第55話 皇帝を玉座から引きずり下ろせ!
チャンピオンズリーグ決勝前半です
キャプテン、オルモスが円陣の中で
「俺達の1年を、メッツ監督のフットボールを全部見せるぞ!優勝こそが新生バルセロスだ!」
と鼓舞する。一斉にピッチに散っていく両イレブン。
バイエリンボールから試合開始。直後にバルセロスイレブンが一斉に上がる。早速ラインを2枚形成し、バイエリンの中盤を潰しにかかる。だが、バイエリンも横並びに2枚のラインを広げ、右サイドの越後が浅いラインの裏に出る。抜けたかと思いきや、これに対抗したのは何と逆サイドのレダンド。バルセロスは抜かれたと同時にラインを逆サイドから大きく垂れ落とすようにラインを保っていた。これを観たウズベキスタン代表監督を務めるカルネバーレは
「サイドバック版リベロ?横から見たカテナチオの様だ!」
とびっくりするが、レダンドは既にパスを出し、攻撃に移っている。越後を止めたレダンドはそのままダイレクトで近くのクバルシュへパス。ズダンが繋ぎに戻り、ガビンから左サイドへ。この時左サイドのオルモスと龍永が
「・・・せーの!」
とポジションチェンジ。両者のポジションチェンジを確認していた相手DFウパムカネとスタニッチ、ボランチのキミッフはまんまと引っかかる。ガビンがスペースに出したボールがオルモスへ繋がると、龍永とのワンツーでゴール前へグラウンダーのセンタリング。このボールをハーラルトがシュートするも、キーパーのロイアーがセーブし右ゴールポストを叩くが、ここに龍永がヘディングでルーズボールを折り返し、ジャマールがシュート。だが、池田がブロックしそのままロングフィードを送る。バイエリンのカウンターにFWのケリー、中盤の越後、ナブリ、オリーザがなだれ込む。このボールをバルセロス陣内で回され、ナブリが一旦止め、ドリブルでクバルシュとヘスキーを抜く。残るはキーパーのみとなったがオリーザへ軽くパスすると、オリーザがシュート一閃。キーパースタルコビッチが指先にかすめたボールをクライファーツがクリア。
ここまでがっぷり4つの両者。どちらも攻守共に譲らない。バイエリンのコーナーキック。長身のウパムカネとターフが上がってくる。だが、バルセロス側はクバルシュ、レダンド、クライファーツとキーパーのみで守る。
「こいつら、舐めてんのか?」
とバイエリン攻撃陣がセンタリングを上げる。ケリーとウパムカネを通り越し、ファーで待っていたオリーザがトラップしシュート。すると、ゴール前にいたクライファーツがこのシュートの勢いを殺し、外で待っていたオルモスへトラップパス。父、パトリックは
「あれを強烈なシュートを一瞬で味方へのパスに変えたのか?」
代表ではウィングの息子が見事にディフェンスしている。そして行き着く暇もなくオルモスはズダンへダイレクトパス。ここでもジヌディーヌが
「あいつ、ほんといい位置にいやがる。目立たないけどオフ・ザ・ボールが見違えるほど良くなったな。」
と感心する。ズダンが中央のハーラルトへダイレクトで繋ぎ、今度は後ろ脚のインサイドでジャマールに流す。アルフが
「今の最高だ!あの点しか頭にねー奴がちゃんとポストプレーするようになりやがって・・・」
と称える。レジェンド達が息子達の成長をしっかりと目に焼き付けていた。そしてスタンドでミカエルが京香に
「お母さん。あなたの息子がそろそろやってくれそうですよ。」
と日本語で話しかける。京香が
「行けー!龍永!」
と声援を送っている間にジャマールからの折り返しに龍永がダイレクトシュート。強烈なシュートはキーパーのロイアーの正面。
《斬!!!!!》
《ドボン!!!ゴトッ…コロコロ》
だがロイアーはキャッチしようとすると、シュートの威力に負け後ろへ尻もちする。日本からやってきた太田監督、OBの秋葉、武藤、鷲田、敬助の盟友日高、林、中山が
「おお!キーパー吹っ飛ばしだぞ!」
と全員揃って思わず立ち上がると、全速力で走り込んだハーラルトが跳ね返りをシュート。ゴールをカバーしていたターフの左足を思い切り吹っ飛ばし
《斬!ズバン!…》
《ガイーン!トーン。…》
という強烈な音と共にバイエリンゴールに突き刺さる。前半18分バルセロスが見事なカウンターから先制点を奪う。ハーラルトを囲むバルセロスイレブン。龍永が
「ちっきしょー!1号はオメーかよ!」
とハーラルトの頭を笑いながら掴む。ジャマールも
「2号は俺っすから。取っといて下さいよ!」
と抱きつく。谷津川や佐久間が
「おいおい、ワールドカップ決勝の龍永みてーな強烈なシュートがこの序盤で2発立て続けかよ?!」
「日本最高のプレーをこの序盤で早くも出すなんて・・・それに何だったんだ?あのパス回しは?全部インサイドキックでダイレクトのロングパスじゃねーか!」
太田監督が
「龍永とハーラルトのシュートも凄いけど、起点のクライファーツとズダンがまた凄い。龍永張りの強烈なオリーザのシュートを即座に味方へのパスに変えるなんて・・・」
とこのプレーに驚嘆する。
スタンドで観ている若手の市原と井上が
「今のプレーに追いつかなきゃいけねーんだよな?」
「俺、今日はとにかく出浦さんのタッチを参考に観よう。あれ出来れば日本代表に上がれると思う。」
と目を輝かせていた。2人は後年龍永を追い、代表に入る逸材でもある。
一方バイエリンは早くもキーパーがうずくまり、DFのターフが交代。ロイアーは龍永の強烈なシュートをみぞおちに食らったらしい。バルセロスイレブンはひっそりと
「皇帝が2人オチた。全員引きずり下ろしてやんよ!」
と見下ろす。バイエリンイレブンは
「この小僧共が!」
と睨み付ける。龍永が同じ代表の越後と池田を睨み、2人も睨み返す。これがチャンピオンズリーグ決勝の舞台である。フレンドリーマッチではない。バロンドールをかけて戦っているのはバイエリンも、越後や池田も同じなのである。
そして、バイエリンも黙っていなかった。再開直後、ボランチのゴレツコが持つと即座にラインの裏を抜けたケリーが走る。カバーに入ったクライファーツをワンツーで交わすとゴール前でタメを作る。後ろには越後、ナブリ、オリーザが構えている。いずれもミドルシュートを持つ3人にズダン、ヘスキー、ガビンが付く。オリーザを選択したケリーがパスすると、ループの速いボールを逆サイドの越後に送りダイレクトボレーシュート。前半29分に1点を返される。
OBの秋葉、武藤、鷲田が
「越後も負けてねーな!今のボレー後ろから合わせたぞ?」
「しかもループに見えてドライブかかってなかったか?」
「この試合に日本代表が3人もいるんだよな?両方スゲーよ!」
と後輩達の激闘に興奮する。龍永が越後を睨み
「まだまだたっぷり時間あっからよ。」
と呟く。
そして再びバルセロスの急襲が始まる。今度はVS準々決勝、チェルサー戦で魅せたあの浮き球パス。地面にボールを付けずにインサイドキックでダイレクトで回している。更に精度もスピードもあの試合より格段に上がっている。その地面すれすれの浮き球ボールに対応出来ないバイエリンイレブンをきりきり舞いさせている。ズダン、ジャマール、オルモス、龍永、ガビンと流動的に動く様を観て
「何て美しいフットボールなんだ・・・」
と見とれてしまうレジェンド達。サッカー素人の京香でさえ言葉も出ない。今まで応援することしかしてこなかった京香が初めて息子のサッカーに見とれてしまっていた。
《スパパパパン!》
と小気味よい音が響き渡り、試合再開からたった1分であっという間にゴール前へ辿り着くバルセロス。ロイアーが
「惑わされるな!固めろ!ボールよりスペースと人を見ろ!」
とコーチングするが、バルセロスイレブンが
(残念でした!)
と言わんばかりにジャマールがストップ。ドリブルで仕掛けシュート。ロイアーが両手を大きく挙げブロックするが、このルーズボールに龍永が反応。巨漢のウパムカネと長身の池田が競り、ゴールの中には交代出場のラリマーがいることを確認すると、まるでゴリラのような勢いで身体を横に捻り、ノイヤーの背後を突く逆サイドへ強引にヘディングシュート。ラリマーがオーバーヘッドで掻き出そうとするが、一緒にゴールへ突き刺さる。前半31分直ぐさま追加点を奪ったバルセロス。龍永、チャンピオンズリーグ決勝での初ゴールが決まった。
吹っ飛ばされたウパムカネと池田、そしてクリアー仕切れずにゴールネットに絡まっているラリマー。更に飛び出した背後を抜かれたキーパーのロイアー。特にウパムカネはワールドカップ準決勝と同じく再び龍永に吹っ飛ばされた事になる。そんな事等お構いなく急いで京香の元へ走る龍永。
「母ちゃーん!」
と愛する妻が娘を産んで親になったばかりだというのにまるで子供の様な表情の龍永。京香を囲み一斉に拍手するレジェンド達。ジヌディーヌ・ズダンとジョーダン・ウェアに促され前に行く京香。かたやフランス代表監督、かたやリベリアの大統領。そんな2人が親子を繋げる。
「龍永!良くやった!良くやった!お母さん最高だよ!」
と涙する京香だったが、龍永は
「まだ前半だよ母ちゃん。もっと点取るから観ててよ!」
と仲間の元へ去って行く。レジェンド達が
「最高の息子さんじゃないですか!でもウチのせがれも負けてませんよ?」
と握手を交わし、ようやく1つになれた京香。敬助の遺影をしっかり抱き締め
(あの子、ここからニホンオオカミに変わるんだよ?一緒に観よう!)
と胸に秘める。
だが、前半40分アクシデントが起こる。ナブリと競っていたズダンが負傷退場。代わってマルケジアーニが入る。祖父、父共にイタリア代表のマルケジアーニ。彼だけは「Ⅲ世」である。そしてバイエリンボールのフリーキック。蹴るのはオリーザ。直接無回転シュートを放つが、キーパースタルコビッチがファインセーブ。今度はコーナーキック。再びオリーザが蹴ると、ショートコーナーの越後からバルセロスのお株を奪うインサイドキックのダイレクトパスがゴレツコ、ケリーと繋がり逆サイドで構えていたウパムカネがシュート。何とか間に合ったクライファーツだったが、こぼれ球をキミッフが詰めて再び同点に追いつく。
前半終了。このプレーでクライファーツも負傷交代。バイエリンもナブリが負傷と互いに激しい前半戦となった。
日本人対決も兼ねています




