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英雄の孫は今日も最強  作者: まーびん


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第29話  転移魔法が欲しい!

毎週金曜更新の予定……です……多分。

【リーデン共和国スパイ ヘレス】


 自分がリーデン共和国のスパイであることを明かした後、自分の身柄はモルグーネ王城の地下牢に移された。

 なかなかにかび臭く、居心地の悪いところだが、3食まともな食事が出されるだけでも良しとしよう。


 1週間ほど、自分がやることもなく日がな一日ゴロゴロとしていると、時々王弟殿下が話し合いの進捗を知らせに来てくれた。

 そして今日は、なんと国王陛下御本人もご同伴だ。


「我が城の地下牢の居心地は良いだろう? 共和国のスパイ殿。なんなら、ずっと入っていてもらっても構わんぞ」


 国王陛下は、王弟殿下と同じ顔で、にこやかに自分にほほ笑みかける。

 なかなか皮肉の利いた御仁だ。


「勘弁してください、陛下。退屈で死にそうですよ」


 自分はへらへら笑いながら頭をかく。

 そんなやりとりを横目に見て、王弟殿下はコホンと咳払いをした。


「今回の件について、陛下と側近のごく少数で話し合いを進めてきた。我々は、この件については前向きだ。ただ、問題はグランドマスターのオーフェン殿だ」

「オーフェン殿は何と?」

「ロイ君を政争に巻き込むなと難色を示されている」

「無理もありませんねぇ。ロイ君の発明の影響力は大きすぎますから」


 自分が頭をかくと、王弟殿下は首を横に振る。


「だからこそ、開示するべきだと私は考えるがな。偉大な発明であればこそ、広く知らしめて人類全体のために有効活用するべきだ」

「オレリアス。ロイ君の発明でなければ、それで事足りるだろうがな。今は彼の力が大きくなりすぎるのは不味いだろう」


 国王陛下は腕を組み、ため息を吐く。


「まったく、彼には困ったものだ。これでは国王の権威が型無しだ」

「そうでしょうねぇ」


 自分は思わず同情を込めて苦笑する。

 ロイ君のような突出した個の扱いは、王侯貴族からすれば頭の痛い問題だろう。


 何故なら、国王は権威でもって平民の上に君臨するが、権威を維持するためには、あらゆる手段で王家が他より優れていることを誇示し続けなければならない。

 そしてまた、権威は常に武力によって保証されなければならず、武力が伴わない権威など、ただのコケ脅しに過ぎない。


 その点、ロイ君は王家より優れた点を多く持ち、武力にも秀でている。

 その上、ロイ君には王家に従おうという意思が皆無。

 そのロイ君をのさばらせていては、王家の威信が地に落ちかねないわけだ。


「でも、良かったじゃありませんか。このモルグーネ王国は、『その手の問題』には慣れっこでしょう?」


 なにせ、ロイ君以外の『先例』がいる。

 ルードルフ様だ。


「短絡的な他の国の国主なら、ロイ君を国外追放するか敵対するか、プライドや猜疑心が邪魔して下手な手を打ってしまう可能性もあったでしょう? でも、貴方がたはルードルフ様とも上手く付き合ってきた実績がありますからねぇ」

「恐ろしくて手が出せないだけの事だ」


 王弟殿下は、額を押さえてため息を吐く。


「でも、金にも権力にも靡かないあのお方を、ちゃんと味方にしているでしょう」


 正直、自分がもし為政者側だったとすれば、ルードルフ様、いや、ターセル子爵家は相当に扱いづらい存在だ。

 傍で見てきたから知っているが、ルードルフ様たちは王家を全く恐れていない。

 金にも権力にも興味がないどころか、避けている節すらある。

 誰も首輪をつけることができない上に、機嫌を損ねれば矛先が王家に向くことすらあり得る。


 変に知恵の回る君主なら、この状態が恐ろしくて放置はできない。

 先手を打とうとして、怒らせるのがオチだろう。


 しかしまた、王家との対立が深刻になりすぎないよう、裏で手回しをしているのがレッドラン師団長であるということも自分は知っている。

 政治に疎いターセル家を、孤立せず、かといって利用もされないように絶妙に立ち回っているのが、レッドラン師団長の手腕だ。

 なんだかんだで、あの両家は非常に親密なのだ。


「まぁ、グランドマスター殿にロイ君を引き取ってもらえてよかったのでは? ロイ君が何かしでかしても、あっちに責任をなすり付けられますし」

「人心まではそうはいかんだろう。結局、ロイ君はモルグーネ王国の関係者だと見られ続ける」

「なら、いっそロイ君を国外に出してしまえばどうです?」

「ルードルフ様とレッドラン師団長をも失うぞ」


 王弟殿下はギロリと自分を睨み、それとも、と鼻を鳴らす。


「ターセル家ごとリーデン共和国に取り込もうとでも言うつもりか?」

「いえ、遠慮しますよ。うちの国の堅物連中では、まずロイ君たちを制御できませんから」


 自分が両手を上げて降参すると、国王陛下はハハハと屈託なく笑った。


「そうだろうな。『誰にも制御できない』からこそ、今はまだ安全なのだ。もしこれがどこか一つに肩入れでもされてみろ。オーフェン殿の警告通り、地図が描き変わるだろうな」

「ウィリアム、笑えないぞ」


 王弟殿下は国王陛下に軽く肘鉄を喰らわせ、また自分を睨む。


「まぁ色々言いはしたが。リーデン共和国からの、いや、ヘレス元師団長からの申し出には、懸念も多く見受けられるものの、最終的には……話を受ける方向になりそうだ」

「へぇ? オーフェン殿が反対しているのにですか?」

「「……」」


 自分が二人を見上げると、国王陛下も王弟殿下も顔を見合わせ、鏡合わせのように顎に手をやる。


「実は、彼が賛同していてな」

「彼?」

「ロイ君本人が、リーデン共和国との取引に乗り気のようだ」

「それは、また……何をしでかすつもりでしょうねぇ……」


 自分は檻に手をかけたまま、また何か無茶なことを考えているのかもしれないな、と、あのやんちゃなロイ君に思いを馳せた。



【ロイ】


 俺がターセル子爵領で魔道具開発していると、オーフェン経由で思わぬ話を聞かされた。

 あのヘレス師団長がリーデン共和国とやらのスパイで、リーデン共和国との取引に俺の魔道具の使用権を使わないかと持ち掛けて来たらしいのだ。


 あのうだつの上がらなそうなヘレス師団長がスパイ?

 そんな面白い話は予想外だぞ。


 とにかく、オーフェンはこの取引に反対のようだ。


『通信の魔道具を世界に広めるなんて、どんな影響が出るか分からない。やるにしても、今すぐと言うわけにはいかないよ』


 と、オーフェンはかなり渋っていたが、俺は首を傾げる。


「リーデンきょうわこくにだけ、いくつかかしだせば?」

『そんなの、あっという間に分解されて、模倣されるに決まってるでしょ』


 オーフェンはため息を吐くが、俺はふふんと鼻を鳴らす。


「むりだよ。おれのまほうじんは『とくべつ』だから!」


 実は、俺も魔法陣をコピーされるのは嫌なので、あらかじめ複製を阻止するためのオリジナリティを入れてあるのだ。

 というのも、この世界の魔法には『呪文の詠唱』、つまり『発音』が付きまとうのだが、魔法陣を描いたり複製したりするときも、魔法発動に近い工程を踏むように術式を組むことができる。


「おれのまほうじんには、『にほんご』をいれてあるから、よめないひとにはふくせいできないよ」

『いつの間にそんな技術を……』

「『けんじゃ』のまほうじんをまねしたんだよ」


 そう、俺が帝都に飛ばされた時のあの魔法陣発動には、俺の『日本語の発声』が組み込まれていた。

 それを、俺は魔法陣の描画やコピーの方に組み込んだのだ。

 だから、俺の魔法陣には日本語の羅列が組み込まれている。


『君は……とんでもないことを考えるなぁ』


 オーフェンは例のごとく呆れていたが、それなら、と、何とか許可を出してくれた。


『ただし、取引の条件には、必ず「複製の禁止」と「他国への譲渡、販売の禁止」を盛り込むこと。その上で、ロイ君が考えた策も併用するのなら、一応大丈夫かな』


 万が一魔道具を複製していることを突き止めたら、介入して実力行使を仕掛けるつもりらしい。


『あと、ロイ君の発明として出すのはリスクが高すぎるから、ロイ君の知り合いで功績を譲れそうな人はいないかい?』

「ガスじいじなら、だいじょうぶそう」

『あぁ、あの氷瀑の大魔導士ね。他にも何か発明してるみたいだし、ここは泥を被って……いや、名誉を被ってもらおうか』

「おれからはなしとくね」


 とりあえず、オーフェンの説得には成功したわけだが、オーフェンは俺がやけに乗り気なことを怪しんでいる様子だ。


『ロイ君、どうして突然リーデン共和国に肩入れするのかな?』

「かたいれじゃないよ。モルグーネおうこくも、しょくりょうがかえるんだし」

『本当にそれだけかな?』

「……」


 食糧難を解決したいというのは本当の所だし、嘘ではない。

 ただ、これでリーデン共和国との国交が正式に樹立されれば、行き来もしやすくなるし、物品も手に入りやすくなるはず。

 リーデン共和国は他所の大陸とも貿易をしている希少な国家だから、珍しい物も手に入るかも、とか、他の大陸のダンジョンの情報が入って来るかも、とか、色々美味しいオプションはある。

 でも、別にそれが目的と言うわけではないのだ。

 半分ぐらいしか。


 とにかく、こうしてオーフェンと話がまとまり、王弟たちも了承したようで、ほどなくして、リーデン共和国へ向かうヘレス師団長と王弟たちがターセル子爵領にやって来る。

 王弟、大忙しだな。


 ちょっと前ぶりに会うヘレス師団長……スパイのヘレスは、魔法封じの手錠をかけられ、両脇を第1魔法師団員2人に固められて、居心地が悪そうにしていた。

 俺はルードルフ祖父ちゃんと一緒に王弟たちを出迎えに来ていたので、ついでにヘレスにも挨拶をする。


「あはは、てじょうにあうね」


 俺が思わず指をさして笑うと、ヘレスは決まり悪そうに頬をかく。


「全然嬉しくないねぇ。ロイ君からも、こんなの必要ないって言ってくれないかい? 一応、自分の提案通りリーデン共和国に使節を送るんだしさぁ」


 使節団に同行する間中、手錠をかけられていたんじゃ敵わない、と、ヘレスは泣き言を言う。


「じごうじとくでしょ。スパイはちょっとかっこいいけど」


 俺がつれなく言うと、ヘレスはとほほ、と肩を落とす。


「そもそもさ、自分はスパイなんて柄じゃないんだよねぇ、こう見えて繊細だし? まぁ、潜入とか、怪しまれないで情報収集とか? そう言うのはなんでか上手く行っちゃうんだけどさぁ」

「じゃあむいてるんじゃない?」

「あ~、ほら、向いてても、好きじゃないっていうか……」


 ヘレスはしゃがみ、俺と目線を合わせる。


「自分もねぇ、別に潜入先で気に入られようとしてるわけじゃないっていうか、スパイ活動してやろう! なぁんて意気込んでる訳でもないのにさぁ。そもそも、ただ国を出たいってだけでスパイになった人間なんだよ? なのに、なんでか、相手から信用されちゃうんだよねぇ」


 と、ヘレス師団長はへらへら笑った。

 そういう身構えない態度が、相手の懐に入りやすいんだろうな。

 魔法師団長にまで昇進するぐらいだし。

 スパイの素質満点かよ。


 なんて、前と同じような気安いやり取りができて、俺は内心でホッとしていた。

 なんだかんだ言いつつも、ヘレスとは結構仲が良かったから、いきなり人格が変わってしまっていて、全部演技でした、なんて言われたら、ちょっとショックだったかもしれない。


「そうだ、あのね、おれ、たのみたいことがあって……」

「えぇ? 自分にかい……?」


 俺は、ルードルフ祖父ちゃんたちが離れているのをいいことに、ヘレスに耳打ちをしようとするが、そこでゾクリと肌が泡立つような殺気を感じた。

 不味い!


 俺がとっさにシールドを張ると、俺、ではなくヘレスの前のシールドに氷柱が突き刺さる。


「ロイ君。そんな裏切り者を庇わなくてもいいんですよ?」


 にこやかな中に、ひやりとする冷徹さをにじませたその声は、ガストール祖父ちゃんのもの。

 ガストール祖父ちゃんは、ヘレスの裏切りを聞いた後も、前線にいたからまだ面会をしていなかったらしい。

 このリーデン共和国への使節団に同行することが決まって、ようやく前線を離れてターセル子爵領へとやって来られたのだ。

 そして、出会って初っ端が、この氷柱の挨拶だ。


「れ……レッドラン師団長……」


 ヘレスは蛇に睨まれた蛙のように冷や汗をダラダラ流しながら、ゆっくりと歩み寄るその相手を凝視している。

 ヘレスは顔に笑みを貼り付けているものの、殺気と魔力に中てられて膝が震えていた。

 祖父ちゃん、今本気で殺しにかかっていたな。


 師団長の殺気を察知した第1魔法師団員は、脱兎のごとく距離を取り、ガストール祖父ちゃんの決定に全て従う構えだ。

 仕方がないので、俺がヘレスの前に立ち、ガストール祖父ちゃんとの壁になってあげる。


「ガスじいじ、ころしちゃだめだよ。リーデンきょうわこくにつれていくんでしょ?」

「大丈夫、殺しはしませんよ。半殺しにするだけです」


 いや、さっきのが当たってたらマジで死んでたと思う。

 ガストール祖父ちゃんは、大分冷静さを失っているようだ。


 このままでは本気で命がないと思ったのか、ヘレスは命がけの釈明を行おうと口を開く。


「あ、あのですね、俺はまだロイ君の情報を流したわけでも、誰かを傷つけたわけでもなくて……」

「黙りなさい」


 静かだが冷酷な声でガストール祖父ちゃんに遮られ、ヘレスはすぐに口を噤む。

 俺は首を傾げ、あえて空気を読まないトーンで尋ねた。


「ガスじいじ、ぶかにうらぎられたからおこってるの?」

「はい……いえ、そうですね……。私は自分に怒っています……」


 ガストール祖父ちゃんは、金杖の柄を握る手を震わせ、俯く。


「全く、許しがたい……私がロイ君のためにすることは裏目に出てばかりで……!」


 え、俺?


「良かれと思ってロイ君をダンジョンに連れて行ったら帝都に転移してしまうし! ロイ君に見張りをつけたら他国のスパイだったし! 私がやることはどうしてこう……! このままではロイ君に嫌われてしまいますぅぅぅっ‼」


 ガストール祖父ちゃんはその場に膝をつき、金杖にすがって泣き始めてしまった。

 ヘレスって、元々俺の見張りだったのか……。

 今の今まで知らなかったんですけど?


「こうなっては、この男を殺して責任を取るしか……っ‼」

「えっと、ガスじいじ……」


 いやいや、知り合いを目の前で殺されたら、さすがの俺でもトラウマになるんですけど。

 それに、一応他国との交渉材料だから、殺すのは不味い。

 本当に、ガストール祖父ちゃんは俺の事が絡むとポンコツになるなぁ……。


 俺は、何とか祖父ちゃんを励まそうと口を開く。


「が……ガスじいじ! おれガスじいじのこときらいにならないよ!」

「……本当ですか……⁉ 絶対に⁉ 嫌いになったりしませんか⁉ じゃあ、ロイ君は……じいじの事好きですか⁉」


 ガストール祖父ちゃんが面倒臭い彼女みたいになっている……。


「おれガスじいじのことだいすきだよ! だから、ころすのはやめよう?」


 俺が上目遣いにガストール祖父ちゃんを見ると、祖父ちゃんはうっと胸を押さえ、何度も頷く。


「分かりました! ロイ君が一番大好きなじいじとして、殺すのはやめます!」

「ちょっと待てぇい‼」


 そこにものすごい勢いで走り込んできたのは、ルードルフ祖父ちゃんだ。


「貴様が一番大好きなじいじな訳が無かろうが! ロイが大好きなのはワシであろう⁉ な、ロイよ!」

「る……ルーじいじのこともだいすきだから。えっと、りょうほうのじいじがすき」


 地獄耳か?

 俺は顔が引きつりそうになるのを我慢しながら、上目遣いに笑って見せる。


「ロイ君は私を大好きと言ったのですよ! 割り込むなんて厚かましい! 孫に気を遣わせないでください!」

「何だと⁉ 貴様こそ抜け駆けしおって! 今日こそはどっちが最高のじいじか決着をつけてやるわ!」


 と、祖父ちゃんたちはいがみ合いながら決闘場所を探して行ってしまう。


「ロイ君も苦労してるね……」

「うん」


 俺はヘレスに同情されつつ、知り合いが殺されなくて良かったな、と、わずかに胸を撫で下ろした。


 王弟たちは、リーデン共和国との取引の内容を今一度確認し、明日出発することになっている。

 同行者は、王弟のほかに、ヘレスと、俺が発明を押し付けたガストール祖父ちゃん、その他使節団のメンバーだ。

 その中に俺は入っていない。


 だからこそ、交渉せねばならない!

 なぜなら、俺はルードルフ祖父ちゃんから聞いてしまったのだ!

 リーデン共和国には、素晴らしい海とダンジョンがあることを!


「うみ! さかな!」


 モルグーネ王国も近隣諸外国も内陸部で、魚は全て処理が甘い泥臭い魚ばかり。

 だから、俺はこの世界の魚料理というものが嫌いだった。

 だが! 海の魚なら、泥臭さとは無縁だろう!

 前世ぶりに海魚の塩焼きを食べたい!

 想像しただけで、俺の口に堪え切れない唾液が湧いて来る。


 おまけに、ダンジョンまであるとすれば、独立資金を稼ぐ絶好の機会でもあるし、レアアイテム入手の可能性もある!

 俺はエルンサルドとアロニアのダンジョン攻略で、ダンジョン金策のおいしさを知っている。

 ダンジョン1周分の魔石やアイテムを総取りできれば、日本円換算で、100~300万ぐらいは稼げるイメージだ。

 レアドロップが出れば、換金率はさらに跳ね上がるかもしれない。


 なのに、魔道具発明者の俺がリーデン共和国に行けないだと⁉

 そんなのおかしいじゃないか‼


 夜、客室に集まって王弟とガストール祖父ちゃんたちが打ち合わせをしている中、俺は突撃してガストール祖父ちゃんにおねだりをする。


「おれもいく! ガスじいじ! おれもつれてって!」

「ロイ君と⁉ そ、それは、何とも魅力的な……!」

『あ~、ロイ君はモルグーネ王国から出ないでね?』

「「えぇっ⁉」」


 テーブルの上に置いた、打ち合わせの間だけ俺が貸し出しているオーフェンの通信の魔道具が、俺に釘を刺す。


『リーデン共和国は、大陸の遥か南じゃない。ロイ君には、帝国の勇者が出陣したら駆け付けられるように、備えててもらわないといけないからさ。立地的に無理だねぇ』

「そんな……‼」


 まさかのオーフェンからのダメ出し!

 俺は慌てて言い募る。


「つうしんのまどうぐは、おれのはつめいだよ⁉」


 手柄はガストール祖父ちゃんに押し付けるつもりだが、魔道具に不具合が発生した時の修理要員として、俺が同行した方が都合がいいはずだろう?


「おれがいかなくていいの⁉」

「いや、ロイ君が付いてきた方が、妙な憶測を呼ぶだろうね」


 本当の発明者がバレるかも、という王弟の突っ込みに、俺はこの世の終わりのような顔をして、その場にガックリ崩れ落ちる。


「だんじょんあるのに……⁉ うみのさかなもたべれるのに……⁉」

『申し訳ないけど、我慢してもらうしかないねぇ』


 そんなの、勇者がいる限り、俺はどこにもお出かけできないってことになるじゃないか!

 一生ターセル子爵領に閉じこもってたら、冒険なんてできやしない!

 何か、何か方策を考えなければ!


「おーふぇん! ゆうしゃがでてきても、すぐにかけつけられるなら、どこにいてもいいんだよね⁉」


 俺はガバッと起き上がり、オーフェンの通信の魔道具に迫る。


『え、えぇ? まぁ、そうだね……?』


 そして次に、俺はガストール祖父ちゃんを振り返る。


「ガスじいじ! ゆうびんのまどうぐもってる⁉」

「えぇ、ありますが……?」


 よし! と俺は拳を握り、王弟を見上げた。


「リーデンきょうわこくまでは、いっかげつかかるんだよね⁉」

「あぁ、そうだね……?」


 つまり、お膳立ては出来ている!


「じゃあ、おれ、いっかげつでてんいまほうじんをかいはつするから!」


 ガストール祖父ちゃんが郵便の魔道具で、俺が完成させた転移魔法陣を受け取ってくれれば、俺はリーデン共和国に転移できるはずだ!

 そして、転移魔法で瞬時に戻って来られるのならば、俺がどこに居てもオーフェンに文句は言われない!

 これぞ、完璧な計画!


 俺がフンフンと得意げに胸を張っていると、王弟は頭を抱え、ガストール祖父ちゃんは顎に手をやって眉を寄せた。

 オーフェンは、通信の魔道具越しにぼそりと呟く。


『無理だって笑い飛ばせない所が、ロイ君の恐ろしいところだよねぇ……』

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