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第65話 各国の将軍

遂に龍永2度目のワールドカップが始まります

 次のシーズン、龍永のバルセロスはスペインリーグとチャンピオンズリーグの2連覇を達成したが、国王杯でリアル・マドレーに惜敗し、三冠はならなかった。龍永は予選を早く終わらせた為、CFでフル出場が増えていったが、如何せん得点が伸び悩んでいた。サイドでこそ無双だが、まだ新大神ゾーンは今季も完成出来ずにいた。そして、バロンドールはまたもチームメイトのハーラルトに持って行かれた。龍永も最終候補に入ってはいたが、またも逃した。


 ワールドカップ予選をいち早く終わらせた日本代表は、空いた期間に各国の強豪と親善試合を行っていた。その相手は前回大会で対戦したオランダ、スウェーデン、フランス、ブラジル、アルゼンチン等で、この猛者達に一度も負けず、且つクリーンシートを連発していた。その中で龍永は代表戦では得点を量産していた。バルセロスとは違う戦い方をしていたからであり、今回は大きな故障者もなく選手は順調にワールドカップに向けて準備を進めていた。


 このワールドカップアジア最終予選に参加する各国の代表監督達は皆、かつて欧州チャンピオンズリーグを戦った精鋭達ばかりだ。ズダン、シメオニ、カルネバーレ、クライファーツ・・・だが、龍永達現代表選手達は


「ウチの監督だって強いぞ!保坂さんが仏なら、太田監督は鬼・・・」


と背後に殺気が立ち込める。


「あ?誰が鬼だって?!」


腕組みをして龍永達を睨み付け、引きつった笑顔で仁王立ちする太田監督。


「やべー!すんませんした!」


と慌てて逃げる龍永達。色黒で太い腕、キャップ帽を被り如何にも「食わせ者」のオーラを放つ我らが日本代表監督。彼は現役時代、代表キャップは少ないものの、父、敬助とJリーグで凌ぎを削ってきた猛者である。監督としても確かで、龍永達を五輪優勝に導いただけでなく、ACLを何度も制している名将である。何よりあの鋭い眼光が龍永達に


「何か面白い事を考えてる。」


という信頼感を植え付けている。今回の予選は怪我人や累積警告という波乱を乗り越え今まで乗り切っている。


 監督業とは、いわば将軍である。織田信長やナポレオン、チンギス・ハーンが監督として、龍永達選手は、そんな監督に仕えるサムライや騎士団、兵士といった所である。太田監督はいわば


「崇高な戦術を練り、領地をじっくり奪う野心を持った将軍」


といった位置づけだろうか?そして龍永達は


「将軍の期待する一隊を任された戦国武将集団」


としてそんな将軍の信頼を受けてここまでやって来た。更に今回は、前回大会で優勝させた保坂前監督が技術委員として帯同。羽生、佐久間、鷲田が家老のような立ち位置で将軍を補佐する。秋葉や武藤達代表引退した前回の優勝メンバー達も


「帯同はしないけど、現地で補佐出来る事があればやる。」


とスペインに集結することが決まっていた。


そして地中海ワールドカップのメンバーが発表される。


1番GK佐藤(アストン・ブル)、2番DF杉山(カリアーニ)、3番DF池田(バイエリン)、4番DF阪倉(ドルトミュンスター)、5番DF鳥海(アーセノル)、6番MF岡野海(リバプレト)、7番MF三浦(ブライアン)、8番前田(フベントルス)、9番MF桑原(フライブルゲン)、10番MF越後(バイエリン)、11番MF工藤(アトレティック・マドレー)、12番GK西久保(パルム)、13番MF中西(リオン)、14番MF岡野航(ASミラン)、15番MF青木(フベントルス)、16番DF下川(ZAアルクマール)、17番MF田嶋(リッズ)、18番FW内田(ASミラン)、19番FW椎原(ヴォルフガンク)、20番FW斎藤(フレンクフルト)、21番FW出浦(バルセロス)、22番DF田中(フベントルス)、23番GK宮澤(エンペロープ)、24番MF阿部(バレンシアーノ)、25番DF結城(ASミラン)、26番小林(フレンクフルト)。この26名です。


歴代初、全員が欧州組であり、チャンピオンズリーグで戦った選手がごっそり揃った。キーパーの戸島は残念ながら落選。龍永のパサディナ五輪組からは6人選出。トレーニングパートナーにAS京浜の市原と、横塚マリンズの井上が帯同。彼らは次回に備えて共に行動する。


 対戦相手だが、グループリーグ初戦で、チームメイトのハーラルト率いるノルウェー、第2戦で久しぶりの登場ルーマニア、第3戦で南アフリカ。日本代表は


「山場は全部。こっちは今回ディフェンディングチャンピオン。狙われる身だ。絶対気を抜くな!」


とキャプテン工藤を中心に1つにまとまっていた。龍永にとっては


「バイキング、ドラキュラ、ジャブラニの国」


という認識でそれぞれ


「強引に奪いに来るバイキング」


「生き血を吸い取るドラキュラ」


「20年前のあの日、勝手にもらってきたボールを返す国」


と静かに闘志を燃やしていた。そして今回は


「母ちゃんが初めて最初から観に来てくれる。」


ということで、地の利もあり


「スペインの自宅から通えるように。」


と約2ヶ月間自分の家に母がいるという事が安心感をもたらす。姉の静香は


「子供達がいるから観に行くなら学校が夏休みになってから行く。」


ということで、現地観戦はもし準決勝まで勝ち進んだらということになったが、2歳になる娘と、絵梨香の腹にいるもう1人の子供にこのスペイン、ポルトガル、モロッコと南米アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの6カ国共催という大規模のワールドカップが始まろうとしている。日本代表は幸いにも南米に行かず、地中海での試合が予定されていた。


 ワールドカップ開幕前、龍永の住むバルセロス市街地では、各国の監督達が将軍の出で立ちで高層ビル群の窓に映し出され、欧州の監督達は西洋甲冑を、アメリカ大陸の監督達はコンキスタドールの格好をしている中、我らが太田監督は鎧兜と甲冑を着た戦国大名の姿で腕を組み、道を歩く龍永の一家を見下ろす。それを見た龍永は


「怖わっ!世界一怖わっ!」


と身重の絵梨香の手を引っ張り、梨々香を抱きかかえてその場を去る。帰宅後、絵梨香に


「ああ見るとウチの監督ってめっちゃ怖いな。どの監督より強そうに見えたわ。」


と話す。同じくスペインに住む工藤も


「あんなん俺だって怖いよ。街中出歩けねーもん。」


と話していた。


 そして、事前キャンプに入る。あの監督の鎧兜姿が忘れられない龍永と工藤だったが、尚更緊張感を持って練習に励む。この時帯同していた2人の若手選手、市原と井上は、龍永のプレーを観て


「チャンピオンズリーグ観てました。」


「どうすれば上に上がれるんですか?」


等しつこいくらいに質問攻めをされる龍永。越後や三浦に


「ちゃんと答えてやれよ。4年前のお前もそーだったろ。」


「これからどんどん後輩が増えてくるぞ。きちんとアドバイスしろよ。次のワールドカップはそいつらと戦うんだからな。」


と釘を刺される。龍永は取り敢えずと市原と井上がパス交換しているところを見せてみろと話しながら、自らも混ざり、トラップパスをやって見せた。2人とも技術が高く直ぐ習得したが、


「今度は浮き球でやってみろ。リフティングじゃねーぞ。ちゃんとインサイドキックだけ使ってボールを地面に付けないようにやってみな。」


と2人に指導する。やはり浮き球となると勝手が違うため、上手くいかない。最終予選のインドネシア戦で越後、工藤、三浦が見せたが、大雨でピッチコンディションが悪く、1回やっただけで3人交代した難易度の高いものである。龍永は


「足下に置くことは出来んだろ?浮き球だったらスペースに置く感じでやるんだ。だからそれをやるには周りが効率的に走らないと出来ねーんだ。今回お前らは試合ねーからな。4年後までに出来るようになれ。そーすれば次のワールドカップで勝てる。期待してるからな。」


それを聞いていた太田監督や羽生コーチは


「そーか。だからあいつらあの試合で座り込んだのか。」


「まだまだ走りの質が足りないみたいだな。あれを代表でやるには・・・」


と考え込んでいる。龍永は


「あれをやるってなると、あいつらよりもっと下の世代から鍛えた方がいいですよ。俺達移籍組もカンテラの奴らにやっと追いついた感じでしたから。」


と意見を出す。この2年間、龍永の練習を観る機会が多かった佐久間も


「浮き球とまでは行かないけど、こっちの選手はほんと子供の頃からやってましたから。落とし込むのは時間がかかりますよ。」


と未来図を示す。だが、今は初戦の相手、ノルウェー。エースは今年バロンドールを受賞した龍永のチームメイト、ハーラルトが君臨するのであった。












龍永にも後輩が出来て、その交流を書いてみました

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