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第72話 ニホンオオカミ親子への積年の恨み

長年の時を経て遂にイタリアと戦います

「ケイスケ。悪いがお前の息子は俺達が叩かせてもらう。」


 イタリア戦前、イタリア代表監督のジラルディーニが日本戦についてコメントする。イタリアはジラルディーニの下で4大会振りの出場で準決勝まで勝ち進んだ。龍永にとって馴染みの選手達がこぞって出場。バルセロスでのチームメイト、マルケディーニとキエリーザもスタメンを連ねる。監督は父、敬助の盟友ジラルディーニ。彼は日本代表に借りがある。アクロポリス五輪で元祖ニホンオオカミ大神敬助にことごとく弄ばれた過去があった。あれからもう26年の月日が経っていた。そして、敬助が最後に所属していたイタリアのフィレンターナで当時エースだったのもジラルディーニである。まさに


「ニホンオオカミ親子への積年の恨み」


を果たそうとしていた。だが、一方日本代表の太田監督は


「龍永、明日の試合はベンチスタートだ。」


すると、他のメンバーから


「どうしてですか?龍永は得点ランクトップですよ?それにあっちは龍永を徹底マークしてくるに違いない。こいつに戦わずして逃げろって言うんですか?」


と一同困惑するも、太田監督が


「そこだ。イタリアはおそらく龍永を密着マークしてくるだろう。だから後半から出すんだ。」


「前半にイタリアDF陣を徹底的にバテさせろ。龍永なら45分あればハットトリック出来る。別に龍永を待てとは言わない。前半でお前らが点取っても全然構わない。相手もDF同士なら交代しずらいだろ? 」


それを聞いた龍永や他のメンバーは


「そうか。その手があったか!確かに龍永は後半から点を取る確率が高い。前回も前半はベンチからだったな。」


龍永も


「俺はそれで構いません。それにしても流石監督っすね。ちゃんと冷静に見てくれている。俺もその方がやりやすいっすよ。向こうはバルセロスやフベントルスでやってた連中がいて手の内はバレてると思いますから。」


と采配を受け入れた。更に先のイングランド戦でパサーだった前田がレッドカードをもらい、今大会出場出来ない。むしろ難題はそこだった。指名されたのは岡野航。


「青木はユーティリティーだから有事に備えたい。田嶋も後半バテている時に取っておきたい。やってくれるな。」


と声がかかり


「やります!」


と張り切る岡野航。兄岡野海と揃って先発である。更に岡野航はイタリア・リーグで奮闘しているので、相性がいいのでは?という意図を持っていた。


 舞台はスペイン、サンティエゴ・ベルナベル。龍永達バルセロスのライバルリアル・マドレーの本拠地だ。スターティングメンバーは


1番GK佐藤(アストン・ブル)、2番DF 杉山(カリアーニ)、16番DF下川(ZAアルクマール)、22番DF田中(フベントルス)、26番DF小林(フレンクフルト)、14番MF岡野航(ASミラン)、6番MF岡野海(リバプレト)、10番MF越後(フレンクフルト)、11番FW工藤(アトレティック・マドレー)、18番CF内田(AS ミラン)、13番FW中西(リオン)


控えメンバーは12番GK西久保(パルム)、23番GK宮澤(エンペロープ)、3番DF池田(バイエリン)、4番DF阪倉(ドルトミュンスター)、5番DF鳥海(クリストパレス)、25番DF結城(AS ミラン)、7番MF三浦(ブライアン)、9番MF桑原(フライブルゲン)、15番MF青木(フベントルス)、17番MF田嶋(リッズ)、24番MF阿部(バレンシアーノ)、19番FW椎原(ヴォルフガンク)、20番FW斎藤(フライブルゲン)、21番FW出浦(バルセロス)


この日本のスターティングメンバーを見てイタリアや日本サポーターは


「出浦がベンチ?」

「今得点王だぞ?」

「怪我でもしたのか?」

「日本は我々を舐めてるのか?」


と疑っているが、龍永は


「馬鹿が!舐めてんのはそっちだろーが!」


とベンチで呟いていた。


 日本ボールでキックオフ。先ずは岡野航にボールに慣れさせる為に戻すと、いきなりプレッシャーをかけてきた中盤のトナーレとマルケディーニ。だが、隣で兄の岡野海が


「無理するな!先ずはパス回せ!」


と散らすと、隠れていたロマーニがカット。そのまま前方のモイーゼに送ると、これをキーパー佐藤がダイレクトで空いたスペースへ送ると、内田のポストプレーから抜け出した工藤がシュート。イタリアのキーパー、ドンナルマがセーブすると、日本のコーナーキック。工藤が内田に合わせると、内田はバックヘッドで後方に流す。すると越後がダイレクトシュート。枠に逸れると、ドンナルマのゴールキックを岡野海が直接弾きかえし日本のショートカウンター。中西が抜け出しシュートするも、またもやドンナルマに弾かれカラビオレが拾うと


「それだ!奪え!」


と太田監督から指示が飛び、工藤と内田で奪いに行くと


「こっちだ!」


とマルケディーニが下がって受けると龍永が


「コースを切れ!そいつはダイレクトで捌くぞ!」


と杉山と越後が対処し簡単にパスを出させない。


 前半も30分が経過し、イタリア陣内でボールが回っていると、岡野航がワントラップ。その瞬間に日本の両CB下川と田中が岡野航を追い越すと、イタリア監督ジラルディーニが


「マズい!ワイバーン来るぞ!ゴール前からかき出せ!」


と指示が送られるが


(馬鹿が!もう遅い!)


と言わんばかりに日本怒涛の攻撃がイタリアペナルティエリア内で繰り広げられる。内田のシュートをドンナルマが弾けば工藤がシュート。ディマウロがクリアすると田中がブロックしてエリアに戻すと、オーバーラップした小林がシュート。これもブロックされるが、越後が身体ごと突っ込んだダイビングヘッドをマンティーニが間髪クリア。それでも下川がまたもやブロックすると、中西がシュート。ゴールポストを大きく叩くが、これを岡野海がシュート。またもやバストーネがラインを割り一旦ゲームを切る。


 日本は素早いリスタート。越後、内田、中西、杉山、工藤、また内田と立て続けにイタリアゴールを襲うもゴールを割れず前半を終了する。イタリアDF 陣は早くも肩で息をしており、それを確認した日本代表はしてやったりの表情でロッカールームに引き上げる。


 ロッカールームで太田監督は


「上場だ。だがまだ龍永は出さない。せっかくリズムに乗ってるんだ。龍永を出すまで1点取ってみせろ。」


とメンバー交代をせずに後半に望む。


 後半龍永のチームメイト、キエリーザが投入されると、立ち上がりからイタリアが猛攻を仕掛ける。


「ワイバーンはイタリアの専売特許だ!」


と言わんばかりに今度は日本ゴール前に釘付けにされると、後半12分、右サイドから交代で入ったキエリーザがゴール。先制点を献上してしまう。


 ここで日本がメンバーチェンジ。内田に代わり青木、岡野航に代わり三浦、そして中西に代わり龍永が投入される。この時龍永は青木に


「キックオフのボールを渡すから、相手DF とキーパーの間のスペースに素早く出してください。すぐ同点にします。」


と注文していた。すると、試合再開の直後、センターサークルギリギリで構えていた青木が大きく直接フィードを送る。カラビオレが拾おうとするボールに龍永が


「チョン。」


と右脚を伸ばしカラビオレの目の前からボールを浮かせたと同時に強烈なシュート。キーパーのドンナルマが反応するが、その手を弾き同点に追い付く。この時、イタリアDF陣は既に膝がガクガクよろめいていた。


「前半の頑張りが効いている。叩くなら今だ!」


と太田監督から指示が飛び、交代した内田、中西、岡野航からも


「俺達がお膳立てしてやったんだ!ぜってー勝って戻って来い!」


「相手は脚にキテるぞ!」


「三浦と工藤が残ってんだ!横も使え!」


と檄を飛ばす。


 イタリアボールで試合再開すると、日本のハイプレスが生き生きと走り出す。後ろで田中が


「新大神ゾーンだ!今こそ使え!龍永!後ろは任せろ!」


と指示が飛ぶ。


(あの普段ボケーっとしている田中さんが?)


と笑っていると、横からバストーネとマルケディーニが挟みこむ。だが龍永は


(今の俺は撃ちゃ入るんだよ!)


と2人を快速で出し抜きシュート。ボールはキーパーのドンナルマが上へかするが、そのままゴール上へ突き刺さり、日本が逆転に成功する。イタリアベンチで


「ケイスケ?お前があの小僧に乗り移っているとでもいうのか?さっきも今も、まるであのアクロポリス五輪の時のお前のように、「ここだ!」と言わんばかりにスペースを突きやがる・・・これがお前が息子に残したニホンオオカミのDNAなのか? 」


と脱帽している。だが龍永は


「あと3点」


とブツブツ言いながらボールを持って行こうとするも、マルケディーニに横取りされ


「それはこっちの台詞だ!あと3点取るのは俺達だ!」


と龍永からボールを奪い返しセットすると


「早くしろ!あと3点決めるのは俺達だ!」


と檄を飛ばした。客席で観ていたマルケディーニの父と祖父は


「あいつも言うようになったじゃねーか!」


「あいつもニホンオオカミに狂犬病を移されたクチだからな。」


と見守っている。工藤は


「ここからだ!ここの差で決まるんだ!気を抜くな!」


と鼓舞すると、日本のメンバーチェンジ。越後に代わり桑原、岡野海に代わり田嶋が投入される。攻撃は上手くいっている。残りは中盤を制した方が勝つ。特にマルケディーニが効いているから田嶋と青木で潰せと指示が送られた。


 残り時間はあと9分。一進一退のまま後半が過ぎていく。おそらく次のボールをキープし制した方が勝つだろう。フィールド中央でルーズに跳ね上がったボールを青木とマルケディーニが競り、軍配はマルケディーニに上がったが、そのマルケディーニが青木を倒したとしてイエローカードが提示される。


 すると、田嶋が素早く左サイドの三浦へパス。その三浦はドリブルを仕掛けずダイレクトでキーパーのドンナルマとDF のカラビオレ、バストーネの間のスペースへパス。そこに龍永が物凄いスピードでボールに追い付くと、勢いそのままにドンナルマをスピードで抜く。がら空きになったゴールまで一直線に走った龍永が、ゴールラインの上で失速し後ろに振り向き、抜き去ったドンナルマとイタリアDF陣を見ながら軽いヒールキックで


「トン・・・」


と静かにイタリアゴールに蹴り、3-1と突き放す。龍永の今大会4度目のハットトリック炸裂は静かなものだった。


 そしてアディショナルタイム6分を守り抜き、日本は2大会連続決勝進出。龍永は得点を3点伸ばし、現在14点。決勝でハットトリックを決めれば前回と同じ17得点に並ぶ事となった。


 点を決めながら負けたキエリーザと、天を仰ぐマルケディーニに龍永は


「今大会で一番強かったのはお前らだ。こないだのイングランドみてーにガチで来ない奴等ばっかりでよ?さっきのお前みてーにガチで熱いバトル仕掛けたのはマルケディーニ、お前らだけだった。次の大会でまたやろう。」


と労いユニフォームを渡す。マルケディーニも涙を拭き、無理に笑いながら


「・・・ちきしょー!今回は譲ってやるがな?次のお前らはスペインだぞ!ぜってー勝てよ!」


とハグをする。ジラルディーニも龍永に駆け寄り


「全くニホンオオカミってのは親子揃ってどうも嗅覚が優れているな。でも次は必ず勝たせてもらう!」


と龍永を称えた。


 遂に2大会連続で決勝まで辿り着いた日本代表。決勝の舞台はリアル・ベティンスの本拠地ベニト・ビジャマリナ。龍永と、スペイン代表をごっそり揃えるバルセロスが相まみえる。

ワールドカップ3回も逃すと選手の名前もわからなくなってしまいますね。

次回こそイタリアに出て欲しいのは私だけでしょうか?

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