第45話 火炎を吐く飛龍 前編
不調の中始まる古巣フベントルスとの対戦です。
チャンピオンズリーグの山場、古巣フベントルス戦を迎えるに当たって、龍永達怪我人が戻ってくる。龍永、ジャマールはベンチスタートということになる。一方フベントルスは監督もメンバーもがらりと代わっており、龍永が所属していた時の選手は日本人の田中、前田、青木、キーパーのシュチェスニーの4人のみ。青木は最終予選の怪我により未だ復帰出来ずにいたため、2人だけとなる。また、フベントルスは龍永より前にテュラン、ウェア、キエリーザ、コンテイソンも所属していたため因縁の対決でもあった。
試合前にメッツ監督が
「相手はウチにいる選手の特徴を知り尽くしている。俺達を苦しめてきたワイバーンのフォーメーションも選手は違えどそのままだ。かなり難しい試合になる。とにかくこっちのゴール前で勝負されたらアウトだ。監獄に閉じ込められる前に脱出するんだ。長引くと火炎地獄になるぞ。」
メッツ監督率いるバルセロスは、龍永がいたシーズンに一度も勝っていない。キーマンが龍永だと思っていたメッツ監督がバルセロスに引き抜いたのもその為だ。だが龍永は
「俺はキーマンじゃないっすよ。キーマンはボランチです。ボランチだけ層が厚いんです。疲れたボランチは代えが利きますからそこを叩けば勝てます。」
と言い切った。
1番GKスタンコビッチ(セルビア)27番DFヘスキー(イングランド)5番クバルシュ(スペイン)19番レダンド(アルゼンチン)3番バルデス(スペイン)4番DHズダン(フランス)6番CHガビン(スペイン)11番オルモス(スペイン)SW7番ラルソン(スウェーデン)33番ウェア(アメリカ)20番CFキエリーザ(イタリア)
控え13番GKホアン・ガルシア(スペイン)2番DFエンリケ・ガルシア(スペイン)22番ベルナルド(スペイン)16番MFフェルマン(スペイン)28番ラウドルッペ(デンマーク)8番ペドリーニョ(スペイン)10番ジャマール(スペイン)15番テュラン(フランス)29番マルケディーニ(イタリア)24番コンテイソン(ポルトガル)25番ハジム(ルーマニア)21番FW出浦(日本)
今日は久しぶりのベンチスタートとなった龍永。フベントルスは
1番GKシュチェスニー(ポーランド)4番DFガッディーニ(イタリア)3番ブルーメル(ブラジル)22番田中(日本)5番DHロバテッリ(イタリア)8番前田(日本)10番CHコープマイエンス(オランダ)21番ミノッティ(イタリア)SW27番カンビアッソ(イタリア)13番ボカ(コートジボワール)9番CFコロマーニ(フランス)
今日のキーマンはロバテッリ、前田と読んでいたが、試合が始まると一変する。名将スパレッツィ監督はワイバーンに更に磨きをかけていた。一旦ボランチのロバテッリにボールが戻ると、今度はオーバーラップしたキーパーのシュチェスニーまで戻る。CFのキエリーザが猛然と突っ込むが、シュチェスニーが左サイド、カンビアッソへロングフィード。すると、フベントルスイレブンが右サイドを主戦場に一気に上がっていく。レダンドが付くが、コープマイエンスとワンツーでバルセロスを崩していく。小気味よいパスが通り一気にバルセロスゴール前へ到達すると、右サイドファーにボカ、コロマーニ、そしてオーバーラップした田中が構えている。3人もファーにいたバルセロスの左サイド、バルデスとヘスキーが釣られてしまう。残っていたクバルシュが
「何やってんだ!馬鹿!中央ががら空きだぞ!」
とコーチングするも、中央には既にロバテッリと前田が走り込む。センタリングを上げたカンビアッソが中央の前田へ送ると、前田は打たず、ニアサイドに走っていたミノッティに流す。これを決められ先制点を許す。メッツ監督が
「ボランチが起点じゃなかったのか?」
クバルシュも
「あれって龍永のプレーじゃねーか?」
フベントルスはバルセロスで龍永がやっているプレーを逆にやってみせた。起点はボランチでもあり、サイドでもある。横から火炎地獄を食らったようなフベントルスの得点。更にオーバーラップしたDF陣にまたもしてやられた。
バルセロスボールで試合再開。ズダンにボールを戻すと、コロマーニとコープマイエンスがダブルチームで潰しにかかる。今季飛躍的に成長したズダンがたまらずガビンに流すが、前田がカット。完全に分析されてるバルセロスの攻撃。その前田が右サイド、ボカにパスを送る。カットに行くオルモスが脚を出すと、そのボールはカーブがかかっており触れない。ボカがヒールでミノッティに預けると、今度は左サイドを中心に全員上がっていく。またもコロマーニ、カンビアッソ、コープマイエンスがファーで待ち構え、中央にロバテッリとブレーメルが上がっていく。ニアにはガッディーニがオーバーラップする。ミノッティが合わせたのはその中の誰でもなく、先程カットした前田であった。前田がミドルシュートを放つと、クバルシュがブロック。こぼれ球をオーバーラップした田中がブロック返し、あくまでバルセロスゴール前にボールを残すフベントルス。このボールをファーで待っていた3人がそれぞれニアと中央、ファーサイドに分かれ、中央にいたロバテッリがファーのコロマーニへダイレクトパス。コロマーニのシュートをヘスキーが脚で触るがそのままオウンゴール。0-2と突き放される。メッツ監督が
「このまま前半は粘れ!」
と指示を出したのも束の間、今度はボランチのロバテッリがボールを奪う。すかさずCFのコロマーニへフィード。
「マズい!」
と思ったガビンとオルモスが重なってしまい、コロマーニがそのまま抑える。
「やばい!」
とメッツ監督が
「そいつが起点だ!後ろから上がってくるぞ!」
と言った瞬間、コロマーニを追い越し一斉にオーバーラップするフベントルスイレブン。潰しにいったヘスキーを交わし、ゴール中央を走るコープマイエンスへグラウンダーの縦パス。クバルシュとGKスタルコビッチが構えるが、加速の付いたコープマイエンスがシュート。前半だけで0-3と引き離されてしまう。そんな中、龍永はじっくり観察していた。
「・・・なるほどね。」
こうして前半を終えたバルセロスイレブンの表情は重かった。このフベントルスのワイバーンサッカーに未だ勝てていないからだ。
ロッカールームでメッツ監督が
「おい!何で釣られたんだ!思うつぼだぞ!」
と声を荒げる。龍永が
「監督、だったらこっちも釣りましょうよ。」
昨季までフベントルスにいた龍永だが、メッツ監督が
「何か策があるのか?あのフォーメーションはお前ありきの物だったはず。」
龍永が
「俺くらいのキープ力ある奴なら誰でも起点になれますよ。その起点を潰すより、起点の先にある獲物をこっちで釣ればいい。DFにとっちゃ神経すり減らすことになりますけど。相手は必ずオーバーラップをかます。だから敢えてオーバーラップ用のスペースをこっちで作ればいい。俺達のゴール前に池を作るんですよ。向こうもスペースにパス出してんだから、起点が見えたらスペースをわざと開けるんだ。必ず相手DFはそこに来る。そのスペースに入り込んだ奴らを潰す。」
キーパーのスタルコビッチが
「だったら俺はもっと飛び出しを増やすぞ。クバルシュ、ヘスキー、カバーは任せた。」
戦術が決まったバルセロスは後半から負傷明けの龍永とジャマールを投入。龍永が
「ジャマール。試作段階のアレやってみよーぜ。」
と2人で何か考えている様子。最後にメッツ監督が
「おい。龍永。自分のサッカーを見失うなよ。」
と声をかける。龍永は欧州に来て3点ビハインドは初めてであったが、何故か吹っ切れた表情でピッチに上がった。
長くなってしまったので2部構成になりました。




