスペースへ浮き球で落とすと自らダッシュ。加速を付けながら自分の鍛え抜かれた背筋を信じ、ペナルティエリア外から強烈なシュート。交代出場ながらハットトリックを達成。一目散に山中監督の元へ走って行くと
「監督の言う通り、自分の背中を信じたら迷いなく振り抜けました!」
と大興奮で抱きつく。山中監督は
「あれでいいんだ!今のゴールはちゃんとDF陣を信じて決められたいいゴールだったぞ!守ったあいつらに感謝しろよ!」
と鼓舞し、再び送り出す。ここでメンバーチェンジ。その龍永に代わり式田を投入。グループステージとはいえ結果を出した龍永を再び温存する。
その2分後タイムアップ。8-0。日本は圧倒的な強さで早くもグループステージ突破を決めた。勝利者インタビューで龍永は
「この大会、このメンバーだからこそ僕はゴールを決められている。今までとは違った意味で仲間を信頼出来ている。その事をこのアジアカップ優勝で証明して見せます。次こそ絶対ワールドカップをこの日本に取り返してきます。」
と力強く述べた。インタビュアーは
「それは今回キャプテンを任されたからでしょうか?」
と尋ねると龍永は
「それもあります。かといって自分が自分が!という感覚とは違うと思います。あくまでチーム一丸になっているからこそもっと行けると思っています。次の試合も期待して下さい!」
と締めくくった。龍永はこのアジア杯の間に真大神ゾーンを完全にマスターしようと個人的に思っていた。今現在龍永は26歳。次のワールドカップはピークを過ぎているかもしれない。だからこそこのアジア杯に賭けていたのだった。
ワールドカップ決勝でPKを外した龍永にとって、もう負けは許されない思いで書いています




