第66話 昨日の友は今日の敵
遂に龍永2度目のワールドカップが幕を開けます
ワールドカップ地中海大会が幕を開けた。遅めのグループJで遂にディフェンディングチャンピオン日本が登場する。相手は前回のバロンドール、龍永のチームメイトであるハーラルト擁するノルウェー。この勝負は言ってみれば
「名門バルセロスのストライカー対決」
である。今大会のノルウェーは、ハーラルトの他に、ノルウェーのオオカミJr達がごっそり揃っていた。中盤のベルグ、トルストバット、CBのヘッゲム、ペデルセン、FWのセルロートとリトルオオカミJr、いや、次世代のバイキング達である。
試合前、龍永はハーラルトに
「おい!アーリー!どっちが本当のバルセロスのエースストライカーか勝負しよーじゃねーか!」
と勝負を持ちかけ睨み付ける。普段はバルセロスで仲のいいハーラルトに今にも食ってかかるような勢いだ。今日の先発メンバーは
1番GK佐藤、4番DF阪倉、3番DF池田、16番DF下川(ZAアルクマール)、26番DF小林6番MF岡野海、8番MF前田、17番MF田嶋、11番FW工藤、13番FW中西、21番CF出浦、
控えメンバーは12番GK西久保、23番GK宮澤、2番DF杉山、5番DF鳥海、22番DF田中、25番DF結城(ASミラン)、7番MF三浦、10番MF越後、9番MF桑原、15番MF青木、24番MF阿部、14番MF岡野航(ASミラン)、19番FW 椎原、18番FW内田(ASミラン)、20番FW斎藤
4-3-3のシステム。三浦と越後はジョーカーとして後半から出場する作戦である。
そして日本ボールでキックオフ。すると、直後にボールを受けた龍永がキーパーがゴール前を中途半端な位置で構えているのを確認し、センターサークル内から強烈なロングシュートをゴール右隅に狙って撃つ。キーパーのニューマンは慌ててバックステップするが、そのままゴールに突き刺さる。開始たった5秒で日本先制。龍永はハーラルトに
「俺達が先攻だ!おい!アーリー!この1点は高く付くぞ!ウチのDF陣の守りは堅いからな!」
呆気に取られるノルウェーイレブン。すかさず試合が再開され、ハーラルトが負けじとセンターサークル中央からロングシュートを放つも、龍永がこのシュートの勢いを殺し、トラップ。日本のラインが一斉に上がり、右サイドの工藤へボールが渡ると、得意のドリブルでウーデゴーア、ヴォルフを交わし中へ切り込む。CBが詰めてきた所を中央の龍永へパスするが、キーパーと見合いながら後方から走ってきた田嶋へポストプレー。前半開始12分で2-0と突き放す。
だがノルウェーもハーラルトがすかさず2点を決め、振り出しに戻す。今度は日本のパスワークが発動。ダイレクトで素早いパスがノルウェー陣内深くに押し寄せる。左サイド中西が得意のシュートを放つが、相手DFのヘッゲムが前へブロック。すると、そのこぼれ球を龍永がゴール右隅に決めて3-2と突き放す。その後も一進一退の攻防で前半を折り返す。
ロッカールームで龍永が
「ぶっちゃけハーラルトはシュート以外は俺より下手です。奴にボール渡さないようにすれば勝てます。」
太田監督は
「確かに持たれると厄介だな。で、龍永。お前ならどうする?」
「万が一ボールを持たれたら、近くの選手は全員シュートコースを消しながら飛び込んで構いません。ボール持たれてあいつと見合うよりその方が確実です。」
「それとキーパーは他の奴らが侵入したら1対1で止める準備をしてて下さい。心配しなくても仮に点取られたとしても俺が取り返しに行きますんでリスクを恐れないでやってみて下さい。」
後半はノルウェーボールでキックオフ。だが、日本は誰もハイプレスに来ない。決して守り切ろうという考えではない。ただ単にスペースを全員で潰していた。ノルウェーは後方へパスを送りボールを回していく。ノルウェーがピッチに散らばった瞬間、突然日本がゾーンプレスを仕掛ける。岡野海がカットすると、そのままドリブルで持ち込みシュート。4-2と点差を広げる。龍永はハーラルトに
「おい!マジになれよ!お前がいるチームがこんなに弱い訳ねーだろ!」
と怒鳴りつける。
再びノルウェーボールで試合再開。セルロート、ベルグ、交代出場のムサにボールが渡ると、W杯初出場の小林が粘る。だが、後方のセルロートがハーラルトにセンタリングし、ゴール前でトラップすると、龍永が
「全員飛び込め!奴はパスが下手だ!」
と言い放つ。完全にシュートコースを消されたハーラルトは後方のウーデゴーアへパス。しつこく食らいつく岡野海をいなし、ボランチのベルグまで下げると、ダイレクトでトルストバットへフィード。阪倉が弾き返すも、バブに拾われドリブル突破を許す。田嶋や下川が対応するが、手薄になったゴール前をハーラルトが待ち構える。キーパー佐藤が
「来るぞ!」
と指示を送るが、バブはそのままゴール前へ切れ込む。今度は池田が付くが、ここでハーラルトにボールが渡ると右脚一閃。日本ゴールに豪快に突き刺さりハットトリックを決められ3-3の同点にされる。
ここで日本ベンチが動く。中西に代えて三浦、田嶋に代えて越後が投入。越後は右サイドに入り、中央に工藤がずれる。すると、交代間際の隙を突かれ、ムサに逆転ゴールを決められ3-4にされる。だが龍永は
「まだ時間がある!とにかく前へ送ってくれ!」
と励ます。
日本ボールで試合再開。この交代劇で途中出場の三浦が早速得意のドリブル突破で左サイドをえぐると、マイナスにセンタリング。後方から走り込んできた前田を中継し、右サイドから中へポジションチェンジした越後が豪快なミドルシュート。キーパーのニューマンの取りづらい顔面近くを横切り、4-4の同点に追いつく。ゴール直後に龍永がボールを拾いに行き、
「あと3点」
と呟くのであった。
ここで再び日本のメンバーチェンジ。阪倉に代わり怪我明けの鳥海を投入。更に工藤に代えてFWの内田を投入。龍永はトップ下へ下がる。その直後だった。ゴール前でハーラルトにボールが渡ると、下川と鳥海がハーラルトのシュートをブロック。近くにいた池田が拾おうとすると、自ら取りに行ったハーラルトが池田に足裏を見せてスライディングタックル。このプレーでハーラルトがレッドカードを提示され1発退場。日本代表イレブンは
「一番厄介なのが消えた。」
と内心ホッとするが、内田や越後、三浦が
「おい!まだ集中を切らすな!」
と声を荒げる。池田はこのプレーで負傷退場。最後の交代カードで田中が投入される。
後半もアディショナルタイムを残すのみとなったが、ここで日本のショートカウンター。岡野海が奪ったボールを前田に預け、後方から脱兎の如くオーバーラップした鳥海がポケット内に侵入し、ボールを溜めると、右サイドから中央へ流れてきた越後へチョンと縦パス。ベルグとの競り合いで即座にダイレクトパスを内田に送ると、そのままシュート。キーパーニューマンがファインセーブし、右サイドバックのペデルセンが大きくクリアするボールをトップ下の龍永が完全に勢いを殺し右足インサイドキックでゴールに向かってトラップパス。このボールがノルウェーゴールにスッと突き刺さり、土壇場で逆転に成功。その2分後に試合終了。5-4。両エースの壮絶な撃ち合いは龍永に軍配が上がった。
龍永にとっては2大会連続初戦でのハットトリック達成に、得点王争いに大きく前進した。対するノルウェーはハーラルトが2試合の出場停止。残りのグループリーグをエースストライカー抜きで戦う羽目となる。その代償はとてつもなく大きく。ハーラルトは得点王争いから脱落することを意味していた。
試合後、龍永は退場したハーラルトとユニフォームを交換しながら、いつもの友人関係に戻っていた。
「今回は負けたけど、ウチは必ず決勝トーナメントに進むからな!そん時は必ず勝ってやる!」
「俺の方こそフルタイム出場してあんたと同じハットトリックしか決められなかったからな。あいこのようなもんだ。」
互いをリスペクトしながら別れる2人。勝利者インタビューで龍永は
「退場したハーラルトと同じ、個人で3点しか決められなかったのが悔しいです。」
と反省の弁を述べた。
北欧のバイキングを日本の忍者達が派手に倒したようなこの1戦は今大会早くもベストバウトとして取り上げられた。
試合後のロッカールームでは
「ディフェンディングチャンピオンの俺達が4点も取られた。これじゃいけない。」
と掃除と片付けをしながら皆反省していた。次戦は今大会のダークホース、久しぶりに登場のルーマニアである。長年W杯に出ていなかったので情報が乏しいが
「全部勝つ!」
とだけ共通意識が全選手に芽生えていた。
どうしても序盤にハーラルトとの対決を書きたかったので初戦にしました。他の対戦チームは完全オリジナルです




