表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザセツ系主婦の片付け日記  作者: 三条まこ
PR
23/30

24日目「薬箱・文房具」

また週末。


朝食の後、蒼介と莉音は自転車の練習をしに出かけた。

クラスでまだ自転車に乗れないのが莉音と数人だけらしい。


蒼介が工具で補助輪を外してくれて、近所の公園まで自転車を押して歩いて行った。


2人を送り出した後、爽子は今日の分の片付け。


リビングのカウンター下に置いてある、小引き出しの一段目の薬箱と

二段目が文房具を片付ける。


薬箱の中身の整理は、実は結婚以来初めて。

期限切れの薬がたくさん入っていてがっかりするが、もう条件反射というか、何も考えずに手を動かして捨てて行く。


正露丸の中身は可燃、ビンはカン・ビン、フタはビニプラ、外箱は開いて資源ゴミ。

消毒液は、中身は古布に染み込ませて可燃、容器はビニプラ。

虫除けスプレーは中身を古布に、容器は穴を開けて不燃ゴミ。

ムヒは中身をしぼり出して、容器は不燃。

湿布は可燃。


あっという間にすっきりした。


あれ程面倒だった作業が少しも苦にならなくなってきたのは、噂に聞く「捨てハイ」というものだろうか。


次に文房具。

ボールペンやマジックを1つ1つ書けるかどうか試して、書けない物は不燃ゴミへ。

マステ、フセン、シールは集めている訳でもないのにいつの間にか数が増えている。

可愛い物だけ選んで、企業の名前が入っているような物は処分。

色鉛筆、クレヨン、ハサミ、ホチキス、のり、定規なども、1つか2つ残して処分。

メモ帳も多すぎるので、何冊か処分。

引き出しの中にきちんと整理して完了。


ゴミをまとめていると、

蒼介の部屋から携帯の着信音が聞こえた。


携帯忘れて行ったんだ、と思い、

蒼介の部屋に行って携帯の画面を見ると、蒼介の同期の希和からだった。


すごく嫌な気がした。

長期出張中の夫の携帯に、女性からの電話。


出る?出てみる?悪い?どっち?

とぐるぐる考えているうちに電話は切れた。


急ぎの用件だったら悪いし、公園まで届けようかな。

でも、部も違うし、急ぎの用件なんてあるんだろうか。

ぐるぐる考えながらも、いつのまにか爽子は蒼介の携帯を持って玄関を出ていた。



公園に向かうと、蒼介と莉音がすぐに爽子に気がついて手を振った。

「ママー!自転車乗れたよー!!」

と莉音がはしゃいでいる。


爽子も笑って両手を振り返す。

「よかったー!すごいね!」


莉音はそのまま公園の外周を1人で自転車で走って行き、爽子は歩きながら見守っている蒼介に追いついた。


「練習したすぐだったよ。もっと早く補助輪外してあげればよかったなあ。」

蒼介も嬉しそうにしている。


爽子はなるべく何でもない風を装って、蒼介に携帯を渡した。

「電話鳴ってたよ」


着信を確認した蒼介が、思った以上に動揺して、爽子もざわざわした。


「急ぎかな?折り返したら?」

と言うと、

「う、うん。多分大丈夫。」

と言って携帯をポケットにしまう。


大丈夫って分かるなんて、怪しいじゃないか。


黙り込んだ爽子に、言い訳するように「希和、最近いろいろあって相談に乗ってるんだよ」と言う。


爽子がため息をついて俯くと、蒼介はあわてて、

「夜話す!ちゃんと話すから誤解しないで!」

と言って、莉音の自転車を追いかけて走って行ってしまった。


希和と蒼介は同期で、課は違うもののずっと仲が良かった。

希和の方が爽子たちより早く結婚して、子どもはいなかったと思う。


爽子は付き合う前は、蒼介と希和はお似合いだと思っていたし、社内でも噂になったこともあって、希和のことはずっと心のどこかで気になっていた。


「先に帰るねー!」と声をかけて、爽子はマンションに帰って、ゴミの仕分けの続きをした。



午後、

蒼介は駐車場の車の中で長い時間携帯で話していた。

爽子は、莉音の宿題を見ながらイライライライラしていた。


もしかしてだけど、2人が何かあったとしたら、自分は許せるんだろうか。

許せないんだろうか。

許せなかったとして、離婚とか出来るんだろうか。

莉音と2人でアパートとか借りる?

でも、仕事辞めて収入ないのに。

実家戻る?

いや、無理。

せっかく自分らしく生きると決めたのに、またあの母のところに帰るとか、ありえないし。

じゃあ、許す?

何も無かったかのように秋田で3人で暮らせる?

いや、それより、2人が本気で、「結婚したい」とかになったら?

身を引くの?

慰謝料とかもらって?

いやいや、そんなの無理だし!

それに、さっき蒼介は

「誤解しないで」って言ってた。

きっと大丈夫なはず。


でも、離婚とか、考えたことなかったな。

莉音が生まれてからは特に。

この家族が永遠に続くことを疑うこともしなかった。


もとは他人なのに、不思議だな。


ぐるぐると考えごとをしていると、

「ママ大丈夫?」って、莉音に心配された。


夜、莉音が寝てから、蒼介に

「昼間の電話のことだけど…」と切り出された。


聞きたくない!

でも、聞かなきゃ!


「なんでそんな顔なの?何でもないから。大丈夫だから聞いて。」と蒼介。


何でもないなら、なんでそんなに動揺してるの?


「あんなに長く、何の話?」

「いや、実は…」

「実は?」


…沈黙。


「何?」

「希和、離婚することになって。」


聞きたくない!

爽子が耳を塞いでいると蒼介がちょっと噴き出した。

「何で耳塞ぐの?」

「希和さんに全然勝てる気しないし…。無理だし…。」

「何でそうなるの⁉︎」

「2人お似合いだし…」

「怒るよ!」

「怒ってるのこっちだよ!」

「…そうだよね。ごめん。」


すごく怖かった。

蒼介を失うのが。

今の生活を守れないのが。

自分が愛されていないのを確認するのが。

すごく怖かった。


「希和とは友達だから、結婚前からいろいろ相談に乗ってたんだよ。

こっちも爽子のこと相談に乗ってもらったりしてたし。」


もうそこすら許せない感じがする。

「で、今は希和が旦那さんとうまく行ってなくて…。でも、爽子が嫌ならもう相談に乗るのやめるよ。」


どう考えたらいいのか分からない。

男女間の友情って、アリだと思ってると思っていたけど、自分の夫のことで、しかも相手が美人だと、ナシではないかと思う。


でも、自分ならどうだろう。

仲良しの友達が悩んでいたら、やっぱり相談に乗ってあげるんじゃないだろうか。


「付き合ったりはしてないのね?」

「ないないないない!ありえない!」

「じゃあいいよ。」

「いいのか⁉︎」

「でも、こそこそするのはやめて」

「わかった!」

「それと、良い機会だから聞いておくけど、

希和さんとは昔付き合ってた、って噂あるけど、真相はどうなの?」

「付き合ってない!ないです!希和はずっと学生の時からの彼氏がいたし。」

「希和さんに振られたから私にした、って噂もあったけど?」

「ない!ない!たまたま希和の結婚が決まっただけだよ。爽子のこととは関係ない。」


ドキドキしたけど、頑張って聞いた。

「私のことはどう思ってるの?」

「すごく大事に思ってるよ。結婚できて本当に嬉しかった。秋田も、来てくれることになって嬉しい。これからもずっと家族でいて欲しいよ。」


泣けた。


「っていうか、爽子、そんなこと気にしてたんだな。もっと早く聞いてくれたらよかったのに。」


本当に。

何をやっていたんだろう。


もっと早く、素直になればよかった。


片付けしたから、言えるようになったのかな。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ