第54話 元玉座に座る者達
歴代のレジェンド達がこぞってチャンピオンズリーグ決勝を観戦します。この話は長くなるので5部作です。今回は紹介というかプロローグです。
遂に迎えたチャンピオンズリーグ決勝バイエリン。この一戦にバルセロスの選手達の父親達が貴賓席にずらりと勢揃いした。
ジヌディーヌ・ズダン(元フランス代表MF、元リアル・マドレー監督を経て現フランス代表監督)、リリアン・テュラン(元フランス代表DF )、ロビン・ファン・ペルツ(元オランダ代表FW、現オランダ代表コーチ)、パトリック・クライファーツ(元オランダ代表FW、現インドネシア代表監督)、マルク・ファン・ボムメル(元オランダ代表MF、現ベルギー代表監督)、アルフ・インゲ・ハーラルト(元ノルウェー代表MF )、ディエゴ・シメオニ(元アルゼンチン代表MF、現アトレティック・マドレー監督)、クリスチャン・レダンド(元アルゼンチン代表MF)、ゲオルゲ・ハジム(元ルーマニア代表MF、現ガラタサラル監督)、エメール・ヘスキー(元イングランド代表FW)、パオロ・マルケディーニ(元イタリア代表DF、現ASミランGM)、エンリコ・キエリーザ(元イタリア代表FW)、ジョーダン・ウェア(元リベリア代表FW 、バロンドール受賞者、現リベリア大統領)、フラビオ・コンテイソン(元ポルトガル代表MF)、ヘンリク・ラルソン(元スウェーデン代表FW)、オバフェミ・マルティネス(元ナイジェリア代表FW)、ミカエル・ラウドルッペ、ブライアン・ラウドルッペ(共に元デンマーク代表FW)、デヤン・スタルコビッチ(元セルビア代表MF)。まるで世界選抜のような面々の中、龍永の母、京香が混ざっている。夫がかつて食い入るようにテレビの試合を観ていたレジェンドの中、一人女性の京香は
(あの子、こんな凄い人達の息子さん達とサッカーやってたんだ・・・)
と、亡き夫、敬助の遺影を両手に縮こまっていた。すると、その中の一人ミカエル・ラウドルッペが日本語で
「大丈夫ですよ、お母さん。ほら、あなたの息子さんは笑っているじゃないですか。」
Jリーグでのプレー経験のあるラウドルッペ、そして龍永の師であるファン・ペルツも
「あいつはもう何にも縛られてない。自分の為、チームの為に伸び伸びやってますよ。もう4年前のギスギスしたあいつじゃない。我々と一緒に応援しましょう。あなたも私達も息子が気になってしょうがないのは同じですから。」
一同頷く。そして、冬にリアル・マドレーの監督を辞任し、フランス代表監督となったズダンが
「・・・正直言って私はあの息子に親らしい事は何もしてやれなかった。4人の息子を抱えながらあいつに過度のプレッシャーを与えて苦しめてしまった。そんな息子が今じゃこのチームで成長を遂げたんです。ほんと子育てって上手くいかないものなんですよね。」
この言葉に京香は引っ掛かった。自分も龍永に向き合わず、気付けば日本代表のエースストライカーとして成長していた。京香に振り向いてもらいたく、未だに登録名を「出浦」にしている。本当はチームメイトと同じ「大神」にしたかったろうと悔やんだ。だが、ウェアは
「きっとあいつはお母さんが大好きなんですよ。今も生き生きしてるじゃないですか。心配しなくてもあいつの中にあなたと敬助の遺伝子はしっかり受け継がれてますよ。」
一国の大統領と、普段スーパーのレジ係やビルの清掃業をしているおばちゃんとの会話。だが確かにそんなレジェンドの中に京香はいる。
「今日こそ皆さんに負けないくらい応援しよう。」
と龍永にプレゼントされたユニフォームとマフラーを巻き気合いを入れた。
相手はドイツリーグ優勝を決めたバイエリン。そして、スペインリーグ優勝に王手をかけたバルセロス。彼らレジェンドだけでなく、JFA から八津川、佐久間、そして太田監督まで視察に現地入り。更にOBの秋葉、武藤、鷲田、敬助の盟友日高、林、中山の姿もあった。ニホンオオカミJrと世界のオオカミJrの成長した勇姿と成長を皆確認する為にこのアルテミオ・フランコに集結した。ここは龍永の父、敬助が最後に所属したフィレンターナの本拠地であり、あれから30年の時を経て息子がこのスタジアムに帰還を果たした。バルセロスサポーターと共に、当時のフィレンターナサポーターが
「Bentornato!Lupo Giapponese Jr!」(おかえり!ニホンオオカミJr!)
という垂れ幕をぶら下げ、バルセロスイレブンを後押しする。
ウォーミングアップに出てくるバルセロスイレブン。まるで子供のような笑顔とは裏腹に、それぞれの父を越える技術レベルでパス回しやキックを披露する。何と言っても監督は王様メッツである。次期王位争奪候補達のボルテージは最高潮に達していた。対するバイエリン・ミュンヘンの監督は、メッツ監督最大のライバルであった元ポルトガル代表のクリスチャン・ロドリゴである。この2人が引退してからのバロンドールはどんぐりの背比べ状態であり、この一戦にバルセロス、バイエリン両方共その玉座の椅子を狙っている者達ばかりだ。
他にもミッシェル・プラティノ(元フランス代表、現FIFA会長)を筆頭に、マルコ・ファン・バストン、ルート・グーリー(元オランダ代表)、ジャン・ピエール・パポン(元フランス代表)、ロベルト・バッジア(元イタリア代表)、先のウズベキスタン戦で相まみえたファビオ・カルネバーレ(元イタリア代表、現ウズベキスタン監督)、ローター・マテアス(元ドイツ代表、現UEFA会長)、マリウス・ザマー(元ドイツ代表)、マイケル・ボーウェン(元イングランド代表)、ルイス・フィーリョ(元ポルトガル代表)、リバルド、ロナルジーニョ(元ブラジル代表)、パベル・ネドベツ(元チェコ代表)、アンドリー・シェフチェルコ(元ウクライナ代表)と歴代のバロンドール受賞者がずらりと観戦に訪れている。誰もが皆
「次期王位を奪うのは誰か?」
と関心を持ってやってきたのだ。更に
「元玉座に座っていた2人が作り出したチーム同士の対決」
という事も相まって、この一戦は全世界が注目し、日本でも
「チャンピオンズリーグ決勝での日本人対決」
という別の意味でも注目を集めた。バイエリンには日本の10番越後と、DF池田、ベンチに冬のマーケットで新加入したFW京谷、更にスタンドには、龍永より年下の世代でバイエリンU21に在籍している市原と井上が観戦している。この2人は先のU17ワールドカップで準優勝を果たしたメンバーである。日本にとっても世界にとってもオールスターが集ったこの一戦を前に龍永は
「・・・まあ、いつも通りやるだけですかね?」
ととぼけているが、何やら企んでいるような表情を浮かべていた。
そして、運命の決戦。スターティングメンバーが発表される
1番GKスタンコビッチ(セルビア)27番DFヘスキー(イングランド)5番クバルシュ(スペイン)19番レダンド(アルゼンチン)12番クライファーツ(オランダ)4番DHズダン(フランス)CH6番ガビン(スペイン)11番オルモス(スペイン)SW10番ジャマール(スペイン)21番出浦(日本)9番CFハーラルト(ノルウェー)
控え13番GKホアン・ガルシア(スペイン)2番DFエンリケ・ガルシア(スペイン)、29番マルケディーニ(イタリア)26番ファン・ペルツ(オランダ)24番コンテイソン(ポルトガル)14番MFシメオニ(アルゼンチン)15番テュラン(フランス)25番ハジム(ルーマニア)、28番ラウドルッペ(デンマーク)7番FWラルソン(スウェーデン)、20番キエリーザ(イタリア)、33番ウェア(アメリカ)
バルデス、ペドリーニョが出場停止、フェルマンが怪我で離脱したバルセロスだったが、ここに来て世界中のオオカミJr達が集った。彼らが新たなティキタカをメッツ監督と共に作り上げ、その完成形を携え、ここまで戦ってきた。一様に
「俺達はもう誰のJrなんて言わせねー!俺達が本家だ!俺達が最強最高なんだ!」
と試合前に全員が自信を持って豪語する。そして
「今日玉座に座ってた連中を全員引き摺り下ろす!おっさん共!全員しっかり観てろ!俺が玉座に座るんだ!」
と生意気な口をわざわざ叩き付けたバルセロスイレブン。今日集まったレジェンド達は、それを確認しに雁首を揃えたのだ。
(面白れーじゃねーか小僧共。じっくり見せてもらおーじゃねーか。)
と会場にやって来たレジェンド達。そして、運命のホイッスルが吹かれた。
結構長くなってしまい、5部作になってしまいました。偉大な父を持つ子供達はきついというのは龍永が一番良く知っていると思います




