↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/89

第43話 カンフーサッカー

龍永や日本代表がだんだん壊されていきます

 左の中西が前節のサウジアラビア戦で1発レッドカードで退場。同じく左の三浦、更にDFの鳥海が怪我でリタイア。残り23人で次戦、中国戦の為に一路重慶へ向かう。この重慶は第2次世界大戦中に日本軍と激戦を繰り広げた場所で、未だに反日感情が渦巻いている。この試合の3日前、JFAユーロの谷津川がとある2人の人物と接触を図っていた。


 中国戦。先発はGK佐藤、DFは阪倉、池田、鳥海に代わり田中、ボランチに岡野海、田嶋、右に越後、左は龍永が務める。トップ下に工藤、2トップは内田と椎原が入った。


 試合前から中国サポーターから大ブーイングが飛ぶ。国歌はかき消され、日本ベンチに物が投げられる。そんな中で中国ボールからキックオフ。難なくカットした絶好調の岡野海だったが、即座に相手が跳び蹴りをかます。だが、レフェリーはまたもや笛を吹かずプレーオン。中国が拾うが、今度は田嶋が強引に奪う。するとここで笛が鳴る。開始早々田嶋にイエローカードが出される。紳士的な田嶋は内心怒っているも笑顔で交わす。


 再び中国ボールでリスタート。阪倉が競り、浮いたボールを佐藤が難なくキャッチするが、中国のDFが倒れている。佐藤がジャンプしたときに相手は競っていないにもかかわらずにだ。そこでレフェリーはGK佐藤にレッドカードを提示する。今予選で2枚目の退場者を出した日本は猛抗議するも聞き入れられず、GK佐藤の代わりに西久保が入る。更に日本も右サイドの越後を下げざるをえなかった。


中国のPK。蹴るのはエース梁。だが、このPKを西久保がストップ。しかしレフェリーはPKのやり直し。西久保が先に動いたというのだ。西久保は長い両手を広げてるだけだったが、またもジャッジに嫌われる。だが、もう一度西久保が止めて見せた。今度は中国のコーナーキック。龍永もゴール前まで戻り、前線は内田1人だけ残す。阪倉が


「ボール取ったら直ぐ内田に繋げ!」


と指示を出す。直接狙ったコーナーキックを西久保がパンチングで弾く。そのボールを右サイドへずれた工藤に渡り、即座にパスを出そうとするが、中国の選手3人に思い切り削られ悶絶する工藤。側にいた田嶋が


「こいつら!徹底的に脚削りに来てやがる!」


と言い放つ。ここで龍永が檄を飛ばす。


「あと3点だ!北朝鮮戦と同じように身体にも触らせるな!」


工藤はそのまま負傷交代。代わって初出場の阿部が入る。その阿部からリスタート。バルセロスを彷彿とさせる素早いパスワークで今度はボールにも身体にも触れさせない。


(これならファール取られないだろ?)


とパスを回し、左サイドの龍永がこのパスワークをストップ。ゴール前で自ら仕掛けようとする。相手DFが例によって3人襲いかかるが、ここが狙い目だった。ペナルティエリア外に待ち構えている内田へがらりと空いたスペースが出来、内田が難なく強烈なシュート。これにキーパーが届かず日本先制。だが、ホイッスルはゴールの後40秒という長い時間を開け吹かれた。何かレフェリーが気に入らないと言わんばかりの表情であった。龍永は


「あと3点だ!」


といつもの檄で一人少ない日本イレブンを鼓舞する。前半はここで終了する。


 ロッカールームで退場した佐藤と越後が下を向いている。龍永が


「ザイさんとリツさんの仇は俺達で取りますよ。」


と龍永が励ます。前半で更にボランチ岡野海が怪我で交代。代わりはユベントルス時代のチームメイト、青木が投入される。一人少ない状況で運動量が多く、攻撃参加も出来る青木は絶妙な采配かに見えたが・・・


 後半は日本ボールから。龍永のサイドには青木がカバーに来るが、またしても中国の激しいチャージ。後半早々青木が負傷退場。代わって入ったのは青木同様運動量豊富でパスセンスも光る前田が入る。後半開始早々日本は4人のメンバーチェンジを余儀なくされる。満身創痍の日本代表だが、龍永が


「こういう時だからあと3点必要なんだ!」


と再び檄を飛ばすが、相変わらず荒っぽい中国イレブンに手を焼く。後半15分に左サイドでボールを受けた龍永に中国DFが龍永の顔面に激しいエルボーをかますが、お構いなしにプレーを続ける龍永。


(今流れを切ったらおしまいなんだよ!)


と中央を走る岡野海へパス。そのボールをゴール前の内田へ転がすと、内田がダイレクトで合わせる。ゴールは枠を越えたが、その直後内田がうずくまる。内田の軸足を完全に削っていた中国DF2人。内田は一旦ピッチ外へ出される。2人少ない日本代表に中国が襲いかかる。中国のFW劉が放ったシュートはキーパー西久保がファインセーブするも、レフェリーはゴールの判定。ラインを割ったという判断だ。リプレーでは完全に西久保がライン前で弾いている。何処までも審判団に嫌われる日本イレブン。1-1の同点に追いつかれる。


 内田は大した怪我ではなくプレー続行。残り時間はあと20分程。日本ボールで試合再開。太田監督はここで指示を出す。


「中盤は前田を残して田嶋、それと龍永!お前がセンターハーフに入れ!左サイドと兼務しろ!お前なら出来る!」


龍永はその指示を聞き、闘志を燃やす。


(覚悟しろよ。テメーら!俺の庭場を増やしたツケ払わせてやんよ!)


この指示を受けた龍永は水を得た魚の如く広範囲を動き回り、中国陣内を急襲する。ボランチの前田とのコンビでドリブルとパスを織り交ぜながら果敢に突破していく。193cmの巨体が左サイドから中国ゴール前に切れ込んでいく。そのまま龍永が鋭角の位置からシュート。これはポストに当たり、こぼれ球を田嶋がシュート。今度はDFに当たるも今度はオーバーラップした池田が遠目からシュート。これもDFにブロックされるが、これをオーバーラップした阪倉がブロック返しをし、中で身体を張っていた内田がシュート。キーパーが弾きコーナーキックとなる。この戦法はワールドカップ決勝で魅せたあの「真田丸」であり、中国ゴール前に完全に閉じ込めた。


 後半32分日本のコーナーキック。阿部が蹴ったボールは直接龍永の元へ届くが、中国DF陳が龍永の背中に思い切り膝を入れ、更に跳んで浮いていた龍永の右脚をDF呉が思い切り振り抜いて蹴っ飛ばす。完全に体制を崩した龍永が中国ゴール前で高い場所からうつ伏せで倒れ込む。ボールは中国のキーパーがキャッチ。すかさずリスタートする。日本イレブンは皆上がっていたため残っているのはボランチの前田とキーパー西久保だけ。まだ動けない龍永だったが、西久保が


「下がるな!全員そこで待ってろ!」


と檄が飛ぶ。西久保はゴールラインを背に微動だにしない。このプレーは龍永の父、敬助の「大神ゾーン」である。なだれ込む中国イレブンを前に西久保は眼をカッと開き中国のボールを飛び出してキャッチ。だが、龍永が倒れているため速攻に行けず、中国ゴール近くのタッチラインへボールを出す。龍永は起き上がれず担架に乗り交代。最後のメンバー交代に斎藤が呼ばれる。龍永ほどではないが長身で広範囲をカバーできるFWである。


 後半ロスタイム、日本はコーナーキックを得るもここでホイッスルを吹かれ試合終了。1-1。ディフェンディングチャンピオンの日本は未だ白星なし。更に次戦レッドカードで出場停止2名、負傷者は龍永も入れて6名。試合後に内田、阪倉までもが怪我を負う最悪の結末である。


初戦に引き続き、この試合もレフェリーに嫌われた日本代表。警告と怪我人が増えてばかりの満身創痍。日本代表は苛立ちを隠せなかった。


 試合後のロッカールームは重い空気に包まれる。そんな中現れたのは、かつて父、敬助と同じクラブに所属していた韓国代表エース、申と当時のキャプテン中山だった。帯同していた谷津川がわざわざ呼び寄せていた。


納得のいかないジャッジと怪我で落ち込む龍永を見て、申が龍永の胸ぐらを掴み、顔面を思い切り殴る。龍永は


「誰だよ?あんた!」


と叫ぶと申が


「お前の名付け親だよ!おい!龍永!こいつをお前の親父の鉄拳だと思え!」


同じく龍永の名付け親で、日本代表ワールドカップ初出場メンバーだった中山が


「俺達日本代表はな!ワールドカップに行きたくて、今日の中国みたいに死に物狂いで戦ってたんだ!初出場決まった喜びすら味わう気力もないくらい極限まで神経すり減らされてな!」


再び申が龍永を睨み付け


「天国の親父に笑われたくなかったらこんな逆境乗り越えろ!お前の親父も予選を戦ってきたんだ!今のお前は日本のエースなんだぞ!全部力で弾き返せ!不当なジャッジ嘲笑うくらいじゃねーと本戦も厳しいぞ!」


そして中山が


「これはただの試合じゃねー。ワールドカップ予選は代理戦争なんだ。お前らが持ってるワールドカップを狙ってるチームに首狙われているんだぞ?相手やジャッジのせいにすんな!アウェーじゃ当たり前だってベテラン達はわかってたはずだろ?よそみしてると今度はマジでお前らが狩られるぞ。ニホンオオカミJr共が!」


この2人は龍永の名付け親でもあった。だからこそ親父代わりとして龍永達現日本代表を放っておけなかったのである。そんな申や中山は龍永に


「お前の親父に頼まれて名前くれてやったお前は俺達の夢なんだぞ。」


と諭し去って行った。阪倉や越後、田嶋が振り返る。


「俺達は舞い上がっていたのかもな。」


「こんなこととっくにわかっていた筈なのに!」


「こっからぜってー負けねー!今日怪我した龍永達の為にも、出場停止食らった中西達の為にもな!」


龍永は殴られた事に関してメディアに一切言わなかった。チームメイトやスタッフにも口止めした


「・・・俺が甘かった!頭の中でわかってた筈だったのに!」


と悔しさを滲ませる。


 一方でこのアウェー2連戦の引き分けを理由に太田監督の進退も取り沙汰される。


「保坂監督に戻した方が良いのでは?」


報道陣の中にいた、龍永の妻、絵梨香が


「まだ負けてないんですよ!それに前回大会で優勝したときの出浦選手の言葉もう忘れたのでしょうか?」


と反論する。あの時メディアは確かに


「この青年は、傷つけていい存在ではない。」


「こんな子を傷つける記事なんて、もう書けない。」


「俺たちも覚悟を決める時だ。この子の未来を守る記事を書こう。」


と誓った筈なのだが、たったの2引き分けでこの掌返しのメディアに絵梨香はキレていた。


次戦まであと4ヶ月ある。出場停止の佐藤と中西を除いて怪我人の数名は戻ってくるだろう。そんなことも信じられないのかと絵梨香は思っていた。


 試合後、龍永は母の京香に電話する。


「ごめん。母ちゃん。また心配かけたね。」


すると京香は


「大丈夫だよ。あたしはもう龍永の一番の味方だからね。絵梨香ちゃんの言うとおりあたしは信じてるからね。」


と温かい言葉を息子に捧げた。龍永は


(あいつら!ホームでコテンパンにしてやる!2度とサッカーすんのが恐怖でたまらねーくらい奴らのプライド完膚なきまでへし折ってやる!)


と闘志を燃やした。

ある意味ワールドカップ予選は本戦より厳しいですが、前回のアメリカ大会本戦も似たような物だと思い、数試合をモデルにしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。