第67話 新生ニホンオオカミ吠える
日本代表が全員ニホンオオカミへと覚醒していきます
激戦の末初戦のノルウェー戦を制した日本代表は、第2節のルーマニア戦を迎える。相手の10番はバルセロスで共にプレーするハジムである。
「お前が10番かよ?!」
と驚く龍永だったが、前大会同様日本は2戦目が弱い。油断ならない相手である。ルーマニア人は、かつて繁栄したローマ帝国の末裔達である。そんなローマ帝国の末裔達は今から40年前は全盛期であったが、以降は低迷。36年振りのワールドカップに国民は燃えていた。
今日の先発メンバーは
1番GK佐藤、2番DF杉山、4番DF阪倉、16番DF下川(ZAアルクマール)、26番DF小林、6番MF岡野海、8番MF前田、17番MF田嶋、11番FW工藤、13番FW中西、21番CF出浦
控えメンバーは12番GK西久保、23番GK宮澤、3番DF池田、5番DF鳥海、22番DF田中、25番DF結城(ASミラン)、7番MF三浦、10番MF越後、9番MF桑原、15番MF青木、24番MF阿部、14番MF岡野航(ASミラン)、、19番FW 椎原、18番FW内田(ASミラン)、20番FW斎藤
怪我をした池田の代わりに右サイドのスペシャリスト、杉山を入れる超攻撃的布陣。会場はスペインからモロッコ、カサブランカに移り、試合に臨む。
日本ボールでキックオフ。すると、ルーマニアDF陣はプレスに来ない。
「・・・固めて来たか。でもあいにくその戦い方には散々慣れてんだよ!」
じっくり回す日本は、キーパー佐藤まで戻す。ここまで戻せばルーマニアオフェンス陣が1人くらいは軽くプレッシャーをかける。若干ゴール前にスペースが空いたと佐藤がダイレクトでルーマニアゴール前までロングフィード。すると、これに反応した龍永が、ルーマニアDFを3人背負いながら胸で左サイド中西へパスし、中に切り込んでいた中西がシュート。だが、キーパーのラドが弾きコーナーキック。日本のチャンスが続く。
ゴール前には阪倉と下川がオーバーラップしている。蹴るのは工藤。このコーナーキックを工藤は直接ゴールにカーブのかかったシュートを狙うも、ゴールバーに当たり弾かれる。セカンドボールを拾おうとルーマニアDFドラグシュとストラトが前線に繋ごうと前方へ出すと、岡野海があっという間にボールをかっさらう。そのまま加速を付けてゴール前までたどり着くと、ゴール前で身体を張っていた龍永とのワンツーでキーパーと1対1。勢い任せにシュートし先制点を奪う。
以降はルーマニアの固いブロックを崩しきれず前半を1-0で終える。
ハーフタイムで
「あいつら守りは固いけど、攻撃はそうでもないぞ。」
「右サイド穴だな。よし、鳥海を入れて右から崩すぞ。怪我は大丈夫か?」
と鳥海は
「ハーフタイムなら大丈夫。俺は恐らくこの大会が最後だから思いっきり行く。」
この鳥海の言葉は、選手の半分くらいがぐっと来た。鳥海だけではなく、三浦や越後、田嶋に阪倉等の30歳オーバーのベテランはこの大会が最後という覚悟を持っていた。
後半立ち上がり、杉山に代わり鳥海。プロになってから怪我で戦列を離れまくっていたこの男の覚悟は本物だった。ルーマニアボールで後半スタートすると、右サイドバックに入った鳥海がCFの龍永を追い越し、ボールをかっさらおうとする。たまらずキーパーまで下げるルーマニアだったが、龍永と工藤はそれを狙っていた。龍永がこのバックパスをスライディングでカットし、真横を走る工藤へパス。すると工藤がワントラップして落ち着いてシュート。追加点を挙げる。ここで工藤が
「ここから集中するぞ!2点差が一番危ねーんだ!」
と檄を入れる。
ここで日本ベンチが動く。後半15分、献身的な守備で貢献していたセンターハーフの2人田嶋、岡野海に代わり攻撃の越後、三浦を投入。そのままセンターハーフに入り一気にたたみかける。すると、早速試合が動く。ルーマニアがショートパスを回していると、ハジムのパスを越後が強奪。左サイドの中西へ大きくパス。オフサイドラインギリギリでボールを受けると、外側を追い越した三浦へパス。得意のドリブルでゴール前まで運ぶと、そのままシュート。相手DFラビウが辛うじて触ると、今度は同じ左サイドバックの小林がシュート。これはストラトがヘッドで逆サイドへクリアするが、このポケットに走り込んだ鳥海がゴール前へダイレクトで戻す。このボールを龍永とエイサートが競るが、龍永が右足裏で前方へ巻くような出浦手裏剣で交わすとキーパーと1対1。ここで龍永はインサイドキックのトラップパスで
《ポーン。バサッ》
と軽くゴールに放り込むように3点目を決める。龍永はハジムに向かって
「おい。わかってると思うけど、あと3点な。」
とボソッと呟く。ハジムは思わずたじろく。今シーズンバルセロスのレギュラーに定着している龍永と、ベンチかベンチ外が続くハジム。そんなハジムが現在はルーマニアの10番を背負い、ローマ帝国の王として君臨している。
日本は更に畳みかける。激しいハイプレスで再び越後がカット。素早くディフェンスラインを上げ、越後、中西、工藤、三浦、小林が5連続でシュートするも、固いルーマニアDF陣がことごとくブロック。だが、長身の下川、阪倉、鳥海がペナルティエリア外からボールを出さない。真田丸はこの4年間で成熟していた。下川がブロックしてゴール前へ落としたボールに龍永が向かう。前方と背後にドラグシュとストラトがドラキュラが牙を剥くかの形相でクリアにかかると、龍永は左脚を伸ばし、左のインフロントでちょんと大きく浮かせると、そのボールがキーパーの頭上を越え、ゴールの中にいたエイサートの身体ごとゴール。4-0と突き放す。ルーマニア陣営はボールを龍永に渡さずセンターラインへ置くも、ニホンオオカミ達の眼光は、未だによだれを垂らした獣のようだった。
後半32分、日本の選手交代。中西に代わり内田、工藤に代わり斎藤。龍永は左サイドへ移動。CFに内田が入り、両翼に長身のツインタワーを張らせる。ルーマニア陣営は
「こいつらまだ点取りに来る気かよ!」
と叫んでしまうが、龍永は
「オメーら、神聖ローマ帝国の末裔なんだろ?でも俺達は新生ニホンオオカミの元祖なんだよ!ドラキュラの牙完全にへし折ってやる!血を見るのはテメーらだ!」
と言い返す。そして内田に
「ガンガンボール回しますから。」
と一言呟き左サイドに張る。
このプラン2のフォーメーションは、高さのある龍永と斎藤がターゲットとなり、中央の内田、越後、三浦が飛び込む作戦である。早速アンカーの前田が右サイドの斎藤へ散らすと、斎藤はヘッドでゴール前を抜け出した内田へパス。このボールを内田がキープしてシュートするも、キーパーのラドがビッグセーブ。しかし、このボールに反応した右サイドバックの鳥海が追いつこうとすると
「左だ!今のシュートでキーパー怪我したぞ!」
と龍永がコーチング。すかさずゴール左を狙うも枠を外れる。龍永が
「ウチの内田さんのシュートの破壊力は俺より上なんだよ!」
と睨み付け、日本イレブンに
「今のシュートでキーパー手怪我したぞ!狙っていこう!」
とルーマニアイレブンを煽る。これには龍永なりの考えがある。
後半アディショナルタイム。再び前田から今度は龍永へロングフィードが送られる。内側に三浦が走り込もうとすると、龍永が
「三浦さん!ストップ!」
と咄嗟に声をかけると、ペナルティーエリア外横左サイド深くから龍永が右足でダイレクトボレー。大きくカーブを描いたこのシュートはルーマニアゴール左隅にズバッと決まる。三浦が
「はははは!4年前から成長したじゃねーか!昔だったらあのコーチング言わなかったよな?」
と褒められる。
ここでタイムアップ。5ー0。龍永は2試合連続ハットトリックの大暴れ。得点ランクはフランスのエムペパと並び6得点。名実ともに世界のエースストライカーとして名乗りを上げた試合となった。
試合終了後のインタビューで龍永は
「俺を止められんのは監督と俺の親父だけだ!俺達は新生ニホンオオカミの元祖なんだからな!」
と叫ぶ。日本イレブンは
「監督?オメーの親父はわかるけどよ?」
と話していると、選手の背後から太田監督が腕を組み、仁王立ちして睨んでいる。
「オメーら。まさか俺と対峙しようってのかね?君達、俺を舐め過ぎちゃいねーだろーよ?」
と引きつった笑顔を見せながら龍永達に威嚇する。日本イレブンは
「ヤ!ヤベー!監督キレてるよ!」
と言いながら足早に退散していった。
「あのツラ見たろ?あんなおっかねー顔したDFと対峙したくねーよ!」
と冗談を言いながらロッカールームへ引き上げる。
ロッカールームで太田監督は
「次はターンオーバー敷くからな。先は長いんだ。ぜってー油断すんじゃねーぞ!」
とベンチメンバーを見渡す。そこには、龍永の他にも試合にゴールに飢えている新生ニホンオオカミ達が両眼をギラつかせながら出番を待っていた様子が伺えた。
監督もニホンオオカミの1人として書いています




