十一話
「あれ!?こ、コウちゃん!アリナが!アリナがいない!」
「は!?マジかよ!くそっ」
そろそろ出口から出るというところで、俺は人の波を逆行した。
「ユウ!またさっきの場所でな!」
「こ、コウちゃん!怪我すんなよ!」
力任せに元いた場所に戻る。アリナ、どこだ。まさか、巻き込まれたとか……。い、いやそんなことは!
人の波を抜けると、そこに広がっていたのは地獄絵図だった。未だに暴虐の限りを尽くす生徒会。それに蹂躙される生徒達。ん?あの女は確か生徒副会長。死体を触ったりして何かしている。
いや、そんなことよりアリナだ。
「アリナ!」
アリナは体育館の隅でうずくまっていた。
「よかった。アリナ。はぐれるなよ、ただでさえお前は喋れなくて……。あ、ご、ごめん。言いすぎた」
「……」
アリナは泣いているようだった。微かに鼻をすする音がしたのだ。
「あれ?もう帰ってって言ったのに。まさか君達自殺志願者?」
後ろから生徒会長の声が聞こえた。
「い、いや、違うよ。俺たちはあの人波に巻き込まれないように、後から帰るつもりだったんだ」
「ふーん。まあ君達はさっきの提案に引っかからなかったから、今は目を瞑るよ」
「ありがとう。じゃ、また」
「あー、待って。この際だから名前と役職を言い合おうか。僕は生徒会長の大塚シゲアキ。シゲって呼んでね。役職は僕にぴったりのーー勇者さ」
ーーこいつ!!早速嘘をつきやがった!まずいぞ、非常にまずい。この状況で俺が勇者だと言ってしまうと、かなり怪しい。というか、この流れで殺されてしまうかもしれない。なんせこの空間には、このシゲアキの仲間である生徒会の連中しかいない。しかも、今このやり取りで窮地に陥ったのは俺だけじゃない。アリナもだ。魔王です。だなんて言えるわけない。他の役職にどんな能力があるのかもまだ知らないから、騙ることもできない。
どうする?どうすれば最善なんだ?
「俺の名前は前島コウスケ。役職は、悪いが言えない。バレるとまずい役職なんだ。勇者軍の役職であることは約束するよ」
「ふーん。言えない役職ねえ」
ま、まずかったか?人狼ゲームもそうだが、序盤に公表してしまうとまずい役職がある。この宴だって同じような役職があるはず。
「いいね!そのしっかりとこのゲームに臨む姿勢!勇者軍っぽいよ!」
よかった。好意的に理解してくれたようだ。
「で、そっちの残念な女の子は?」
くそ、こいつ。アリナに残念だと?殴ってやりたいが、今の俺ではこいつに触れることすらできなさそうだ。
「あー。この子は病気で喋れないんだ。だからかわりに俺が言わせてもらうけど、この子は騎士らしい。一日に一人守ることができるっていう」
「喋れない、ね。うん分かった。今はそういうことにしてあげるよ。誰でもかれでも疑ってちゃあこっちが疲れちゃうからね!」
助かった、のか?今の俺たちはかなり怪しいけど、どうやら難を逃れたらしい。このままここを立ち去りたい。
あ、でも聞きたいことがある。
「ところで、えーと、シゲはなんでそんなに強いんだ?」
「気になる?そりゃ気になるよね。うん、向上心があっていいことだ。僕らはね、宴に参加するかどうかで争った末に先生達を何人か殺したんだ。するとどうだ、力が体の底から湧き上がってくるじゃないか。スマホを見ると、レベル3と表示されていたんだ。馬鹿げているかもしれないけど、この世界でこのステータスは絶対みたいだ。ステータスが高いほど、死ににくくなり、殺しやすいんだよ。そして、そのステータスを上げるには、殺さなければいけない。自分の手でね。フフフ」




