十話
やっぱり、そういうことか。最大多数の最大幸福。この宴をやると決めた上でのこの言葉はつまり、勇者軍の勝利を望んでいるということだ。それも、できるだけ犠牲を出さずに。その手順は簡単だ。まずは集会の開催を宣言する。今の状況で集会に来ない理由は、一つしかない。魔王軍の役職を受けてしまったため、自分が少数であり、多数から命を狙われるのが怖いからという理由だ。つまり、集会に来ないのは魔王軍。次に、さっきのような提案をする。勇者軍の役職を受けた生徒は、多数である安心感から、宴に参加してもデメリットがないことが分かる。しかし魔王軍だと圧倒的な少数であることから宴を避けたいので、二つ目と三つ目の提案に手をあげてしまう。例外もあるし、もしかすると勇者軍の生徒も混ざっているのかもしれないだろうが、この大人数だとおおよその魔王軍を壊滅させるのに十分な方法だ。
だが、露骨に殺すなんて言葉を使ってしまえば……
「ふ、ふざけるなぁぁ!」
「いやいやいやぁ!」
「お、お前だって魔王軍かもしれないだろ!」
「私は、私はちがうの!」
「や、やめて!」
「殺してやるっ!」
暴動が起きるに決まっている。さらには、参加の提案に挙手した生徒や、先生からも反発を買ってしまう。
《うるさいなあ。反発するのはいいけど、それは魔王軍だと疑われるのを覚悟してのものだよね?ていうか、そこまで反発するのは魔王軍っていう証だよね?》
強引すぎる判断だ。この生徒会長、こんな時でもニコニコしてやがる。本当に楽しんでる。
だが、この人数を殺すなんて物理的に無理じゃないのか?
「こ、コウちゃん。今気づいたんだけど、生徒会の奴らステータスがやばいことになってる」
「は?」
ドムッ
逃げようとして出口に殺到する生徒達の所で変な音がした。そこに立っていたのは、生徒会長だった。
「この世界は素晴らしいよね。人を殺すだけで、こんな力が手に入るんだから」
生徒会長が持っていたのはマイクではなく、原型をあまり留めていない頭だった。正確には、その頭がついた舌だ。
「キャアァァァァァァァアア!」
どっ、ごっ、ばちっ、ぐぐっ、ばつっ
様々な音がして、あっという間に出口に殺到していた10人以上もの人が血祭りになった。人間の仕業とは思えない速さと威力、そしてその残酷さ。
「レベル21……。あ、25になった」
「なん、だと。なんで、なんでそんなにレベルが高いんだ。というか、本当にレベルに依存して、身体能力が上がってるのかよ……」
「ええと、じゃあさ、もう関係ない人は教室に帰っていいよ。あとは僕達生徒会が処理するよ。また集会の放送をするから、その時はしっかり来てねー」
そう言うと、ステージに立っていた他の生徒会が降段してきた。そして、高校生とは思えない動きで、さっき二つ目と三つ目の提案に挙手したであろう生徒達を蹂躙していく。
「や、やばい。巻き込まれちゃたまったもんじゃないぞ!ひとまず体育館から出よう!」
当然逃げようとする俺らと一緒に、二つ目と三つ目に手を挙げた生徒もついて来ようとするから、巻き添えを喰らいかねない。
「あ、そーだ!言い忘れてたけど、違反行為と、自分以外の役職の能力もしっかり端末で確認しといてねー!」
生徒会長が、今しがたツインテールの女子の胸を正拳突き的なパンチで貫通させながら言った。自分以外の能力も確認できるのか。
「あれ!?こ、コウちゃん!アリナが!アリナがいない!」




